【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
51 / 289
愛情

【50】

しおりを挟む
「あ……そういえば、作業着……。お風呂入ったのにごめんね。これ、すごく汚い」

 不意に現実に引き戻され、上着の裾を握って言った。もしかしたら排泄物がついているかもしれないのに。
 業者がクリーニングしてくれればいいのだけれど、うちの施設では各自で洗濯となっていた。
 基本は私服できて、更衣室で作業着に着替え、帰りは私服に着替えて帰ることになっている。しかし、ポロシャツに綿パンツという服装は、特に目立ちもせず施設名が入っているわけでもないため、多くの職員は作業着で出勤し、そのまま帰宅していた。
 私も、着替えていたのは新人の頃だけで、今では汚れた体で私服に袖を通すのが嫌で、その手法をとっていた。

「いいよ、別に」

「本当に汚いから着替えた方がいいよ」

「そこまで言う?」

 彼は笑ってしまっている。

「まどかさんもシャワー浴びる?」

「うん……着替え貸してくれる?」

「待ってて」

 彼は立ち上がると、キッチンを通りすぎて、寝室の方へと向かっていった。すぐに上下のスウェットを持って来てくれてた。
 何度か使用したことのある彼の浴室に一緒に行く。

「まどかさんがあんまり汚い、汚い言うから俺ももう1回シャワー浴びようかな」

 彼は上着を脱ぎながらそう言う。程よくついた筋肉が綺麗で、少し割れた腹筋に目がいく。

「……一緒に入る?」

 あんなに恥ずかしくて嫌だった筈なのに、今ではシャワーを浴びるための数十分間離れる方が嫌な気がして、そんなことを口走ってしまった。

「え……?  どうしたの?  俺とはもうお風呂入らないんじゃなかった?」

 腰を屈めて、意地悪そうな表情で私と目線を合わせる。

「だ、だって……」

「だって?」

「……もうちょっと一緒にいたい……」

「……あんまり素直過ぎるのも困るな……。余裕なくなりそ」

 あまねくんは、右手で口元を多い、頬を赤らめた。いつも赤くなってるとからかわれるのは私の方で、こんなふうに照れている彼を見るのは初めてかもしれない。
 今まで見たことのない表情を知れたことが、一緒にお風呂に入る羞恥心よりも勝る。
 彼にもっと喜んでもらいたくて、彼の望むものを叶えてあげたいと思った。恥ずかしいけれど、彼の前で1枚ずつ服を脱ぐ。

「何回も見てるけどさ……恥ずかしそうに脱がれると……悪いことさせてる気分になる」

 肘や腕を使って、ところどころ隠しながら服を脱いでいくと、彼はそう言いながら、時折視線を外した。

「……恥ずかし……けど、一緒に入る……」

「うん……。そうだ、俺が頭洗ってあげるね」

「頭?」

 今度は一昨日とは逆に、私が前に座わらされ、髪を洗ってくれた。
 美容院以外で他人に頭を洗ってもらうことなどなくて新鮮だった。もちろん美容師さん程のスムーズさはないけれど、洗いにくそうにしながらも丁寧に洗い上げてくれた。
 私が顔を洗っている間に、彼は自身の体をもう一度洗っていた。それが終ると私の頭を洗っている間にお湯張りを始めた湯に浸かってしまった。

 恥ずかしながら、一昨日のように身体中を撫で回されるんじゃないかなんて考えていたものだから、彼から渡されたナイロンのタオルを抱えてそろそろと彼の方に目を向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...