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愛情
【8】
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以前、職場の後輩である大塚さんも、彼女の姉が相手の両親と反りが合わなくて離婚したと言っていた。
2人は愛し合っていたはずなのに、相手の家族の影響でダメになってしまうこともある。そうなると、いかにお互いの家族との相性が大事かわかる。
「今では平気?」
「今はね。子供に会えなくなると向こうが困るもんで何なら腰低いくらいだよ」
ケラケラと笑っている声がする。癇癪を起こすほどの人間にとっても孫は可愛いものなのか。
うちの両親なんて溺愛するだろうなと想像が容易にできるため、笑いを通り越して呆れてしまう。
「そっかぁ。じゃあ、ちょっとあまねくんと話してみるよ」
「そうしな。あまねは家族と仲良いの?」
「良いって言ってた気がするよ。確かお兄ちゃんと妹がいるって。お兄ちゃん、私より下だけど……」
「そりゃ、複雑かな……。家族仲が良くていいことと悪いことがあるからねぇ」
「いいことと悪いこと?」
「まあ、いいよ。とりあえず会ってみなきゃわかんないし。またどうなったか教えて」
「うん。そうするよ」
茉紀に電話してみたことで、急に結婚話にしなくても、とりあえず相手の家族と会って、距離を縮めていく方針が決まった。
やはり、困った時の茉紀頼みだ。わからないことは経験のある人間に聞くに限る。
あまねくんは、今日は忙しくて会えないと言っていたけれど、彼が不安に思っている可能性があることも聞き、昼休み辺りを狙ってラインを送ることにした。
[お疲れ様。忙しいところ、ごめんね。朝のことだけどさ、すぐに結婚っていうのは後にして、とりあえずあまねくんの家族と会ってみてもいいかな? 結婚するなら、挨拶くらいはしておきたくて……]
何となく図々しい気もしたけれど、他に言葉も見つからなくてそのまま送ってしまった。家族に会うことについて彼は何て思うだろうか。
家族に会うならもう結婚でもいいよねなんて言いそうな気もする。彼とその家族が暖かく受け入れてくれるのであれば、それも真剣に考えよう。
暫くして[まどかさん、ちゃんと考えてくれたんだね! 俺、感動してる。家族の都合聞いてみるから、まどかさんの休みの日教えて]と返信が届いた。
多忙のわりにレスポンスが早い。相当嬉しかったのだろうか。喜んでくれているあまねくんを想像したら、つい頬が緩んでしまった。
私は来月のシフト表を広げて休日を確認した。
家族のほとんどが土日休みだと聞いたため、私の休みも考慮して2週間後の土曜日に決定した。妹さんは夕方頃戻るとのことで、夕食時にあまねくんの実家に伺う予定だ。
あまねくんの家族と会う日が決まってからは、毎日そわそわと落ち着かない日々が続く。
両親が怖い人達だったらどうしよう、別れてちょうだいなどと言われたらどうしよう。
私みたいな大学に出ていない人間が、税理士の息子と交際していることをよく思わないかもしれない。雅臣の父親のように。私は、マイナスなイメージばかりが湧いて、仕事中でも考えるようになった。
「一さん、最近なんかありました?」
突然大塚さんにそんなことを言われ、仕事中に上の空だったことでもあったのかと慌てる。
「大丈夫です。仕事はちゃんとしてくれています。いつも通りです」
すかさずフォローが入ったが、「あんまり元気ないですよね」と言われた。
大塚さんは新婚だけれど結婚まで色々あり、一番私の心情がわかる存在でもあるが、なんせ23歳だ。
一回り近くも年下の彼女に相談するのも気が引けるが、結婚に対しては私よりも先輩なのだ。
「実はさ、今度彼の両親に会うことになったんだよね……」
いつか大塚さんが逆プロポーズをした秘密を教えてくれたため、私もこっそり打ち明けることにした。もちろん、彼女との秘密は誰にも口外していない。
2人は愛し合っていたはずなのに、相手の家族の影響でダメになってしまうこともある。そうなると、いかにお互いの家族との相性が大事かわかる。
「今では平気?」
「今はね。子供に会えなくなると向こうが困るもんで何なら腰低いくらいだよ」
ケラケラと笑っている声がする。癇癪を起こすほどの人間にとっても孫は可愛いものなのか。
うちの両親なんて溺愛するだろうなと想像が容易にできるため、笑いを通り越して呆れてしまう。
「そっかぁ。じゃあ、ちょっとあまねくんと話してみるよ」
「そうしな。あまねは家族と仲良いの?」
「良いって言ってた気がするよ。確かお兄ちゃんと妹がいるって。お兄ちゃん、私より下だけど……」
「そりゃ、複雑かな……。家族仲が良くていいことと悪いことがあるからねぇ」
「いいことと悪いこと?」
「まあ、いいよ。とりあえず会ってみなきゃわかんないし。またどうなったか教えて」
「うん。そうするよ」
茉紀に電話してみたことで、急に結婚話にしなくても、とりあえず相手の家族と会って、距離を縮めていく方針が決まった。
やはり、困った時の茉紀頼みだ。わからないことは経験のある人間に聞くに限る。
あまねくんは、今日は忙しくて会えないと言っていたけれど、彼が不安に思っている可能性があることも聞き、昼休み辺りを狙ってラインを送ることにした。
[お疲れ様。忙しいところ、ごめんね。朝のことだけどさ、すぐに結婚っていうのは後にして、とりあえずあまねくんの家族と会ってみてもいいかな? 結婚するなら、挨拶くらいはしておきたくて……]
何となく図々しい気もしたけれど、他に言葉も見つからなくてそのまま送ってしまった。家族に会うことについて彼は何て思うだろうか。
家族に会うならもう結婚でもいいよねなんて言いそうな気もする。彼とその家族が暖かく受け入れてくれるのであれば、それも真剣に考えよう。
暫くして[まどかさん、ちゃんと考えてくれたんだね! 俺、感動してる。家族の都合聞いてみるから、まどかさんの休みの日教えて]と返信が届いた。
多忙のわりにレスポンスが早い。相当嬉しかったのだろうか。喜んでくれているあまねくんを想像したら、つい頬が緩んでしまった。
私は来月のシフト表を広げて休日を確認した。
家族のほとんどが土日休みだと聞いたため、私の休みも考慮して2週間後の土曜日に決定した。妹さんは夕方頃戻るとのことで、夕食時にあまねくんの実家に伺う予定だ。
あまねくんの家族と会う日が決まってからは、毎日そわそわと落ち着かない日々が続く。
両親が怖い人達だったらどうしよう、別れてちょうだいなどと言われたらどうしよう。
私みたいな大学に出ていない人間が、税理士の息子と交際していることをよく思わないかもしれない。雅臣の父親のように。私は、マイナスなイメージばかりが湧いて、仕事中でも考えるようになった。
「一さん、最近なんかありました?」
突然大塚さんにそんなことを言われ、仕事中に上の空だったことでもあったのかと慌てる。
「大丈夫です。仕事はちゃんとしてくれています。いつも通りです」
すかさずフォローが入ったが、「あんまり元気ないですよね」と言われた。
大塚さんは新婚だけれど結婚まで色々あり、一番私の心情がわかる存在でもあるが、なんせ23歳だ。
一回り近くも年下の彼女に相談するのも気が引けるが、結婚に対しては私よりも先輩なのだ。
「実はさ、今度彼の両親に会うことになったんだよね……」
いつか大塚さんが逆プロポーズをした秘密を教えてくれたため、私もこっそり打ち明けることにした。もちろん、彼女との秘密は誰にも口外していない。
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