203 / 208
それぞれの門出
【47】
しおりを挟む
目が覚めると辺りは真っ暗で、変わらずあるあまねくんの体温。手探りでスマホを探し、画面を付けて更に電気のリモコンを探した。
常夜灯にすると、隣にあまねくん、部屋の中に置かれたサークルベッドの中には妃茉莉。時間を確認すると0時を回っていた。
一度も目覚めることなく6時間程眠っていたようだ。久しぶりにぐっすり眠れて体の疲れが取れたようだった。
おそらく私を起こさないよう、私が寝てすぐ妃茉莉を連れて1階に降りて行ったのだろう。どこまでも思いやりがあって気遣いのできる旦那さんなのだろうか。
仕事から帰ってきたばかりだというのに、すぐに妃茉莉のお守りを変わってくれて余程疲れたのだろう。彼はぐっすりと眠っている。妃茉莉も珍しく静かに眠っていて、私はもう一度眠りに就いた。
その日を境に、あまねくんの中でルールができた。18時に帰ってきたら、あまねくんが0時まで妃茉莉を見て、その間に私は睡眠を取る。その後0時から私に交代する。6時間睡眠が取れれば毎日妃茉莉を見ても大丈夫だというあまねくん。
今まで殆ど眠れなかった事を思えば、私も6時間睡眠が取れるのだから願ってもないことだ。
その間の授乳は、あらかじめ搾乳しておいたものを温めてあまねくんがあげてくれる。私があまねくんの膝枕で眠った日も、昼間胸が張りすぎて痛かったため、昼間たくさん搾乳しておいたのだ。それをダリアさんから聞いたあまねくんが、私を起こさず授乳させる方法があったと喜んで妃茉莉に哺乳瓶で飲ませてやっていたらしい。
そのルーティンが確立された今、私の体はかなり楽になった。あまねくんが私と同じように妃茉莉に向き合ってくれている。そう思うだけで、一緒に子育て出来てよかったと思えた。
あまねくんが休みの日は、昼頃まであまねくんは熟睡し、私は昼過ぎから目が覚めるまでずっと眠る。週にたった2日だってこんな日があるのが幸せだった。
そんなことをしていたら、あっという間に月日は経ち、目まぐるしい生活を送る中、茉紀の裁判は終わっていた。茉紀も子育てが大変だろうと気を使って連絡を控えていたようだが、あまねくんのいる日曜日に電話を寄越した。
名波佳穂のドライブレコーダーにも、光輝の姿が写ってから急発進する光景か映っていたため、殺人未遂は立証された。ただ、光輝に怪我がなかったため、刑はかなり軽くなったようだった。
それでもそのまま野放しにしておくよりはマシだと茉紀も安堵している様子だった。
「前の旦那さんとその名波って人はどうなっただ?」
「さあ? それは知らん。3回も不倫するほど夢中になってた相手なら、刑務所から出てくるまで待っててやればいいよね」
「まぁ……ね。でも、向こうの親が許さないんじゃないの?」
「そりゃ、そうだら。犯罪者を身内にするなんて、普通なら考えられないよ」
「そりゃそうだわ」
「だけん、相手はいくらでもいるだら。その内違う女と再婚しそうだよ」
茉紀の言葉にげんなりする。そういう人って本当にいるんだなと思いながら、元夫の顔を思い浮かべた。
「でも、茉紀もようやくこれで全て終わったんだから、息抜きとかできればいいね」
「うん。でも、息抜きならさせてもらってる」
「そうなんだ」
「うん。一緒に公園に行ったり食事に行ったりするだけでけっこう息抜きになるんだ」
「一緒に公園? 誰と?」
「ん? 政宗さん」
「え? なんで?」
「ん? そういうことだから」
「そういうことって……」
「お付き合い始めました」
「えぇぇぇぇ!?」
顎が外れそうな程驚愕した私は、スマホを落としそうになりながら、頭をフル回転させる。私が妃茉莉と格闘している間に、恋を始めた2人がいた。予想もしていなかった2人だけに、お似合いだけれどまだまだ状況を飲み込めそうになかった。
常夜灯にすると、隣にあまねくん、部屋の中に置かれたサークルベッドの中には妃茉莉。時間を確認すると0時を回っていた。
一度も目覚めることなく6時間程眠っていたようだ。久しぶりにぐっすり眠れて体の疲れが取れたようだった。
おそらく私を起こさないよう、私が寝てすぐ妃茉莉を連れて1階に降りて行ったのだろう。どこまでも思いやりがあって気遣いのできる旦那さんなのだろうか。
