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愛情
【20】
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「また真っ赤になって、可愛いのね。こんなに周のことを好きになってくれる子がいるなんて嬉しいわ」
母親は、心底嬉しそうに笑ってくれた。周を好きになってくれて嬉しい。
そんなふうに言ってもらえたら、彼のことを好きになってよかったと心から思える。そして、彼の両親のこともとても好きになれそうだった。
暫く談笑していると、あまねくんがようやく戻ってきて、「あと10分くらいで奏着くって」と言った。
「そうなのね。周、皆もうご飯食べ終わっちゃったわよ。あなたも早く食べちゃいなさい」
席に戻ってきたあまねくんに向かって母親はそう言い、空いた皿を片付け始めた。
「あ……お手伝いします」
今度こそはと立ち上がるが、「いいのよ、座ってて」と断られてしまった。
あまねくんからも「ここにいて」と服の袖を掴まれてしまった。手伝うといっても、指示してもらわなければ動けないため、私は「すみません……」と謝ってそのまま腰を下ろした。
妹さんももうすぐくると言っていた。たしか、先程23歳だと言っていた気がする。
年齢は大塚さんと同じくらいだ。あまねくんは、兄弟皆父さんに似てないと言っていたし、きっと妹さんもお母さん似なのだろう。
律くんもあまねくんもこの美形だ。女の子なら更に美しいに違いない。
大塚さんみたいに愛嬌があって可愛らしい子ならいいなと色々想像する。
律くんとも少し話ができたし、後は妹さんと仲良くできたら嬉しい。女同士だし、私には妹がいないから、ゆくゆくは本当の姉のように接してくれたらいいななどと少しだけ期待した。
あまねくんも食事を済ませ、あっという間にダイニングテーブルの上は片付いた。
どの料理も申し分なく美味しかったし、あまねくんのお母さんと仲良くなれたら、作り方も教えてもらいたいななんて思う。
とっくに10分は過ぎている気がして、また少しそわそわする。早く妹さんに会いたいような、できれば会いたくないような。
ゆくゆくは、結婚の挨拶に来なければいけないのなら、やはり今会っておいた方がいい。そんなことを思っていると、「ただいまー」と可愛らしい声が聞こえた。
声からも若さと可愛らしさがわかるほどだ。
「帰って来たみたい」
あまねくんは、こちらを向いて微笑む。あまねくんがいてくれるんだから大丈夫。妹さんに挨拶してもう少ししたら、一緒に彼のマンションに帰ろう。
今日の出来事を2人で思い出しながら、色々話せたらいいななんて少し先のことまで考えた。
リビングのドアが開いて、顔を出した女性を見て息を飲んだ。そこにいたのは、人気雑誌の表紙を飾っていて、[かなんせ]の愛称で親しまれている守屋奏だったからだ。
母親は、心底嬉しそうに笑ってくれた。周を好きになってくれて嬉しい。
そんなふうに言ってもらえたら、彼のことを好きになってよかったと心から思える。そして、彼の両親のこともとても好きになれそうだった。
暫く談笑していると、あまねくんがようやく戻ってきて、「あと10分くらいで奏着くって」と言った。
「そうなのね。周、皆もうご飯食べ終わっちゃったわよ。あなたも早く食べちゃいなさい」
席に戻ってきたあまねくんに向かって母親はそう言い、空いた皿を片付け始めた。
「あ……お手伝いします」
今度こそはと立ち上がるが、「いいのよ、座ってて」と断られてしまった。
あまねくんからも「ここにいて」と服の袖を掴まれてしまった。手伝うといっても、指示してもらわなければ動けないため、私は「すみません……」と謝ってそのまま腰を下ろした。
妹さんももうすぐくると言っていた。たしか、先程23歳だと言っていた気がする。
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律くんもあまねくんもこの美形だ。女の子なら更に美しいに違いない。
大塚さんみたいに愛嬌があって可愛らしい子ならいいなと色々想像する。
律くんとも少し話ができたし、後は妹さんと仲良くできたら嬉しい。女同士だし、私には妹がいないから、ゆくゆくは本当の姉のように接してくれたらいいななどと少しだけ期待した。
あまねくんも食事を済ませ、あっという間にダイニングテーブルの上は片付いた。
どの料理も申し分なく美味しかったし、あまねくんのお母さんと仲良くなれたら、作り方も教えてもらいたいななんて思う。
とっくに10分は過ぎている気がして、また少しそわそわする。早く妹さんに会いたいような、できれば会いたくないような。
ゆくゆくは、結婚の挨拶に来なければいけないのなら、やはり今会っておいた方がいい。そんなことを思っていると、「ただいまー」と可愛らしい声が聞こえた。
声からも若さと可愛らしさがわかるほどだ。
「帰って来たみたい」
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