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ラポール形成
【36】
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「ほっといて!」
律くんの声を聞いて、奏ちゃんはその場から立ち上がり、律くんを避けるようにして斜めに傾斜を登っていった。
「奏ちゃん!」
せっかく少し話してくれた彼女を再び追いかけようとすれば、律くんに手首を掴まれ、足が止まった。
「いいです、これ以上は。昔から誰かと喧嘩すると、泣きながら出ていってほとぼりが冷めた頃に勝手に帰ってくるから」
「……でも」
「おばあちゃんの認知症が発症してから、奏がああいった態度をとるようになってきたことは薄々勘づいていました。まあ、俺達程近くにいるわけじゃないしと思って、俺もそのままにしておいたのが悪かったんで」
「そんな……律くんが謝るようなことじゃないよ」
「いや……。それにしても、奏にあそこまで言うなんて、ちょっと驚きました。もっと気の弱い人かと思っていたから」
「そりゃ……私もあまねくんの妹さんだし、律くんも含めてあんまり失礼な態度もとれないって思ってたけど……。でも、おばあちゃんもダリアさんも凄くいい人だから。いくら家族でもあんな態度とって欲しくないよ」
「だからって中々本人の家族目の前にしてあんなに怖い顔できないですよ」
そう言って律くんは、思い出したかのようにははっと笑う。
こんなに大きく笑う律くんは初めて見た。笑顔はあまねくんに少し似ている。
「え!? そんなに怖い顔してた?」
「してました。口調も怒鳴らないように我慢してる様子でしたしね。……変な人」
そう言って彼は、柔らかく笑う。
奏ちゃんを追いかけようと足を踏み出したことで、律くんとは立ち位置が逆になり、今では街灯に照らされた彼の優しい顔がはっきりと映る。
「変って……」
「ただ綺麗なだけの人かと思っていたけど、周があなたを好きになった理由が少しだけわかった気がします」
「え?」
「周やめて俺にしない?」
「は!?」
突然彼がそんなことを言うから、驚いて大きな声を出してしまう。
「奏も俺にすればって言ってたし。奏以外の家族はあなたのことを歓迎してるし、周と結婚するより、スムーズかもしれないですよ? ……まあ、周は納得しないかもだけど」
「もう、律くん……。そんな冗談笑えないよ。そろそろあまねくんも帰ってくるからさ、私達も戻ろう?」
きっと彼は、この場を和ませようとそんな冗談を言ってみせただけだ。だって、弟の彼女を口説くだなんて、そんな馬鹿な話があるわけがない。
笑いながら、彼に背を向ければ再び手首を掴まれ、ぐっと引かれる。
反動で体がよろけ、腰の辺りを彼の腕に支えられた。
「冗談じゃないって言ったら? 俺と結婚したら、俺は長男だしこの家の資産はゆくゆくほとんど俺のものですよ? 好きなだけおばあちゃんにも会えるし」
彼が身を屈めるから、その綺麗な顔がぐっと近付いて、あまねくんよりも縦幅の狭い鋭い瞳が私の視線を捕らえた。
律くんの声を聞いて、奏ちゃんはその場から立ち上がり、律くんを避けるようにして斜めに傾斜を登っていった。
「奏ちゃん!」
せっかく少し話してくれた彼女を再び追いかけようとすれば、律くんに手首を掴まれ、足が止まった。
「いいです、これ以上は。昔から誰かと喧嘩すると、泣きながら出ていってほとぼりが冷めた頃に勝手に帰ってくるから」
「……でも」
「おばあちゃんの認知症が発症してから、奏がああいった態度をとるようになってきたことは薄々勘づいていました。まあ、俺達程近くにいるわけじゃないしと思って、俺もそのままにしておいたのが悪かったんで」
「そんな……律くんが謝るようなことじゃないよ」
「いや……。それにしても、奏にあそこまで言うなんて、ちょっと驚きました。もっと気の弱い人かと思っていたから」
「そりゃ……私もあまねくんの妹さんだし、律くんも含めてあんまり失礼な態度もとれないって思ってたけど……。でも、おばあちゃんもダリアさんも凄くいい人だから。いくら家族でもあんな態度とって欲しくないよ」
「だからって中々本人の家族目の前にしてあんなに怖い顔できないですよ」
そう言って律くんは、思い出したかのようにははっと笑う。
こんなに大きく笑う律くんは初めて見た。笑顔はあまねくんに少し似ている。
「え!? そんなに怖い顔してた?」
「してました。口調も怒鳴らないように我慢してる様子でしたしね。……変な人」
そう言って彼は、柔らかく笑う。
奏ちゃんを追いかけようと足を踏み出したことで、律くんとは立ち位置が逆になり、今では街灯に照らされた彼の優しい顔がはっきりと映る。
「変って……」
「ただ綺麗なだけの人かと思っていたけど、周があなたを好きになった理由が少しだけわかった気がします」
「え?」
「周やめて俺にしない?」
「は!?」
突然彼がそんなことを言うから、驚いて大きな声を出してしまう。
「奏も俺にすればって言ってたし。奏以外の家族はあなたのことを歓迎してるし、周と結婚するより、スムーズかもしれないですよ? ……まあ、周は納得しないかもだけど」
「もう、律くん……。そんな冗談笑えないよ。そろそろあまねくんも帰ってくるからさ、私達も戻ろう?」
きっと彼は、この場を和ませようとそんな冗談を言ってみせただけだ。だって、弟の彼女を口説くだなんて、そんな馬鹿な話があるわけがない。
笑いながら、彼に背を向ければ再び手首を掴まれ、ぐっと引かれる。
反動で体がよろけ、腰の辺りを彼の腕に支えられた。
「冗談じゃないって言ったら? 俺と結婚したら、俺は長男だしこの家の資産はゆくゆくほとんど俺のものですよ? 好きなだけおばあちゃんにも会えるし」
彼が身を屈めるから、その綺麗な顔がぐっと近付いて、あまねくんよりも縦幅の狭い鋭い瞳が私の視線を捕らえた。
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