【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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前進

【4】

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 あまねくんとは、あの日以来会っていない。あれから6日が経った。仕事をしていれば1週間会わないなんてこともあったけれど、毎日が休みなのに彼に会えないのは、途方もなく長い期間に感じる。

 1ヶ月仕事をせずにゆっくりしようと思っていたのに、1週間以上仕事に行かなくなったらもうこんな生活にも飽きてしまった。
 働いている時には暇すぎてやることがないなんて言ってみたいと思っていたけれど、実際に経験してみると、何もしないでいることの方が苦痛だと感じる。

 しかし軟禁状態の私は、あまねくんと会うことも許されず、何の楽しみもなくなってしまった。
 鎖に繋がれているわけでもないし、外に出たら強制連行されるわけでもない。自分の意思で家から出ようと思えば出られるし、あまねくんに会うこともできる。
 それでも、家族に心配をかけているという自覚はあるのだ。今雅臣と遭遇すれば、最悪殺されてしまうかもしれない。そんな危険と隣り合わせな中、身勝手な行動をとれば両親の心労は計り知れないものとなるだろう。

 両親の仕事中にこっそりあまねくんを自宅に招き入れるにしても、彼の休みは両親と同じ土日休み。暦通りの休日なんてクソくらいだ。そうして私の鬱憤は積もりに積もって現在のような廃人状態に陥っていく。

 どうせ私は、こうしてベッドの上で1日が過ぎていくのを刻々と待つしかないのだ。
 あまねくんが頑張ってくれて、彼の家族が動いてくれて、私はそれを何もしないでただ待っている。無力だ。
 何が悪かったんだろう。どこから始まったんだろう。雅臣に出会っていなければこんなことには……いやいや、雅臣に出会っていなければあまねくんとも出会えなかった。
 あまねくんに出会った時点でとっとと別れればよかったのだろうか。だけど、それだととっくにあまねくんの目的は果たされて、そこから私達の関係は進展しなかったかもしれない。

 何が失敗だったのかな……。ただ平穏な日々を過ごしたかっただけなのに。

 うつ伏せの体勢もしんどくなり、ごろっと横向きに変える。スマホを手に取り、あまねくんとのサインを開く。
 彼とのメッセージのやり取りは、私が自宅謹慎になった話で終わっている。
 その前には、おばあちゃんが夜の内に自宅に帰って来られたことが書かれている。

 やはり原因は一過性の低血糖で、救急車が着くまで対処しないでいれば、そのまま昏睡状態に陥っていた可能性が高かったと医師から説明を受けたとのことだった。
 確信はなかったけれど、行動に起こしてみてよかった。今しかできないことは、今やらないと後悔しても戻れないから。

 やらずに後悔するよりも、やって後悔した方がいい。誰かがそう言っていた。
 その通りだと思うけれど、それができる時ばかりではない。他人のことに対してはいつも冷静でいられるのに、どうして自分のことになると客観的にみられないんだろう。

 私は、いつも失敗だらけだ。

〔あまねくん、会いた〕
 
 そこまで文字を打ち込んだ時、スマホの画面中央で円がぐるぐると回り、シャットダウンの文字が浮かんだ。
 そのまま電源が落ち、画面に写った自分の顔は、酷く疲れているようでやはり廃人のようだった。
 こんな文章を打っている時に電源が落ちるなんて、不吉な予感しかしない。私は、使い物にならないスマホを握りしめたまま、意識を手放した。
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