仕事から帰ってきたばかりだというのに、すぐに妃茉莉のお守りを変わってくれて余程疲れたのだろう。彼はぐっすりと眠っている。妃茉莉も珍しく静かに眠っていて、私はもう一度眠りに就いた。
その日を境に、あまねくんの中でルールができた。18時に帰ってきたら、あまねくんが0時まで妃茉莉を見て、その間に私は睡眠を取る。その後0時から私に交代する。6時間睡眠が取れれば毎日妃茉莉を見ても大丈夫だというあまねくん。
今まで殆ど眠れなかった事を思えば、私も6時間睡眠が取れるのだから願ってもないことだ。
その間の授乳は、あらかじめ搾乳しておいたものを温めてあまねくんがあげてくれる。私があまねくんの膝枕で眠った日も、昼間胸が張りすぎて痛かったため、昼間たくさん搾乳しておいたのだ。それをダリアさんから聞いたあまねくんが、私を起こさず授乳させる方法があったと喜んで妃茉莉に哺乳瓶で飲ませてやっていたらしい。
そのルーティンが確立された今、私の体はかなり楽になった。あまねくんが私と同じように妃茉莉に向き合ってくれている。そう思うだけで、一緒に子育て出来てよかったと思えた。
あまねくんが休みの日は、昼頃まであまねくんは熟睡し、私は昼過ぎから目が覚めるまでずっと眠る。週にたった2日だってこんな日があるのが幸せだった。
そんなことをしていたら、あっという間に月日は経ち、目まぐるしい生活を送る中、茉紀の裁判は終わっていた。茉紀も子育てが大変だろうと気を使って連絡を控えていたようだが、あまねくんのいる日曜日に電話を寄越した。
名波佳穂のドライブレコーダーにも、光輝の姿が写ってから急発進する光景か映っていたため、殺人未遂は立証された。ただ、光輝に怪我がなかったため、刑はかなり軽くなったようだった。
それでもそのまま野放しにしておくよりはマシだと茉紀も安堵している様子だった。
「前の旦那さんとその名波って人はどうなっただ?」
「さあ? それは知らん。3回も不倫するほど夢中になってた相手なら、刑務所から出てくるまで待っててやればいいよね」
「まぁ……ね。でも、向こうの親が許さないんじゃないの?」
「そりゃ、そうだら。犯罪者を身内にするなんて、普通なら考えられないよ」
「そりゃそうだわ」
「だけん、相手はいくらでもいるだら。その内違う女と再婚しそうだよ」
茉紀の言葉にげんなりする。そういう人って本当にいるんだなと思いながら、元夫の顔を思い浮かべた。
「でも、茉紀もようやくこれで全て終わったんだから、息抜きとかできればいいね」
「うん。でも、息抜きならさせてもらってる」
「そうなんだ」
「うん。一緒に公園に行ったり食事に行ったりするだけでけっこう息抜きになるんだ」
「一緒に公園? 誰と?」
「ん? 政宗さん」
「え? なんで?」
「ん? そういうことだから」
「そういうことって……」
「お付き合い始めました」
「えぇぇぇぇ!?」
顎が外れそうな程驚愕した私は、スマホを落としそうになりながら、頭をフル回転させる。私が妃茉莉と格闘している間に、恋を始めた2人がいた。予想もしていなかった2人だけに、お似合いだけれどまだまだ状況を飲み込めそうになかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
専属秘書は極上CEOに囚われる
有允ひろみ
恋愛
手痛い失恋をきっかけに勤めていた会社を辞めた佳乃。彼女は、すべてをリセットするために訪れた南国の島で、名も知らぬ相手と熱く濃密な一夜を経験する。しかし、どれほど強く惹かれ合っていても、行きずりの恋に未来などない――。佳乃は翌朝、黙って彼の前から姿を消した。それから五年、新たな会社で社長秘書として働く佳乃の前に、代表取締役CEOとしてあの夜の彼・敦彦が現れて!? 「今度こそ、絶対に逃さない」戸惑い距離を取ろうとする佳乃を色気たっぷりに追い詰め、彼は忘れたはずの恋心を強引に暴き出し……。執着系イケメンと生真面目OLの、過去からはじまる怒涛の溺愛ラブストーリー!
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる