【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【9】

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「今日は、まどかちゃんとたくさんお話したものね。きっと楽しかったのね」

 ダリアさんがそう言ってくれて嬉しくなる。
 きっと次に訪れた時には忘れられてしまっているだろうが、今のこの時を大切にしようと思った。時間が気になって1度スマホを確認すれば、18:02を差している。
 あまねくんも仕事終わったかな。スマホをバッグに戻して、おばあちゃんとの会話を続けた。

 暫く話していると、律くんが着替えて戻ってきた。てっきり自室にこもって食事まで降りてこないんじゃないかと思っていたため、少し驚いた。

「律くんは、いつもこのくらいの時間に帰ってくるの?」

 おばあちゃんの正面に腰掛けた律くんに話しかける。昼間ダリアさんが座っていた席の隣だ。

「日によります。時間がかかっていた案件も最近終えて、今日はクライアントと依頼内容を確認するだけだったので早く帰ってこれました」

「そっか……弁護士さんって毎回仕事内容変わるんだもんね……。大変だね」

「まあ……でも、勉強にはなります」

「すごいなぁ……。あまねくんもそうだけど、常に勉強し続けないとならない職業は大変だね」

「介護職は違うんですか?」

「うーん……認知症の研修とか、体に負担がかかりにくい介助の方法とかの勉強会なんかはあるけど勉強っていう勉強はしないかな。福祉法とかも直接関わるのはケアマネとかだから、現場の私達はあんまり……」

 雅臣にも言われたことがあるけれど、資格を取るだけとって現在なにもしていない私は、律くんやあまねくんに比べれば努力も少ないだろう。

「体力仕事だと聞きます」

「そうだね。ずっと走り回ってるからね」

「走り回ってる?」

「うん。転びそうになったり、食べ物じゃないものを口に入れたり、暴れたり……。ナースコールが鳴りっぱなしになったり」

「壮絶ですね」

「まあ、しょうがないよね。家ではみられない人達がいるところだから」

「融通がきかないのは大変です」

「そうだけど……弁護士さんもそうじゃないの?  認知症はなくても聞き分けのいい人ばかりじゃないでしょう?」

「まあ……客だからと高圧的に出る人もいますけど、弁護士の場合は依頼を断ることもできるし、法律を持ち出せば半ば脅しのようなことも言えるので、クライアントとの立場で不利になることはあまりありません」

「じゃあ……検事さん?」

「それは厄介です」

 彼は少しだけ笑ってくれた。
 弁護士の仕事は、ドラマで見るくらいの浅はかな知識しかないけれど、こうやって少しでも律くんと会話が続くのは嬉しかった。

「裁判とかも行くんだよね?」

「たまに……。でも殆どが民事だし、一般的な依頼の場合、裁判に勝ち目がなければ行わないことの方が多いです。裁判は、よっぽどのことがあった場合だけだから、そんなにしょっちゅう行われるわけじゃありません。大体の人は和解金で納得されますしね」

「そっか……。利益が少なくても裁判が起こることもあるの?」

「本人が望めば。依頼費用を支払ってマイナスになる場合でも、社会的信用を取り戻すためだとか、プライドのためだとかって人もたまにいます」

「そっか……。裁判が多いのってどんな案件?」

「うーん……やっぱり離婚じゃないですか?  最近は、ハラスメントも増えたけど裁判すると社会的立場も危うくなるから示談で済ませることも多いですしね」

「やっぱ離婚かぁ……じゃあ、律くんも」

「俺は、受けません」

「え?」

「離婚って難しいんですよ。長引くばっかりでわりに合わない。それに、弁護士に頼めば離婚できるとか、親権とれるって思ってる無知な人が多いから、自分の主張ばっかりで全然話が進まない。それに対して親身に話を聞いて、根気よく寄り添っていくなんてこと、俺にできると思います?」

 彼は苦虫を潰したような顔をして言った。嫌なことはとてもわかりやすい。
 離婚の依頼、嫌いなんだなぁとこちらも苦笑してしまう。
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