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再会
【32】
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「あの……もちろん、自分のことも心配なんですけど……あまねくんは大丈夫なんでしょうか?」
両手を組んでぎゅっと握る。私の父が言ったように、あまねくんの職場は知られてしまっている。引っ越した私のアパートを見て、私に近付けなくなったら、あまねくんの方に行くかもしれない。
「それも十分可能性があります。周が職場で待ち伏せされたり、嫌がらせを受けるようなこともあるかもしれません」
「……じゃあ、どうしたら……」
「残念ながら、そこに予防策はありません。周は現段階で実際に被害にあったわけではないですし」
「そんな……」
「周、笠原さんにはあらかじめ言っておきなさい。もしかしたら前回みたいに事務所に直接電話をかけてくることもあるかもしれない」
父親があまねくんの方を向き、そう言うと、あまねくんは静かに頷いて「わかった」と一言答えた。
前回の脱税の時だって、発端はあまねくんの事務所から顧客が盗られて、俺に協力しろと電話がかかってきたのだった。
実際に会ったことはないのだけれど、笠原さんとはあまねくんが勤める税理士事務所の経営者兼税理士だ。
あまねくんの父親の事務所も、笠原さんが担当しており、毎年の確定申告もお願いしているとのことだった。
そのため、父親の収益は笠原さんには筒抜けだが、そこは個人情報だと言って息子のあまねくんにも教えてもらえなかったと肩をすくめていた。
そんな笠原さんは、前回の事件の時にも協力して下さり、職員の団結力もあって雅臣を捕まえることに成功した。もちろん、国税庁が動き、証拠を押さえられたからこそではあるのだが。
「でも、私の時みたいに待ち伏せさせて、襲われでもしたら大変です……」
私が自宅で捕まり、組敷かれたように、急に襲われでもしたら怪我をするかもしれない。
「そこは大丈夫じゃないかな」
発言権を父親に委ねていた律くんは、ふっと微笑んでそう言った。
「え?」
「周、強いよ。素人相手ならまず周に怪我させるとか無理ですから」
律くんは、おかしそうにふふっと笑う。
「そうなの? だから、家でも?」
そういえば、アパートで雅臣が伸びていた。何の音もせず、数十秒で。あまねくんは何者なんだろうか。
「そんな顔しないでよ、まどかさん。別に特別なことしてないよ。学生時代に合気道をやってたんだ」
「合気道? ……聞いたことはあるけど……」
空手や柔道と違ってあまり想像ができなかった。本当に言葉を聞いたことがあるくらい。
「簡単に入れば護身術かな。投げ技が多いから、殴ったり蹴ったりはしない。相手に怪我をさせないのが合気道。って言っても、未熟だと大怪我させるし、自分もするけどね」
あまねくんは、困ったように眉を下げて笑う。笑顔が天使のようなあまねくんが、そんな物騒な技をいくつも持っているだなんて考えられなかった。
「昔は、身代金目的で変な大人が近付いてきたりしたんです。だから、幼い頃から武道を習わされてきました」
「じゃあ……律くんと奏ちゃんも?」
「俺は、極真空手。奏も合気道。最初に始めたのは俺だったんですけど、周も奏も殴るのは嫌って言って合気道に。奏はもともとモデルを目指していたから見えるところに傷が残るのも嫌だって言ってましたしね」
妙に納得してしまった。性格の差が出ているような気がした。律くんだって普通にしている分には、空手をやっているようには見えないのに。
両手を組んでぎゅっと握る。私の父が言ったように、あまねくんの職場は知られてしまっている。引っ越した私のアパートを見て、私に近付けなくなったら、あまねくんの方に行くかもしれない。
「それも十分可能性があります。周が職場で待ち伏せされたり、嫌がらせを受けるようなこともあるかもしれません」
「……じゃあ、どうしたら……」
「残念ながら、そこに予防策はありません。周は現段階で実際に被害にあったわけではないですし」
「そんな……」
「周、笠原さんにはあらかじめ言っておきなさい。もしかしたら前回みたいに事務所に直接電話をかけてくることもあるかもしれない」
父親があまねくんの方を向き、そう言うと、あまねくんは静かに頷いて「わかった」と一言答えた。
前回の脱税の時だって、発端はあまねくんの事務所から顧客が盗られて、俺に協力しろと電話がかかってきたのだった。
実際に会ったことはないのだけれど、笠原さんとはあまねくんが勤める税理士事務所の経営者兼税理士だ。
あまねくんの父親の事務所も、笠原さんが担当しており、毎年の確定申告もお願いしているとのことだった。
そのため、父親の収益は笠原さんには筒抜けだが、そこは個人情報だと言って息子のあまねくんにも教えてもらえなかったと肩をすくめていた。
そんな笠原さんは、前回の事件の時にも協力して下さり、職員の団結力もあって雅臣を捕まえることに成功した。もちろん、国税庁が動き、証拠を押さえられたからこそではあるのだが。
「でも、私の時みたいに待ち伏せさせて、襲われでもしたら大変です……」
私が自宅で捕まり、組敷かれたように、急に襲われでもしたら怪我をするかもしれない。
「そこは大丈夫じゃないかな」
発言権を父親に委ねていた律くんは、ふっと微笑んでそう言った。
「え?」
「周、強いよ。素人相手ならまず周に怪我させるとか無理ですから」
律くんは、おかしそうにふふっと笑う。
「そうなの? だから、家でも?」
そういえば、アパートで雅臣が伸びていた。何の音もせず、数十秒で。あまねくんは何者なんだろうか。
「そんな顔しないでよ、まどかさん。別に特別なことしてないよ。学生時代に合気道をやってたんだ」
「合気道? ……聞いたことはあるけど……」
空手や柔道と違ってあまり想像ができなかった。本当に言葉を聞いたことがあるくらい。
「簡単に入れば護身術かな。投げ技が多いから、殴ったり蹴ったりはしない。相手に怪我をさせないのが合気道。って言っても、未熟だと大怪我させるし、自分もするけどね」
あまねくんは、困ったように眉を下げて笑う。笑顔が天使のようなあまねくんが、そんな物騒な技をいくつも持っているだなんて考えられなかった。
「昔は、身代金目的で変な大人が近付いてきたりしたんです。だから、幼い頃から武道を習わされてきました」
「じゃあ……律くんと奏ちゃんも?」
「俺は、極真空手。奏も合気道。最初に始めたのは俺だったんですけど、周も奏も殴るのは嫌って言って合気道に。奏はもともとモデルを目指していたから見えるところに傷が残るのも嫌だって言ってましたしね」
妙に納得してしまった。性格の差が出ているような気がした。律くんだって普通にしている分には、空手をやっているようには見えないのに。
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