【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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再会

【9】

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 顔合わせ当日。朝からシャワーを浴びて、軽く支度をする。支度といっても、メイク道具も着替えも全てアパートに置き去りなので、あまねくんに借りた服に袖を通した。
 それから、アイブロウペンシルだけは、以前泊まった時からこの家に置いておいたため、眉毛を描いた。
 昼過ぎまであまねくんのマンションで過ごし、後は私のメイクと着替えのためアパートに寄ってもらうことにした。

「とりあえずはいいかな?」

「うん。じゃあ、一旦家に行ってもらっていい?」

「いいよ。もう出られる?」

「大丈夫」

 あまねくんも持ち物や服装を確認する。
 そんなにちゃんとした服装でなくてもいいと言ったのだけれど、いきなり会って同棲の話だって持ちかけるのに、そういうわけにはいかないと真面目なあまねくんは、スーツ姿でいる。
 既に見慣れてしまった彼のスーツ姿。それでもいつ見たって彼は素敵で、その濁りのない瞳に吸い込まれそうになる。

 快晴の空がもったいないが、差し込む日差しを遮るように、リビングのレースカーテンと上品な黒い遮光カーテンを閉めきった。
 真っ昼間だというのに、一気に辺りは暗くなり、小学生の頃の暗幕を思い出した。
 
 たまに道徳の授業でビデオテープを流していた。
 不意に、記憶が甦る女子だけに行われた月経の授業。男子はグラウンドでサッカーで、女子は視聴覚室で月経のビデオを見た。
 まだDVDやBlu-rayなんてない時代で、ざらついた画面に映る月経周期や月経の仕組みについてわからないながらもちゃんと見ていた気がする。

 先生に「生理って痛いの?」と聞くと、笑いながら「痛くないよ。痛いから血が出るのとは違うの」そう言った。
 初めての月経痛を味わった時には、思わず「先生の嘘つき!」と心の中で叫んだ。

 子宮内膜は剥がれるわ、毛細血管はちぎれるわ、子宮がぎゅぎゅう収縮するのだから、痛くないはずがない。そのことを男子にもちゃんと説明する機会を設けて欲しかったなとこの年齢になって思う。
 だから、未だに月経に対して無知で配慮のできない男性がゴロゴロいるのだ。
 結婚して子供ができて、一緒に喜べるのも、女性が毎月この苦労を経験しているからだと理解していただきたい。そう思うのだった。

 あまねくんと一緒にマンションを出ながら、彼と一緒にいる時に、月経を迎えてしまった日のことを思い出す。周期を計算してそろそろだなとは思っていたが、朝を迎える前に、腹痛と腰痛で目が覚めた。
 痛みで踞る私に、いつもは揺すっても叩いても起きない彼が何故か私に気付いて声をかけてくれた。
 彼が用意してくれた鎮痛剤と温かいはちみつレモン。温かいものがいいということだけは、漠然とわかっていたのだろう。

「どうしたら痛いのよくなる?」

 眉を下げて心配そうな表情を浮かべる彼。「温ためたらちょっとよくなるかも」そう言った私を寝たまま後ろから抱き締めて、ずっと手のひらを下腹部に当ててくれていた。
 体温の高い彼の手から熱が伝わってきて、子宮だけでなく、身体全体が温められたようだった。
 鎮痛剤の効果もあり、痛みも緩和されて眠気が襲った。私のアパートでも出来事だったのに、目が覚めると、食事が用意されていて、洗い物も洗濯物も全て終わっていた。

「今日は何もしなくていいよ。ゆっくり休んでて」

 そう言って天使みたいな笑顔で、軽く触れるだけのキスを額にくれた。彼は、そんな優しい人。雅臣を含めて、今まで付き合ってきた彼氏が、生理中にこんなに気遣ってくれたことなどなかった。

 そんな何ヵ月か前のことを思い出し、ふふっと笑ってしまう。

「何で笑ってるの? 面白いことあった?」

「ううん。あまねくんがずっと優しいなぁって思い出してた」

「えー? そんなに思い出す程のことした?」

「したよ。すごく嬉しい。いつも、一緒にいられるだけで嬉しいの」

 そう言って、彼の左手を握った。指の間を通ってぎゅうっと力を入れる。

「昼間から手繋ぐの嫌がるのに」

「今日はいいの。嬉しいから」

 人目も憚らず、繋いだ手を揺らして、彼の車まで歩く。くすぐったくて、温かい気持ちが心地よかった。
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