【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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愛情

【22】

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「奏!  まどかさんはそんな人じゃないよ!  それに好きになったのは俺からだし、俺の方がまどかさんじゃなきゃ嫌なんだから」

 あまねくんもその場に立ち上がり、私を庇うようにそう言ってくれる。けれど、私は直接否定されたショックが大きくて、彼の言葉さえ頭に入ってこなかった。

「あっくん、どうしちゃったの?  そんなこと言う人じゃなかったじゃん……。この人に騙されてるんだよ!」

「騙されてなんかないよ!」

「もっと冷静になって考えてみてよ。子供ができたって可哀想だよ。父親は若いのに、母親は年老いてってさ。そもそも30代でまともに子供産めるの?」

 子供の話を出されると正直もっと辛い。
 茉紀もこの年で出産するのは大変だと言っていたし、そりゃ妊娠するなら若いに越したことはない。

「奏、いい加減にしなさいよ!  せっかくこうして来てくれてるのに失礼なことばかり言って!  まどかちゃん、本当にごめんなさいね……」

 母親は、私の左腕を擦りながら申し訳なさそうに眉を下げた。

「いえ……奏さんの言っていることもごもっともなので……」

「ほら、自覚あるんじゃない。自覚あるくせに実家までくるってどんだけ図々しいの。私は、あなたみたいなおばさんが兄の結婚相手だなんて認めませんからね!」

 キッと睨み付けるように鋭い眼孔でそう言われてしまう。

「奏、何でそんなに突っかかるの!」

「別に突っかかってない。私、疲れてるから。挨拶済んだなら早く帰れば?」

 彼女は、ふいっと顔を背けると、そのままリビングを出ていってしまった。

「まどかさん、ごめん……。いつもはあんな感じじゃないんだけど……」

 あまねくんも戸惑っているようで、伏せ目がちにそう言う。

「ううん。きっと妹さんはあまねくんのこと大好きなんだね……。心配するのも無理ないよ」

 そうは言ってみたものの、受け入れられたわけじゃない。
 年齢のことを言われてしまっては、いつ挨拶にきたところで否定されて終わりだ。
 結婚なんて、家族の許可があって成り立つもの。今後両家の付き合いをしていくなら、円満な方がいいに決まっている。

「まどかさん……。本当にごめん。奏のことは、俺から説得するから」

 そう言ったあまねくんに続き、「まどかさん、本当に不愉快な思いをさせてしまって申し訳ない。
 娘には、私から後で厳しく注意しておきます」と先程は一言も発しなかった父親がそう言った。

「いえ……私は大丈夫ですので、あまり叱らないであげて下さい。言いたいこともよくわかりますので……」

「そんなことないわ。言い方ってものがあるでしょ。律も周も幼い頃から奏の面倒をよくみてくれたから、お兄ちゃんをとられて悔しい思いもあるんだと思うけど、それにしたって酷いことを言ったと思うわ。本当にごめんなさい……。私と主人は、あなた達のことを応援してるから、よかったらまた遊びにいらして」

 母親は不安気な表情を浮かべる。この家族にしてみれば私は客人で、その機嫌を損ねたとあってはあまねくんの面目も潰れてしまうからだろう。
 しかし、私の立場からすれば、家族の中に割って入った他人で、今まで築き上げてきたものを崩そうとする邪魔者でしかない。
 どちらの立場も苦しいものであり、円滑な顔合わせとはいかなかった。

 散々あまねくんとその両親に謝罪をされ、ぎこちないまま、守屋家を後にした。
 実家に行く前は、挨拶が終わったらあまねくんの住むマンションに戻り、ゆっくり2人の時間を楽しもうという話をしていたが、とてもそんな気分にはなれなかった。

「まどかさん……ごめんね」

「もう謝らなくていいよ。あまねくんの御両親は認めてくれたしさ、私は嬉しかったよ」

 帰りの車内の空気は重い。

「うん……」

「それに、律くんとも少し話ができたし。ほら、結婚したら私の方が年上なのに律くんにとっては妹になっちゃうでしょ?  だから、律くんの方が複雑なんじゃないかなって心配だったけど、お話してくれただけ嬉しかったし」

「律はあんまり他人に興味がないから……。自分のことには一生懸命だけど、黙々と淡々とこなすタイプだし、他人のことをあれこれ言う方じゃないんだ。だから、俺達のことも否定はしてないけど、特に祝福もしてないと思う……」

「そっか……あまねくんとはタイプが違うよね」

「うん、違う。でも、家族のことは色々考えてくれるし、家でも言ったけど俺のことも奏のことも気にかけてくれたよ。ただ、奏のことは俺もまだ驚いてる……。電話では普通だったから。まあ、結婚したいって思ってるってことはあの場で初めて言ったんだけどさ……」

「うん。年齢のことはどうにもならないけどさ、私も妹さんに認めてもらえるように頑張るよ」

 強がってそうは言ってみたものの、本当は今にも泣き出しそうで、ぐっと涙を堪えて笑顔を作るのに必死だった。
 いつもなら、泣きたい時は、あまねくんの前で吐き出してしまうけれど、彼の家族に対しては、これ以上彼に謝ってほしくなくて気張って見せるので精一杯だった。
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