【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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ラポール形成

【31】

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 5月21日 火曜日

 カモミールの香りが鼻を抜ける。高級そうなティーカップを親指と人差し指で挟んで、口元に持っていく。
 いつも家では普段から愛用しているマグカップに緑茶もコーヒーも紅茶も関係なく注いでしまうため、こういった陶器に触れる機会は少ない。

 何杯目かになるハーブティーを優雅に飲んでいると、まるでお伽噺の主人公にでもなった気分になる。それも、この豪華なリビングとダイニングの雰囲気がもたらす効果だろう。

  1ヶ月ぶりに訪れた守屋家のダイニングテーブルと6つセットだったチェアーは全て新しい物に変わっていた。
 前回おばあちゃんの件で汚染されてしまったからだろう。新しいテーブルは、前回の真っ白い鏡面のものとは異なり、焦げ茶色の木目調だった。
 その雰囲気に合わせたのか、リビングのソファーまで新しいものに変わっていた。

 すっかり雰囲気の変わってしまった一室に驚いたが、ダリアさんは「2、3年に1回は模様替えをするの。
 だから今回もいい機会だったって思うことにするわ」そう言って笑っていた。元気そうで安心する。

 あまねくんも、あの後業者を呼んでダイニングのクリーニングを頼んだと言っていた。
 普通の家ならとりあえず拭いて、消毒して終わりだろうが、金銭のかけ方が違うと驚いてしまう。

 本日も、あまねくんには事前に実家にお邪魔することを伝えてある。
 前回は、私が長居をしたために、おばあちゃんの排泄事情が間に合わなかったため、今回は最初から16時に伺い、そのまま夕食をいただくことになっていた。

 1時間おきにおばあちゃんにトイレの声をかけ、今回は何事もなく楽しい時間を過ごせた。

 18時頃からダリアさんは夕食の支度を始め、その間私はおばあちゃんの昔の話を聞いて過ごす。
 おじいさんとの出会いや、あまねくんのお父さんのこと。彼を含めて、5人の子供がいるらしい。私の父も兄弟が6人おり、昔の人はたくさん子供を産んだんだなぁなんて感心する。

 あまねくんのお父さんは長男だけれど、お姉さんが2人いて、曾孫は16年も前に見ることができたと喜んでいた。
 早ければ、あと5年も生きれば玄孫まで見れるかもしれないと満面の笑みを見せる。初孫ができて喜んでいるうちの両親と比べるとスケールの大きな話だ。

 けれど、玄孫よりもこの家の孫達が曾孫を見せてくれる方が嬉しいと呟いているのを聞いて、少しだけ胸が痛くなった。
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