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ラポール形成
【35】
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「……綺麗事」
「きっかけはね。でも、綺麗事で続けられる職業じゃないよ。この前、奏ちゃんがモデルでもないくせにって私に言ったけど、職業には、その職業を体験した人にしかわからない苦労がある。その苦労を知ってるから頑張れるの。あなたはモデルで私は介護士。職種は違うけど、どちらも専門職だよ。知識とスキルが求められるの。その世界で努力して頑張っている人は、皆素敵でしょ。職業に上も下もないの」
「……昔は、雑誌に載るとおばあちゃん喜んでくれた。それなのに、一昨年くらいから雑誌見ても綺麗な子だねって言って私だってわからなくなった」
「……単純に見分けがつかなかっただけじゃない? 悪いけど、正直私も奏ちゃんくらいの若い子達皆同じに見えるもん」
「本当失礼! ……発言がおばさんだからね」
「まあ、奏ちゃんから見ればおばさんかもしれないけどさ……言っとくけど私、律くんとは2つしか違わないからね!」
「何、その苦し紛れな言い訳」
彼女は鼻を啜りながら、未だに顔を伏せたまま言う。
「言い訳じゃないし。本当のことだし」
「……じゃあ、りっちゃんにすればいいじゃん」
「は?」
「……嘘だよばーか。りっちゃんもあげないから」
そう言ってようやく顔を上げた。涙に濡れて化粧はぐちゃぐちゃで、鼻の頭は赤くなっている。
去年の12月、雅臣とのレストランをまた思い出す。あの時の私もこんな顔をしていたんだろうななんて。
「人のこと馬鹿呼ばわりしてないで顔洗った方がいいよ。商売道具なんだから」
「なっ……。本当、最低」
「帰ったらおばあちゃんに謝んなよ」
「……」
返事はしないけれど、何か考えているようだった。
「……こんなところにいた。母さんもおばあちゃんも心配してるよ」
背後からため息混じりの声が聞こえる。律くんだ。そう思って振り向くけれど、街灯の前にいる彼の顔は、逆光で見えなかった。
「きっかけはね。でも、綺麗事で続けられる職業じゃないよ。この前、奏ちゃんがモデルでもないくせにって私に言ったけど、職業には、その職業を体験した人にしかわからない苦労がある。その苦労を知ってるから頑張れるの。あなたはモデルで私は介護士。職種は違うけど、どちらも専門職だよ。知識とスキルが求められるの。その世界で努力して頑張っている人は、皆素敵でしょ。職業に上も下もないの」
「……昔は、雑誌に載るとおばあちゃん喜んでくれた。それなのに、一昨年くらいから雑誌見ても綺麗な子だねって言って私だってわからなくなった」
「……単純に見分けがつかなかっただけじゃない? 悪いけど、正直私も奏ちゃんくらいの若い子達皆同じに見えるもん」
「本当失礼! ……発言がおばさんだからね」
「まあ、奏ちゃんから見ればおばさんかもしれないけどさ……言っとくけど私、律くんとは2つしか違わないからね!」
「何、その苦し紛れな言い訳」
彼女は鼻を啜りながら、未だに顔を伏せたまま言う。
「言い訳じゃないし。本当のことだし」
「……じゃあ、りっちゃんにすればいいじゃん」
「は?」
「……嘘だよばーか。りっちゃんもあげないから」
そう言ってようやく顔を上げた。涙に濡れて化粧はぐちゃぐちゃで、鼻の頭は赤くなっている。
去年の12月、雅臣とのレストランをまた思い出す。あの時の私もこんな顔をしていたんだろうななんて。
「人のこと馬鹿呼ばわりしてないで顔洗った方がいいよ。商売道具なんだから」
「なっ……。本当、最低」
「帰ったらおばあちゃんに謝んなよ」
「……」
返事はしないけれど、何か考えているようだった。
「……こんなところにいた。母さんもおばあちゃんも心配してるよ」
背後からため息混じりの声が聞こえる。律くんだ。そう思って振り向くけれど、街灯の前にいる彼の顔は、逆光で見えなかった。
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