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再会
【30】
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こんな顔をさせてしまったと、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
確かに配慮が足りなかった。雅臣が勾留中ということで安心している部分があったのも確かだ。
「……ごめん」
「……もういいから。支度するなら、すぐして。待ってるから」
彼は、私の傍から離れてそう言った。本来なら、支度を終えてあまねくんの帰りを待っているくらいじゃないといけなかったのに。
こんなあまねくんを見るのは初めてで、胸がチクチクと痛んだ。これ以上迷惑をかけないようにと、急いで支度をする。
シャワーを浴びている時間はなさそうなので、出しておいた洋服にそのまま着替え、メイクを始める。
スマホの画面を見ながら操作している彼は、律くんとでも連絡をとっているのだろうか。
黙ったままの彼に緊張しながら、少しでも早く終わらせようとピッチを上げた。
15分で支度を済ませ、あまねくんに声をかける。
「終わったよ。待たせてごめんね」
「もう終わったの? もっとかかると思ってた」
「あんまり待たせたら悪いから……。あの、本当にごめんね……ちゃんと気を付けるから」
「わかった。いいよ。でも、俺がどれだけまどかさんのこと大事に思ってるかわかって。あなたに何かあったら、俺生きていけない」
そう言って切なそうな表情を浮かべる。
そんな大袈裟な……なんて言葉が頭を過ったが、私だって今あまねくんを失ったら、絶望感でいっぱいになる。
きっと、私にとって辛いことは、彼にとっても辛いこと。
「うん。私も、あまねくんと新しい生活始めたいし……これからもっと楽しいこと2人でしたい」
「そうだね……。じゃあ、やっぱり一緒に住むならオートロックだね」
そう言って少し彼が笑ってくれたから、私も少しだけほっとした。
彼が呆れて離れてしまったら、私の生活は、何もかも意味がなくなる。そこまであまねくん中心の生活になってしまっていると気付く。
結婚したら、彼が一緒にいる空間が増えて、一緒にいることが当たり前になる。けれど、その当たり前は簡単には手に入らない。
だからこそ、弁護士さんに相談して、暮らしの安全を図ろうというのだ。自分の夢を自分で壊してどうする。
私が無防備でいたことで、あまねくんは本当に結婚する気があるのだろうかと疑問をもったかもしれない。
心配させるだけに足りず、不安まで煽ってしまったかもしれない。
大好きだった日向ぼっこを最後に楽しみたかっただけなのにな……。
思い通りにいかない展開に、段々と憂鬱になる。雅臣のことさえなければ、こんなことにはならなかったのに。
また雅臣のせいにしてみるけれど、こればかりは本当のことなので、仕方ない。
私とあまねくんは、守屋家に向かうことにした。
確かに配慮が足りなかった。雅臣が勾留中ということで安心している部分があったのも確かだ。
「……ごめん」
「……もういいから。支度するなら、すぐして。待ってるから」
彼は、私の傍から離れてそう言った。本来なら、支度を終えてあまねくんの帰りを待っているくらいじゃないといけなかったのに。
こんなあまねくんを見るのは初めてで、胸がチクチクと痛んだ。これ以上迷惑をかけないようにと、急いで支度をする。
シャワーを浴びている時間はなさそうなので、出しておいた洋服にそのまま着替え、メイクを始める。
スマホの画面を見ながら操作している彼は、律くんとでも連絡をとっているのだろうか。
黙ったままの彼に緊張しながら、少しでも早く終わらせようとピッチを上げた。
15分で支度を済ませ、あまねくんに声をかける。
「終わったよ。待たせてごめんね」
「もう終わったの? もっとかかると思ってた」
「あんまり待たせたら悪いから……。あの、本当にごめんね……ちゃんと気を付けるから」
「わかった。いいよ。でも、俺がどれだけまどかさんのこと大事に思ってるかわかって。あなたに何かあったら、俺生きていけない」
そう言って切なそうな表情を浮かべる。
そんな大袈裟な……なんて言葉が頭を過ったが、私だって今あまねくんを失ったら、絶望感でいっぱいになる。
きっと、私にとって辛いことは、彼にとっても辛いこと。
「うん。私も、あまねくんと新しい生活始めたいし……これからもっと楽しいこと2人でしたい」
「そうだね……。じゃあ、やっぱり一緒に住むならオートロックだね」
そう言って少し彼が笑ってくれたから、私も少しだけほっとした。
彼が呆れて離れてしまったら、私の生活は、何もかも意味がなくなる。そこまであまねくん中心の生活になってしまっていると気付く。
結婚したら、彼が一緒にいる空間が増えて、一緒にいることが当たり前になる。けれど、その当たり前は簡単には手に入らない。
だからこそ、弁護士さんに相談して、暮らしの安全を図ろうというのだ。自分の夢を自分で壊してどうする。
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思い通りにいかない展開に、段々と憂鬱になる。雅臣のことさえなければ、こんなことにはならなかったのに。
また雅臣のせいにしてみるけれど、こればかりは本当のことなので、仕方ない。
私とあまねくんは、守屋家に向かうことにした。
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