【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【26】

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「……わかった。とにかく1度うちに連れてきなさい」

「本当?  会ってくれるんだね?」

「結婚するかしないかはそれからだ」

「はいはい」

「はいは1回でいい」

 うるさい父の小言は置いておいて、これでこっちは何とかなりそうだ。
 そこまで反対はしないだろうし、きっとあまねくんと会ったら誠実なあの子を認めてくれるだろう。

 若干渋ったことに対しては予想外だったが、いつまでも嫁にいかないのも将来が不安になることだろう。私は、本日2度目の安堵を胸に刻むのだった。

 明日は夜勤だし、今日は実家に泊まることにした。
 何もしなくても客間に布団が敷かれていて、お風呂も沸いているなんて素敵過ぎる。実家に戻ったら堕落しそうだなんて思いながら、あまねくんにラインを送った。

〔お姉ちゃん達の顔合わせ、無事に終わったよ。穏便に滞りなく事は済みました。よかった。あとね、あまねくんとのこともお父さんに話したよ。今度連れてきなさいって言ってた。反対はしてなかったから大丈夫〕

 それだけ送ると、布団にうつ伏せに倒れ込み、暫くそのまま顔を伏せてみる。実家の匂いがした。
 実家を出てから2年くらいまでは私の部屋も残っていたのに、さすがに5年以上も空いたら、全て片付けられてしまい、今ではもといた私の部屋も物置小屋になっている。
 客間に通されるなんて、私もすっかり客人扱いだ。

 娘2人が嫁に行き、この家に新たな住人がやってくることなどないのに、そもそも私の部屋を片付けてしまう意味があったのか。
 さすがに何かを処分する際にはこちらに断りを入れてのことではあったが、だからと言って全て片付けてしまうことはなかったのではないかと思う。

 しかし、母は「そのまま置くとカビが生えるし、部屋を残しておくなら定期的に自分で掃除しに来なさい」なんて言うものだから、大事なものはアパートに持ち帰り、それ以外のものは全て段ボールの中にしまい込むか、処分してしまった。

 そんなわけで、実家に帰る度に客人用の布団に通されるのだけれど、これだってそう頻度が高いわけではなかった。
 1度一人暮らしに慣れてしまうと、中々実家には戻らないものなのかもしれない。或いは、いつでも帰ることができるという安心感がそうさせるのかもしれない。

 ブーブブっと微かに震えるバイブ音で顔を挙げる。あまねくんからの返信だろう。
 そう思ってスマホを見ればやはりあまねくんで〔無事に終わってよかったね。お疲れ様。気疲れしてると思うから早めに寝てね。緊張するけど、まどかさんが俺の話をご両親にしてくれたの嬉しい。また都合のいい日教えてね〕そう書かれていた。

 うちの両親とあまねくんは土日休みだから、あとは私の勤務次第というところだろうか。今日みたいに早めに夕食を食べながら過ごすでもいいかななんて思いながら、勤務を見直そうとラインのトーク画面を戻る。
 そこで、ダリアさんからラインが届いていたことを知ったのだった。気付かなかったが、今日の夕方頃、届いていたようだった。
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