【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【32】

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 食事はダイニングテーブルに並べられたが、あまねくんは一向に帰ってこない。いつもと同じくらいの時間には帰れると思うと言っていたのに。

「まどかちゃん、先に食べる?」

「いえ……あまねくんを待っていてもいいですか?」

「いいけど……」

 ダリアさんがそう言いかけた時、玄関で音がした。
 帰って来た!  胸が高鳴るのを感じて、リビングのドアに顔を向ける。しかし、ドアを開けたのは律くんだった。

「……こんばんは」

 少しがっかりしながら、律くんに挨拶する。

「こんばんは。母さん、周は?  今日は俺より早いって聞いたけど」

「まだ帰ってないの。お母さんも今日は早く帰るって聞いたんだけど……。もう19時まわってるのにね……。お父さんが遅いのはいつものことだけど」

「そう。まあ、その内帰ってくるよ。着替えてくる」

 相変わらず淡々と話す律くん。
 彼が着替えに行っている間に、食事に目を向ける。あまねくんを待っていると言ったけれど、せっかく作っていただいたご飯が冷めてしまうのもしのびない。

 早く帰って来ないかなぁ……。
 待ち遠しくて、おばあちゃんと会話をしていても、注意がそちらにいく。
 もう1度玄関で音がして、今度こそ!  と主人の帰りを待ちわびるペットのように顔を上げる。

「ただいま……お母さん、ご飯ある?」
 
 そう言って入ってきた人物の顔を見て硬直する。言いたいことを言うだけ言って、一方的に電話を切られて以降、全く音沙汰のなかった相手だったからだ。

「こんばんは」

 一応形として挨拶をする。彼女の実家でもあるのだから、彼女が帰ってくることがあったって不思議ではない。
 だからといって何もこのタイミングで帰ってこなくてもいいではないかと軽く息をつく。

 今日彼女が帰ってくることは、ダリアさんも知らなかったのか「帰ってくるなら連絡くらいしてよ」と言っている。全くその通りだ。
 こちらとしても、事前に心の準備くらいはさせていただきたかった。

 そんな私の気も知らないで「何でいんの?」ともはや敬語もなく睨み付けられる。相当嫌われている。

「奏!  またそんな言い方して!  お母さんがまどかちゃん呼んだの。おばあちゃんと一緒にお茶会したのよ」

「お茶会?  おばあちゃんと?  ……何それ」

 心底嫌そうな顔をして、おばあちゃんに近付く。

「ねぇ、そこ私の席。おばあちゃん向こうの1番隅でしょ」

 おばあちゃんにまで私と同じくらいのキツイ口調で話す。その言い方には私も思うところがあったが、ダリアさんの手前、強くも出られなかった。

「奏?  今日帰ってくるって言ってたっけ?」

 着替えを終えて戻ってきた律くんは、彼女の後ろ姿を見つけて静かにそう問いかける。

「雑誌の取材が午前中で終わったから帰って来たの。明日の仕事なくなったし。ねぇ、退いてって言ってるでしょ!」

 律くんへの言葉もそこそこに、更に強い口調で言う奏ちゃん。当たりの強さに苛立ちさえ覚える。
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