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大人の診察
仕事後のデート
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ナースステーションでノートパソコンに向かっていた私はEnterキーを押してふーっと息をついた。
ようやく記録を書き終えた。もう一度読み直しておかしな点がないかを確認した。今日はオペの患者さんを受け持っていたから書くことも多かった。それでもきっちり仕事を終えると帰り支度に入る。
咲季さんに近付くと「私もうちょっとかかるから先に帰ってて」と言われた。何人かは既に退勤していた。私も皆に声をかけてPHSを元の位置に戻す。
心電図モニターの音が響く中、私はナースステーションを出た。
「九ノ瀬、ロッカーまで一緒に行こう」
聞こえた声にビクリと肩を震わせた。槙さんだ。もしかしたらもう話しかけてこないんじゃないかと思ったのだけれど、そういうわけでもなさそうだ。
「お疲れ様です。槙さんは今日オペ患2件だったのに早かったですね」
私は仕事の話題を振った。先輩、後輩として話す分にはかまわない。いや、むしろ今まで通り後輩として可愛がってくれるならその方が気は楽だ。
「うん。簡単なオペだったから。予定よりも早く終わったしね」
「今日はオペ件数多くて皆大変そうでしたね。その分明日は今日よりよさそうですけど」
「明日夜勤だっけ?」
「いえ、明後日です。明日はお休みです」
最近は私の勤務を把握してたんだよね、この人……。今の言い方もわざとらしく思えちゃう。
「どっか行くの?」
「いえ、休職明けて連勤続きだったのでちょっと疲れちゃって……。だから家でゆっくりしようと思います」
「そっか。拘束時間長いし疲れちゃうよね。俺も家で映画ばっかり見てるよ」
自然な会話ができて安心する。明日は槙さんも仕事だから誘われることはないだろうと思っていたけれど、なんとなくソワソワしてしまったから。
「私も月額の動画配信入ってるので最近は韓国ドラマのちょっと怖いやつにハマってます」
「なにそれ。1人で見るの?」
「同期にオススメされてからハマってるんですよ。夜見ると怖いから昼間限定ですけど」
「へぇ。面白いなら俺も見てみようかな」
「あ、是非。タイトルが……」
そう言って槙さんにドラマのタイトルを教えているところに「お前、ホラー平気なの?」と私の背後から暖陽が顔を出した。
「わっ!」
驚いた私は、あからさまに飛び跳ねた。だって怖いドラマの話してたから。槙さんは暖陽の顔を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「仕事切り上げたから飯行こうぜ」
暖陽は、槙さんの存在などそこにないかのように話しかけてくる。またピリピリと嫌な空気を感じたけれど、暖陽が誘ってくれたことが単純に嬉しくて私は自然と笑みをこぼした。
「じゃあ、着替えたら外で待ってるんで」
「ああ。俺も白衣脱いでくる」
たったそれだけやり取りをして、またロッカーへ向かう。
「本当にあの人のこと好きなの?」
テンションがさっきとは違う。槙さんは暖陽のことが嫌いなんだろうな。
「好きですよ。私の方が好きなんです。だから、槙さんには温かく見守ってほしいです。それでは、お疲れ様でした」
私は突き放すようにしてロッカールームへ入った。
ようやく記録を書き終えた。もう一度読み直しておかしな点がないかを確認した。今日はオペの患者さんを受け持っていたから書くことも多かった。それでもきっちり仕事を終えると帰り支度に入る。
咲季さんに近付くと「私もうちょっとかかるから先に帰ってて」と言われた。何人かは既に退勤していた。私も皆に声をかけてPHSを元の位置に戻す。
心電図モニターの音が響く中、私はナースステーションを出た。
「九ノ瀬、ロッカーまで一緒に行こう」
聞こえた声にビクリと肩を震わせた。槙さんだ。もしかしたらもう話しかけてこないんじゃないかと思ったのだけれど、そういうわけでもなさそうだ。
「お疲れ様です。槙さんは今日オペ患2件だったのに早かったですね」
私は仕事の話題を振った。先輩、後輩として話す分にはかまわない。いや、むしろ今まで通り後輩として可愛がってくれるならその方が気は楽だ。
「うん。簡単なオペだったから。予定よりも早く終わったしね」
「今日はオペ件数多くて皆大変そうでしたね。その分明日は今日よりよさそうですけど」
「明日夜勤だっけ?」
「いえ、明後日です。明日はお休みです」
最近は私の勤務を把握してたんだよね、この人……。今の言い方もわざとらしく思えちゃう。
「どっか行くの?」
「いえ、休職明けて連勤続きだったのでちょっと疲れちゃって……。だから家でゆっくりしようと思います」
「そっか。拘束時間長いし疲れちゃうよね。俺も家で映画ばっかり見てるよ」
自然な会話ができて安心する。明日は槙さんも仕事だから誘われることはないだろうと思っていたけれど、なんとなくソワソワしてしまったから。
「私も月額の動画配信入ってるので最近は韓国ドラマのちょっと怖いやつにハマってます」
「なにそれ。1人で見るの?」
「同期にオススメされてからハマってるんですよ。夜見ると怖いから昼間限定ですけど」
「へぇ。面白いなら俺も見てみようかな」
「あ、是非。タイトルが……」
そう言って槙さんにドラマのタイトルを教えているところに「お前、ホラー平気なの?」と私の背後から暖陽が顔を出した。
「わっ!」
驚いた私は、あからさまに飛び跳ねた。だって怖いドラマの話してたから。槙さんは暖陽の顔を見て苦虫を噛み潰したような表情を浮かべる。
「仕事切り上げたから飯行こうぜ」
暖陽は、槙さんの存在などそこにないかのように話しかけてくる。またピリピリと嫌な空気を感じたけれど、暖陽が誘ってくれたことが単純に嬉しくて私は自然と笑みをこぼした。
「じゃあ、着替えたら外で待ってるんで」
「ああ。俺も白衣脱いでくる」
たったそれだけやり取りをして、またロッカーへ向かう。
「本当にあの人のこと好きなの?」
テンションがさっきとは違う。槙さんは暖陽のことが嫌いなんだろうな。
「好きですよ。私の方が好きなんです。だから、槙さんには温かく見守ってほしいです。それでは、お疲れ様でした」
私は突き放すようにしてロッカールームへ入った。
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