87 / 289
ラポール形成
【32】
しおりを挟む
食事はダイニングテーブルに並べられたが、あまねくんは一向に帰ってこない。いつもと同じくらいの時間には帰れると思うと言っていたのに。
「まどかちゃん、先に食べる?」
「いえ……あまねくんを待っていてもいいですか?」
「いいけど……」
ダリアさんがそう言いかけた時、玄関で音がした。
帰って来た! 胸が高鳴るのを感じて、リビングのドアに顔を向ける。しかし、ドアを開けたのは律くんだった。
「……こんばんは」
少しがっかりしながら、律くんに挨拶する。
「こんばんは。母さん、周は? 今日は俺より早いって聞いたけど」
「まだ帰ってないの。お母さんも今日は早く帰るって聞いたんだけど……。もう19時まわってるのにね……。お父さんが遅いのはいつものことだけど」
「そう。まあ、その内帰ってくるよ。着替えてくる」
相変わらず淡々と話す律くん。
彼が着替えに行っている間に、食事に目を向ける。あまねくんを待っていると言ったけれど、せっかく作っていただいたご飯が冷めてしまうのもしのびない。
早く帰って来ないかなぁ……。
待ち遠しくて、おばあちゃんと会話をしていても、注意がそちらにいく。
もう1度玄関で音がして、今度こそ! と主人の帰りを待ちわびるペットのように顔を上げる。
「ただいま……お母さん、ご飯ある?」
そう言って入ってきた人物の顔を見て硬直する。言いたいことを言うだけ言って、一方的に電話を切られて以降、全く音沙汰のなかった相手だったからだ。
「こんばんは」
一応形として挨拶をする。彼女の実家でもあるのだから、彼女が帰ってくることがあったって不思議ではない。
だからといって何もこのタイミングで帰ってこなくてもいいではないかと軽く息をつく。
今日彼女が帰ってくることは、ダリアさんも知らなかったのか「帰ってくるなら連絡くらいしてよ」と言っている。全くその通りだ。
こちらとしても、事前に心の準備くらいはさせていただきたかった。
そんな私の気も知らないで「何でいんの?」ともはや敬語もなく睨み付けられる。相当嫌われている。
「奏! またそんな言い方して! お母さんがまどかちゃん呼んだの。おばあちゃんと一緒にお茶会したのよ」
「お茶会? おばあちゃんと? ……何それ」
心底嫌そうな顔をして、おばあちゃんに近付く。
「ねぇ、そこ私の席。おばあちゃん向こうの1番隅でしょ」
おばあちゃんにまで私と同じくらいのキツイ口調で話す。その言い方には私も思うところがあったが、ダリアさんの手前、強くも出られなかった。
「奏? 今日帰ってくるって言ってたっけ?」
着替えを終えて戻ってきた律くんは、彼女の後ろ姿を見つけて静かにそう問いかける。
「雑誌の取材が午前中で終わったから帰って来たの。明日の仕事なくなったし。ねぇ、退いてって言ってるでしょ!」
律くんへの言葉もそこそこに、更に強い口調で言う奏ちゃん。当たりの強さに苛立ちさえ覚える。
「まどかちゃん、先に食べる?」
「いえ……あまねくんを待っていてもいいですか?」
「いいけど……」
ダリアさんがそう言いかけた時、玄関で音がした。
帰って来た! 胸が高鳴るのを感じて、リビングのドアに顔を向ける。しかし、ドアを開けたのは律くんだった。
「……こんばんは」
少しがっかりしながら、律くんに挨拶する。
「こんばんは。母さん、周は? 今日は俺より早いって聞いたけど」
「まだ帰ってないの。お母さんも今日は早く帰るって聞いたんだけど……。もう19時まわってるのにね……。お父さんが遅いのはいつものことだけど」
「そう。まあ、その内帰ってくるよ。着替えてくる」
相変わらず淡々と話す律くん。
彼が着替えに行っている間に、食事に目を向ける。あまねくんを待っていると言ったけれど、せっかく作っていただいたご飯が冷めてしまうのもしのびない。
早く帰って来ないかなぁ……。
待ち遠しくて、おばあちゃんと会話をしていても、注意がそちらにいく。
もう1度玄関で音がして、今度こそ! と主人の帰りを待ちわびるペットのように顔を上げる。
「ただいま……お母さん、ご飯ある?」
そう言って入ってきた人物の顔を見て硬直する。言いたいことを言うだけ言って、一方的に電話を切られて以降、全く音沙汰のなかった相手だったからだ。
「こんばんは」
一応形として挨拶をする。彼女の実家でもあるのだから、彼女が帰ってくることがあったって不思議ではない。
だからといって何もこのタイミングで帰ってこなくてもいいではないかと軽く息をつく。
今日彼女が帰ってくることは、ダリアさんも知らなかったのか「帰ってくるなら連絡くらいしてよ」と言っている。全くその通りだ。
こちらとしても、事前に心の準備くらいはさせていただきたかった。
そんな私の気も知らないで「何でいんの?」ともはや敬語もなく睨み付けられる。相当嫌われている。
「奏! またそんな言い方して! お母さんがまどかちゃん呼んだの。おばあちゃんと一緒にお茶会したのよ」
「お茶会? おばあちゃんと? ……何それ」
心底嫌そうな顔をして、おばあちゃんに近付く。
「ねぇ、そこ私の席。おばあちゃん向こうの1番隅でしょ」
おばあちゃんにまで私と同じくらいのキツイ口調で話す。その言い方には私も思うところがあったが、ダリアさんの手前、強くも出られなかった。
「奏? 今日帰ってくるって言ってたっけ?」
着替えを終えて戻ってきた律くんは、彼女の後ろ姿を見つけて静かにそう問いかける。
「雑誌の取材が午前中で終わったから帰って来たの。明日の仕事なくなったし。ねぇ、退いてって言ってるでしょ!」
律くんへの言葉もそこそこに、更に強い口調で言う奏ちゃん。当たりの強さに苛立ちさえ覚える。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる