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再会
【19】
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どっしりと座り込んでいる父に、あまねくんは挨拶をする。
「どうぞ座ってください」
父はそう言うけれど、纏っている雰囲気は決して穏やかなものではない。
私とあまねくんは、父の正面に座り、姉達は少し離れた私の隣に座った。
母は、父の隣で立て膝を取り、人数分の茶碗をカチャカチャと触っている。
お母さん……ご飯どころじゃないかも。
母の姿を横目に、心の中でそう呟く。
「とりあえず経緯を聞いていいですか。こちらも急に警察沙汰になっただの、娘が顔を腫らせて帰ってくるだの全く理解ができていませんので」
父は、真剣な顔をしてそう言った。本来であれば、今日は食卓を囲みながら自然と結婚の話を切り出そうというところだった。それなのに、結婚どころではなく、こんな事件に巻き込まれた経緯について話すことになった。
私とあまねくんが代わる代わる話す間、父は静かに話を聞いていた。途中で私達の言葉を遮ることもせず、以前雅臣と付き合っていたことや、あまねくんが別れさせてくれたことも話した。
雅臣が脱税で捕まったことも、私が撮った浮気現場の写真のことで揉めていることも。そして、職場で待ち伏せされていたことと、今回勝手に合鍵を作って中にいたこと、殴られ、乱暴されかけたことも。
話が進むにつれて、どんどん父の顔が更に険しくなっていく。
母は、人数分の取り皿を配り、ちらし寿司を真ん中に置いたが、誰も手をつける気配はなかった。おそらくこの話が終わるまでは、食事をする雰囲気には至らないだろう。
「理由はわかった。その男が全て悪いこともわかった。でも、何で職場で待ち伏せされていた時に言わなかった? そうすれば少なくとも引っ越すなりなんなり対応はできただろう」
「私がいいって言ったの。こんなに大事になるなんて思ってなかったし……。それに、今日の顔合わせで、彼の家に一緒に住むことを許してもらおうかと思って」
「一緒に住む? 何を馬鹿なことを言ってる。そんな危険な目に遭ったのに、まだ2人でいる気か」
父は、目をつり上げて、私とあまねくんを交互に見た。想像していた展開と違った。
あまねくんと一緒にいれば、今回のように守ってもらえるし、安全だろうと思っていた。そのため、同棲に関しては納得してくれるだろうと信じて疑わなかった。
「あまねくんがいなかったら、私はもっと酷い目に遭ってたんだよ?」
「そもそも、君がその写真を記者に売ったりしなきゃ、彼もそこまで恨みをもつこともなかったんじゃないか?」
「お父さん! それは言いがかりだよ!」
とんでもないことを言う。写真を撮ったのは私だし、あの写真のおかげで婚約者も浮気相手も真相を知ることができたのだ。
そもそも浮気した雅臣が悪いのであって、証拠の写真を提示したあまねくんは、悪くはない。
「今回、その男を捕まえてくれたのには感謝します。ですが、娘が危険な目に遭ったのは事実だし、その男がいつまで拘留されているのかがわからない限り、君と一緒にいさせるのは、親としても許すわけにいきません」
「お父さん、何で!?」
「お前もお前だ。くだらない男にひっかかって、犯罪者と付き合っていただなんて情けない。今回のことだって裁判にでもなったらどうするつもりだ」
「それは、私もわかってる! だから裁判なんて起こさないよ。お父さんとお母さんも、それにお姉ちゃんだって、生徒さん達に知られたら困るんでしょ!」
父の言い方に、この上ない程腹が立つ。私だって、犯罪者だとわかっていて雅臣と付き合ったわけじゃない。
今は、その雅臣とだって決別して、あまねくんと新しい人生を歩んで行きたいと思っていたのだ。
雅臣の事件が明るみになれば、家族の職場に迷惑がかかることぐらい私だってわかっていた。
それでも、仮にも親なら娘が暴行を受けたのだから父の方から裁判を起こしてでも雅臣に罪を償わせるくらいのことを言ってもいいのではないか。
それを、最初から裁判は困ると言った口振りだ。そして、今後もそんな危険があるなら、あまねくんとの交際自体を認めないと言っているようにも聞こえた。
「どうぞ座ってください」
父はそう言うけれど、纏っている雰囲気は決して穏やかなものではない。
私とあまねくんは、父の正面に座り、姉達は少し離れた私の隣に座った。
母は、父の隣で立て膝を取り、人数分の茶碗をカチャカチャと触っている。
お母さん……ご飯どころじゃないかも。
母の姿を横目に、心の中でそう呟く。
「とりあえず経緯を聞いていいですか。こちらも急に警察沙汰になっただの、娘が顔を腫らせて帰ってくるだの全く理解ができていませんので」
父は、真剣な顔をしてそう言った。本来であれば、今日は食卓を囲みながら自然と結婚の話を切り出そうというところだった。それなのに、結婚どころではなく、こんな事件に巻き込まれた経緯について話すことになった。
私とあまねくんが代わる代わる話す間、父は静かに話を聞いていた。途中で私達の言葉を遮ることもせず、以前雅臣と付き合っていたことや、あまねくんが別れさせてくれたことも話した。
雅臣が脱税で捕まったことも、私が撮った浮気現場の写真のことで揉めていることも。そして、職場で待ち伏せされていたことと、今回勝手に合鍵を作って中にいたこと、殴られ、乱暴されかけたことも。
話が進むにつれて、どんどん父の顔が更に険しくなっていく。
母は、人数分の取り皿を配り、ちらし寿司を真ん中に置いたが、誰も手をつける気配はなかった。おそらくこの話が終わるまでは、食事をする雰囲気には至らないだろう。
「理由はわかった。その男が全て悪いこともわかった。でも、何で職場で待ち伏せされていた時に言わなかった? そうすれば少なくとも引っ越すなりなんなり対応はできただろう」
「私がいいって言ったの。こんなに大事になるなんて思ってなかったし……。それに、今日の顔合わせで、彼の家に一緒に住むことを許してもらおうかと思って」
「一緒に住む? 何を馬鹿なことを言ってる。そんな危険な目に遭ったのに、まだ2人でいる気か」
父は、目をつり上げて、私とあまねくんを交互に見た。想像していた展開と違った。
あまねくんと一緒にいれば、今回のように守ってもらえるし、安全だろうと思っていた。そのため、同棲に関しては納得してくれるだろうと信じて疑わなかった。
「あまねくんがいなかったら、私はもっと酷い目に遭ってたんだよ?」
「そもそも、君がその写真を記者に売ったりしなきゃ、彼もそこまで恨みをもつこともなかったんじゃないか?」
「お父さん! それは言いがかりだよ!」
とんでもないことを言う。写真を撮ったのは私だし、あの写真のおかげで婚約者も浮気相手も真相を知ることができたのだ。
そもそも浮気した雅臣が悪いのであって、証拠の写真を提示したあまねくんは、悪くはない。
「今回、その男を捕まえてくれたのには感謝します。ですが、娘が危険な目に遭ったのは事実だし、その男がいつまで拘留されているのかがわからない限り、君と一緒にいさせるのは、親としても許すわけにいきません」
「お父さん、何で!?」
「お前もお前だ。くだらない男にひっかかって、犯罪者と付き合っていただなんて情けない。今回のことだって裁判にでもなったらどうするつもりだ」
「それは、私もわかってる! だから裁判なんて起こさないよ。お父さんとお母さんも、それにお姉ちゃんだって、生徒さん達に知られたら困るんでしょ!」
父の言い方に、この上ない程腹が立つ。私だって、犯罪者だとわかっていて雅臣と付き合ったわけじゃない。
今は、その雅臣とだって決別して、あまねくんと新しい人生を歩んで行きたいと思っていたのだ。
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それでも、仮にも親なら娘が暴行を受けたのだから父の方から裁判を起こしてでも雅臣に罪を償わせるくらいのことを言ってもいいのではないか。
それを、最初から裁判は困ると言った口振りだ。そして、今後もそんな危険があるなら、あまねくんとの交際自体を認めないと言っているようにも聞こえた。
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