50 / 289
愛情
【49】
しおりを挟む
どれ程の時間、彼は私の頭を撫でながら抱き締めていてくれただろうか。
黙って泣き続ける私に、彼も黙って傍にいてくれた。それだけで十分だった。
千代さんの存在が私にとってどれだけ大切だったか。そんな大切な人を失ってどれ程辛かったか。
千代さんを知らないあまねくんが共感できるはずがないのに、それでも必死に私の心情に寄り添おうとしてくれる。こんなに愛情を注いでくれる人はそういない。
「……もう、大丈夫」
「ん」
「……あまねくんは、ずっと一緒にいて」
「いるよ。俺が一緒にいたいから」
「……いなくならないでね」
「ならないよ。まどかさん、泣き虫だからね。1人にさせたら俺が心配」
彼の言葉は、暖かくて優しい。私のためというよりも、自分がと言ってくれる。
その分彼からの愛情も伝わってきて、この先もずっと彼といたいと願う。
こんな時だからなのか、毎日彼と一緒にいたいと思った私は、ようやく彼が結婚したいと言ってくれた気持ちがわかったような気がした。
もしも彼が、今の私が彼を必要としているのと同じくらい私を必要としてくれていたのなら、彼にとっての結婚は、今まで私が考えていたような簡単なものじゃない。
生活を共にして、人生を共にして、いつか子供ができて、老後を過ごす。
そんな箇条書きで済むような簡単な問題じゃない。
精神的に全てを委ねられる、そんな目に見えない繋がりを欲しているのなら、紙1枚で済ませるにはとても簡易的で薄っぺらいもののように思えた。
この時、初めて彼との結婚と心から向き合う決心ができた気がした。
妹さんに認めてもらえるように……そんな決意をしたけれど、それさえも後回しでいいかと思える程に、とにかく彼と過ごす時間を1秒でも多く私のものにしてしまいたかった。
きっと、これが独占欲。
今まで知らなかった感情。私は、この人を誰にも渡したくない。甘やかしてくれるのも、優しい言葉をくれるのも、時間を割いてくれるのも、全部私だけのためにしてくれたらいいのに。
「……どうしたら、あまねくんは私だけのものになる?」
顔を上げて彼の目を見つめる。綺麗な眼でこちらを見ると、きょとんとした顔で「変なこと言うね。俺は、とっくにまどかさんだけなのに。思い通りにならないのはまどかさんの方でしょ」なんて笑われてしまう。
そうじゃないのに。こんなに禍々しい、汚い感情は、今まで知らなかったのに。
全部、全部独り占めできたらいいのに、そんなことを考えていることを知られたら、彼は重たくなっちゃうかな……。
「……今日、帰りたくない」
顔を伏せて、彼の胸に頬を寄せる。
「珍しい……まどかさんからそんなこと言うなんて。いいよ、いつでも泊まってって」
「うん……。毎日、一緒にいたい」
「……じゃあ、俺と一緒だね」
少し間が空いたものだから、私に合わせてくれたんじゃないかと不安になって顔を上げれば「本当だよ。そんな顔しないの」そう言って笑いながら私の頭にキスをくれた。
「言っとくけど、俺の方がまどかさんのこと好きだからね」
その言葉に、菅沼さんとの仲を勘違いして泣きじゃくるあまねくんの姿を思い出す。
逆の立場なら私だって大泣きする。私は、こんなに醜い程、彼のことしか見えていないのに。
彼が泣く程私のことを好きでいてくれていてくれたのはわかったけれど、私の独占欲はどの程度受け入れてもらえるのだろうか。
やり場のない、大きくなりすぎた気持ちをどうしたらいいのか、私にはわからなかった。
黙って泣き続ける私に、彼も黙って傍にいてくれた。それだけで十分だった。
千代さんの存在が私にとってどれだけ大切だったか。そんな大切な人を失ってどれ程辛かったか。
千代さんを知らないあまねくんが共感できるはずがないのに、それでも必死に私の心情に寄り添おうとしてくれる。こんなに愛情を注いでくれる人はそういない。
「……もう、大丈夫」
「ん」
「……あまねくんは、ずっと一緒にいて」
「いるよ。俺が一緒にいたいから」
「……いなくならないでね」
「ならないよ。まどかさん、泣き虫だからね。1人にさせたら俺が心配」
彼の言葉は、暖かくて優しい。私のためというよりも、自分がと言ってくれる。
その分彼からの愛情も伝わってきて、この先もずっと彼といたいと願う。
こんな時だからなのか、毎日彼と一緒にいたいと思った私は、ようやく彼が結婚したいと言ってくれた気持ちがわかったような気がした。
もしも彼が、今の私が彼を必要としているのと同じくらい私を必要としてくれていたのなら、彼にとっての結婚は、今まで私が考えていたような簡単なものじゃない。
生活を共にして、人生を共にして、いつか子供ができて、老後を過ごす。
そんな箇条書きで済むような簡単な問題じゃない。
精神的に全てを委ねられる、そんな目に見えない繋がりを欲しているのなら、紙1枚で済ませるにはとても簡易的で薄っぺらいもののように思えた。
この時、初めて彼との結婚と心から向き合う決心ができた気がした。
妹さんに認めてもらえるように……そんな決意をしたけれど、それさえも後回しでいいかと思える程に、とにかく彼と過ごす時間を1秒でも多く私のものにしてしまいたかった。
きっと、これが独占欲。
今まで知らなかった感情。私は、この人を誰にも渡したくない。甘やかしてくれるのも、優しい言葉をくれるのも、時間を割いてくれるのも、全部私だけのためにしてくれたらいいのに。
「……どうしたら、あまねくんは私だけのものになる?」
顔を上げて彼の目を見つめる。綺麗な眼でこちらを見ると、きょとんとした顔で「変なこと言うね。俺は、とっくにまどかさんだけなのに。思い通りにならないのはまどかさんの方でしょ」なんて笑われてしまう。
そうじゃないのに。こんなに禍々しい、汚い感情は、今まで知らなかったのに。
全部、全部独り占めできたらいいのに、そんなことを考えていることを知られたら、彼は重たくなっちゃうかな……。
「……今日、帰りたくない」
顔を伏せて、彼の胸に頬を寄せる。
「珍しい……まどかさんからそんなこと言うなんて。いいよ、いつでも泊まってって」
「うん……。毎日、一緒にいたい」
「……じゃあ、俺と一緒だね」
少し間が空いたものだから、私に合わせてくれたんじゃないかと不安になって顔を上げれば「本当だよ。そんな顔しないの」そう言って笑いながら私の頭にキスをくれた。
「言っとくけど、俺の方がまどかさんのこと好きだからね」
その言葉に、菅沼さんとの仲を勘違いして泣きじゃくるあまねくんの姿を思い出す。
逆の立場なら私だって大泣きする。私は、こんなに醜い程、彼のことしか見えていないのに。
彼が泣く程私のことを好きでいてくれていてくれたのはわかったけれど、私の独占欲はどの程度受け入れてもらえるのだろうか。
やり場のない、大きくなりすぎた気持ちをどうしたらいいのか、私にはわからなかった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる