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愛情
【34】
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「勘違いさせてごめんね。私も説明すればよかったのに、言葉が足りなかったね……」
「ううん……。ごめ……疑いたくなかったけど……まどかさんが俺のこと避けてる気がして……」
「ごめんね……。本当はね、ちょっとあまねくんと妹さんの話になるの気まずかったんだ……」
「そうだよね……。俺もまどかさんがすごく傷付いてるんじゃないかって思って心配だった」
「ありがとう……。いつも私のこと想ってくれてありがとうね」
彼の優しさが心に染みて、私はなんて酷いことをしてしまったんだろうと自分自身に憤りすら感じた。
彼の優しさに甘えて、自分本意で、彼のことまで考えてあげられなかった。
私は、少し彼の体を離し、涙で濡れた両頬を両手で包んだ。涙で余計に冷やされた頬が、痛いくらいに私の手に伝わる。
真っ赤に充血した目を見つめて、私はそのままあまねくんの唇にキスをした。
いつもは彼の体温が感じられるのに、唇さえも冷えきっていて、こんなになるまで私のことを待っていてくれたのだと、彼の愛情を感じさせた。
唇を離すと、彼は目をまん丸くさせ、「……まどかさんからキスしてくれるなんて初めてだね」と言った。
そう言われて、ようやくはっとして顔が熱くなる。
「何で今更赤くなるの?」
彼は、ふふっと笑って私の頬に優しくキスをくれた。
「あの……その……今のは、ちょっと無意識で……。土曜日、できなかったから……私もあまねくんとしたくて……」
言っている内にどんどん体温が上昇して、暑いくらいだった。
「可愛い……。もっと真っ赤になってる。……そうだよね、まどかさんってこんなに可愛い人だもんね……。結城さんと別れるまでキスもさせてくれなかったくらいなのに。俺、最低だ……。もしかしたら、まどかさんが浮気してるんじゃないかなんて疑ったりして……」
あまねくんは、顔を歪めて下唇を噛んだ。
「あまねくんは、悪くないよ! そんなふうに思わせた私が悪いの。だから、そんな顔しないで。私、もっとちゃんと、あまねくんのこと大事にするから……私のこと許してくれる?」
申し訳ない気持ちでいっぱいで、心から許して欲しいと思いながら謝れば、「許して欲しいのは俺の方だよ……。もっと強引にでもまどかさんの傍にいればよかった。あの後さ、奏ともう1回話をしたんだ。そしたら、まどかさんなら、俺じゃなくてもまどかさんよりも年上でまどかさんと結婚したい男なんてわんさかいるんだから、俺が傍にいなくても大丈夫だって言われたんだ」と悲しそうに目を伏せた。
「え?」
「そんなこと言われたらさ、他の人にまどかさんとられちゃうんじゃないかって不安で……」
「私、あまねくんだけだよ? 私だって、あまねくんみたいに素敵な人がいつまでも私のこと好きでいてくれるわけじゃないかもって考えたら不安で……どうせ私は年上だしって卑屈になってたの……」
「そんな……俺だってまどかさんだけだよ。まどかさんしか好きじゃないし、今後だって冷めたりしないよ。言ったじゃん……俺、会う度にまどかさんのこと好きになるんだよ?」
「……私も。私もあまねくんのこと好き。やっぱり、あまねくんの家族に反対されても、一緒にいたいの。結婚も、あまねくんとじゃなきゃ嫌なの」
自分の本音を口に出せば、私の目からもぽろっと涙が溢れ落ちた。
あの土曜日の夜以降泣いていなかった。忙しい振りをして、あまねくんから目を背けて、泣くことさえ忘れようとした。
もっと彼に頼ればよかった。辛いとハッキリ言えばよかった。あまねくんだったら、その全てを受け入れてくれたはずなのに。
もう一度ぎゅっと彼に抱きつけば、今度は優しく抱き締めてくれた。
ようやくあまねくんの匂いを近くに感じて、ここが本来の私達の距離感だったと気付く。
あまねくんはこんなに私を想ってくれているのに、どうして妹さんの言葉ばかりに気を取られてしまったんだろう。
こんなにお互いを想い合っていたはずなのに、どうして相手の気持ちを考えてあげられなかったんだろう。
私達は、もう一度ちゃんと向き合う必要がある。あの日のことも、今までのことも。
「ねぇ、あまねくん。ちゃんと話し合おう? 体冷えちゃったからさ、とりあえず中入ろうよ。お風呂入れるから」
