【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【8】

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 遠いリビングの窓の外を見れば、だいぶ薄暗くなっている。
 ここへきたのは14時だったから、4時間くらいはいたことになるだろうか。
 玄関まで走っていったダリアさんの背中を見送ると、すぐに帰宅した主を連れて戻ってきた。

「あ……お客さんって周の……」

 そう言って軽く会釈したのは律くんだった。父親の方じゃなくて少しほっとしている。
 父親もいい人だったけれど、1人守屋家を訪問した身としてはまだハードルが高い。

「律くん、こんばんわ。お邪魔してます」

 立ち上がって彼の方へ体を向けた。

「いえ……周は一緒じゃないんですか?」

 ダイニングからリビングまで見渡してそう彼は言った。

「周はまだ仕事中でしょ。まどかちゃんね、昼間から来てくれてたのよ」

 ダリアさんが笑顔で言うと、彼は「1人で?」と目を丸くさせた。当然だろう。
 あまねくんの妹さんには拒絶され、苦い思い出のあるこの場所に丸腰で1人乗り込むなんて、律くんから見ればただ事ではない。だから、彼の反応は正しいものであった。

「ダリアさんが誘ってくれたの。遅くまで居座っちゃってごめんね」

 敬語はいらないと先日言われたものだから、あまねくんに話をするように接した。

「そう……ですか。祖母も一緒に?」

「うん。昨日はね、あまねくんと一緒に挨拶に来させてもらったんだけど、律くんまだ帰ってなかったみたいだったから……驚かせちゃってごめんね」

「いえ。それはかまわないです。この時間に祖母がここにいることに驚いたので……。話し相手ができたのなら、よかった」

 そう言って律くんは、おばあちゃんの横顔を見てふっと笑った。
 あ……、笑った。初めてみた微笑に少し嬉しくなった。
 やっぱりおばあちゃんのことになると優しそうな表情をする。迷惑がられなくてよかった。
 彼の表情を見て安堵した。

「ダリアさん、時間も気にせず遅くまですみませんでした」

 隣にいるダリアさんに視線を移せば、「ううん、引き留めちゃったのは私だもの。まどかちゃん、今からご飯作るからよかったら食べていったら?」と微笑んだ。

「いえ、先日お邪魔したばかりなのにそんなご迷惑は……」

「その内、周も帰ってくるだろうし、食べていったらいいんじゃないですか?」

 律くんも嫌がるだろうと断ったのだけれど、意外にも彼がそんな言葉を発した。

「律くんは……いいの?」

「俺は、別にかまわないです。周もあなたがここにいることを知ってるなら、一旦寄ると思いますよ」

「そう……かな」

 1、2時間お邪魔したら帰宅しようと思っていたし、あまねくんと会う約束もしていなかったから、今日も会えるならそれはそれで嬉しいけれど。

「じゃあ、決まり!  律は着替えてきて。まどかちゃんは少しお義母さんの相手しててくれる?」

 仕事を与えられて、少し背筋がピンとする。結局、あまねくんの父親とは会うことになりそうだけれど、あまねくんも帰ってくるならいいかなんて思ってしまう。
 ダリアさんに言われたように、もう一度おばあちゃんの隣に腰をかけた。

「今日はまた一緒に夕御飯をご馳走になることになりました」

 耳元で言えば「はいはい、どうぞ召し上がれ」と言って歯を見せて笑ってくれた。「まどかちゃん、おうちはどこ?」そう私の名前を呼んでくれたものだから驚きと感激が込み上げた。

「うそ……おばあちゃんが名前覚えてる」

 ポロリと律くんの口から溢れ、驚いた顔をしている。彼の反応を見て、やはり最近は忘れやすいのだろうと思った。
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