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愛情
【33】
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「どうしたの? 仕事帰り? ずっと待ってたの?」
もう時刻は21時半を超えている。彼と電話をしたのは18時ちょっと過ぎくらいだっただろうか。
仕事帰りにそのままここへ寄ったとすれば、2時間以上家の前で待っていたのかもしれない。いくら4月とはいえ、まだ夜は冷える。
こんな中にずっといたら風邪をひいてしまう。
「寒かったでしょ? とりあえず、中入ろう?」
彼の手を握れば、すっかり冷えてしまっていた。
握った手を引いて部屋まで促そうとすると、突然手を振り解かれた。
「あまねくん?」
「……まどかさん、今の人誰?」
「え? 今の?」
「今、男の人と会ってたよね? 大人で、優しそうな人だったね……」
「……あれは」
「何で? 最近、ちゃんと連絡取れなくて……俺とは会えないのに、他の男とは会うの?」
「あまねくん、違うよ!」
「その靴……俺があげたのだよね? 俺、まどかさんが他の男とデートするためにあげたわけじゃないよ……」
彼の声が震えて、目を伏せると、彼の頬を1滴の雫が伝わった。
「……え?」
綺麗にキラッと光る雫に目を奪われて言葉を失った。
「その、袋も……今の人に貰ったの? AMELIAの靴は……俺があげたかったのに。何で……他の男からのプレゼントなんて受け取って欲しくなかった……」
堰を切ったように次々と流れ落ちる涙に戸惑う。あまねくんが泣いてる……?
「何で、他の男の前であんなに楽しそうに笑うの? あの人がいるからっ……俺との結婚やめるの? あの人とっ……結婚するの?」
ズルズルと鼻を啜りながら、流れる涙を手の甲で拭う彼。
とんでもない勘違いをさせてしまった。あんなに優しくて、明るいあまねくんがこんなにも泣きじゃくる程不安を抱えていたなんて思ってもみなかった。
「違うんだよ、あまねくん! 不安にさせてごめんね」
私は、立ち尽くした彼に抱き付いた。
彼の方が背が高い分、包み込んではあげられないけれど、その冷えた体も、不安でいっぱいになった心もすぐにでも暖めてあげたくて、ぎゅっと力を込める。
「何が違うの? ……そんなにオシャレして、化粧もいつもより濃いし……あの人に抱かれてきたの? 次のデートの約束もしてたよね?」
私を突き放すことはしなかったけれど、覇気のない声色で静かに問う。
体は震えていて、寒さからくるものだけではないことくらいわかる。
「違うよ。私は、あまねくんだけだもん。あの人ね、お姉ちゃんの旦那さんになる人なの」
「……え?」
訳がわからないといったふうに動きを止める彼。
「私のお姉ちゃんね、あの人と結婚するの。昨日あまねくんから電話きた時、切っちゃったでしょ? お姉ちゃん、学校の先生なんだけど、授業の資料忘れて届けてたんだ。ちょうどあまねくんと電話してる時にお姉ちゃんが校舎から出てきたから慌てて切っちゃったの。
そのお礼にって今あの人とお姉ちゃんとご飯に行ってたんだ。……AMELIAの靴はお姉ちゃんからのお礼の品。今丁度、お姉ちゃんが妊娠して、入籍するから両家の顔合わせの日取りを決めなきゃねって話してたの」
「じゃあ……日取りが決まったらって……」
「うん、顔合わせ……」
「……なんだぁ……」
彼は、崩れるようにそのまま顔を私の肩に埋めた。ようやく体を預けてくれたことに安堵する。
もう時刻は21時半を超えている。彼と電話をしたのは18時ちょっと過ぎくらいだっただろうか。
仕事帰りにそのままここへ寄ったとすれば、2時間以上家の前で待っていたのかもしれない。いくら4月とはいえ、まだ夜は冷える。
こんな中にずっといたら風邪をひいてしまう。
「寒かったでしょ? とりあえず、中入ろう?」
彼の手を握れば、すっかり冷えてしまっていた。
握った手を引いて部屋まで促そうとすると、突然手を振り解かれた。
「あまねくん?」
「……まどかさん、今の人誰?」
「え? 今の?」
「今、男の人と会ってたよね? 大人で、優しそうな人だったね……」
「……あれは」
「何で? 最近、ちゃんと連絡取れなくて……俺とは会えないのに、他の男とは会うの?」
「あまねくん、違うよ!」
「その靴……俺があげたのだよね? 俺、まどかさんが他の男とデートするためにあげたわけじゃないよ……」
彼の声が震えて、目を伏せると、彼の頬を1滴の雫が伝わった。
「……え?」
綺麗にキラッと光る雫に目を奪われて言葉を失った。
「その、袋も……今の人に貰ったの? AMELIAの靴は……俺があげたかったのに。何で……他の男からのプレゼントなんて受け取って欲しくなかった……」
堰を切ったように次々と流れ落ちる涙に戸惑う。あまねくんが泣いてる……?
「何で、他の男の前であんなに楽しそうに笑うの? あの人がいるからっ……俺との結婚やめるの? あの人とっ……結婚するの?」
ズルズルと鼻を啜りながら、流れる涙を手の甲で拭う彼。
とんでもない勘違いをさせてしまった。あんなに優しくて、明るいあまねくんがこんなにも泣きじゃくる程不安を抱えていたなんて思ってもみなかった。
「違うんだよ、あまねくん! 不安にさせてごめんね」
私は、立ち尽くした彼に抱き付いた。
彼の方が背が高い分、包み込んではあげられないけれど、その冷えた体も、不安でいっぱいになった心もすぐにでも暖めてあげたくて、ぎゅっと力を込める。
「何が違うの? ……そんなにオシャレして、化粧もいつもより濃いし……あの人に抱かれてきたの? 次のデートの約束もしてたよね?」
私を突き放すことはしなかったけれど、覇気のない声色で静かに問う。
体は震えていて、寒さからくるものだけではないことくらいわかる。
「違うよ。私は、あまねくんだけだもん。あの人ね、お姉ちゃんの旦那さんになる人なの」
「……え?」
訳がわからないといったふうに動きを止める彼。
「私のお姉ちゃんね、あの人と結婚するの。昨日あまねくんから電話きた時、切っちゃったでしょ? お姉ちゃん、学校の先生なんだけど、授業の資料忘れて届けてたんだ。ちょうどあまねくんと電話してる時にお姉ちゃんが校舎から出てきたから慌てて切っちゃったの。
そのお礼にって今あの人とお姉ちゃんとご飯に行ってたんだ。……AMELIAの靴はお姉ちゃんからのお礼の品。今丁度、お姉ちゃんが妊娠して、入籍するから両家の顔合わせの日取りを決めなきゃねって話してたの」
「じゃあ……日取りが決まったらって……」
「うん、顔合わせ……」
「……なんだぁ……」
彼は、崩れるようにそのまま顔を私の肩に埋めた。ようやく体を預けてくれたことに安堵する。
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