「うん……」
彼の顔を見上げれば、今度は穏やかな表情で頷いてくれた。
「ううん……。ごめ……疑いたくなかったけど……まどかさんが俺のこと避けてる気がして……」
「ごめんね……。本当はね、ちょっとあまねくんと妹さんの話になるの気まずかったんだ……」
「そうだよね……。俺もまどかさんがすごく傷付いてるんじゃないかって思って心配だった」
「ありがとう……。いつも私のこと想ってくれてありがとうね」
彼の優しさが心に染みて、私はなんて酷いことをしてしまったんだろうと自分自身に憤りすら感じた。
彼の優しさに甘えて、自分本意で、彼のことまで考えてあげられなかった。
私は、少し彼の体を離し、涙で濡れた両頬を両手で包んだ。涙で余計に冷やされた頬が、痛いくらいに私の手に伝わる。
真っ赤に充血した目を見つめて、私はそのままあまねくんの唇にキスをした。
いつもは彼の体温が感じられるのに、唇さえも冷えきっていて、こんなになるまで私のことを待っていてくれたのだと、彼の愛情を感じさせた。
唇を離すと、彼は目をまん丸くさせ、「……まどかさんからキスしてくれるなんて初めてだね」と言った。
そう言われて、ようやくはっとして顔が熱くなる。
「何で今更赤くなるの?」
彼は、ふふっと笑って私の頬に優しくキスをくれた。
「あの……その……今のは、ちょっと無意識で……。土曜日、できなかったから……私もあまねくんとしたくて……」
言っている内にどんどん体温が上昇して、暑いくらいだった。
「可愛い……。もっと真っ赤になってる。……そうだよね、まどかさんってこんなに可愛い人だもんね……。結城さんと別れるまでキスもさせてくれなかったくらいなのに。俺、最低だ……。もしかしたら、まどかさんが浮気してるんじゃないかなんて疑ったりして……」
あまねくんは、顔を歪めて下唇を噛んだ。
「あまねくんは、悪くないよ! そんなふうに思わせた私が悪いの。だから、そんな顔しないで。私、もっとちゃんと、あまねくんのこと大事にするから……私のこと許してくれる?」
申し訳ない気持ちでいっぱいで、心から許して欲しいと思いながら謝れば、「許して欲しいのは俺の方だよ……。もっと強引にでもまどかさんの傍にいればよかった。あの後さ、奏ともう1回話をしたんだ。そしたら、まどかさんなら、俺じゃなくてもまどかさんよりも年上でまどかさんと結婚したい男なんてわんさかいるんだから、俺が傍にいなくても大丈夫だって言われたんだ」と悲しそうに目を伏せた。
「え?」
「そんなこと言われたらさ、他の人にまどかさんとられちゃうんじゃないかって不安で……」
「私、あまねくんだけだよ? 私だって、あまねくんみたいに素敵な人がいつまでも私のこと好きでいてくれるわけじゃないかもって考えたら不安で……どうせ私は年上だしって卑屈になってたの……」
「そんな……俺だってまどかさんだけだよ。まどかさんしか好きじゃないし、今後だって冷めたりしないよ。言ったじゃん……俺、会う度にまどかさんのこと好きになるんだよ?」
「……私も。私もあまねくんのこと好き。やっぱり、あまねくんの家族に反対されても、一緒にいたいの。結婚も、あまねくんとじゃなきゃ嫌なの」
自分の本音を口に出せば、私の目からもぽろっと涙が溢れ落ちた。
あの土曜日の夜以降泣いていなかった。忙しい振りをして、あまねくんから目を背けて、泣くことさえ忘れようとした。
もっと彼に頼ればよかった。辛いとハッキリ言えばよかった。あまねくんだったら、その全てを受け入れてくれたはずなのに。
もう一度ぎゅっと彼に抱きつけば、今度は優しく抱き締めてくれた。
ようやくあまねくんの匂いを近くに感じて、ここが本来の私達の距離感だったと気付く。
あまねくんはこんなに私を想ってくれているのに、どうして妹さんの言葉ばかりに気を取られてしまったんだろう。
こんなにお互いを想い合っていたはずなのに、どうして相手の気持ちを考えてあげられなかったんだろう。
私達は、もう一度ちゃんと向き合う必要がある。あの日のことも、今までのことも。
「ねぇ、あまねくん。ちゃんと話し合おう? 体冷えちゃったからさ、とりあえず中入ろうよ。お風呂入れるから」
「うん……」
彼の顔を見上げれば、今度は穏やかな表情で頷いてくれた。
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