171 / 289
前進
【9】
しおりを挟む
「38.4℃……何が原因かしらね」
「んー……」
「ご飯も食べずにお風呂も入らずに一歩も家から出ないから免疫力が下がったのよ」
「……かもね」
いや、お風呂は入らない方が細菌が増えて寧ろ免疫力が上がるんじゃ……。
そんなことを考えてみるけれど、今は正常な判断ができる状態ではない。
「頭は痛いの?」
「ううん……」
「喉は?」
「痛くない」
「風邪っぽい症状はないの? 咳とか鼻水とか」
「ない……。けど、目眩がする……」
「どんな? ぐるぐるする感じ? ふらふらする?」
「……ぐるぐる」
「そう、回転性の目眩ね。風邪じゃないかもしれないわね」
風邪じゃない? じゃあ、何なの……。こんなに怠くて、目眩もして熱もあるのに。
「まどか、動ける?」
「んー……」
母が、私の肩を支えて立たせようとする。すると、起こるぐるぐるとした目眩。あー、無理かも。そう思ったら、そのまま座り込んだ。
「だめっぽい……」
「どうしようかしらね……」
「とりあえず、病院に連れてった方がいいか」
「そうね。私がついていけばいいけど、立てないんじゃ連れて行きようもないし」
父と母は、私を挟んでしゃがみ込んだまま顔を見合わせている。まさかこんなことになるとは……。
「動かなきゃ大丈夫。……とりあえず暫くこのまま休むよ。……立てるようになったら病院行く」
どうせ朝の5時じゃ、救急外来しかやってないし。
「そう? じゃあ、お母さん今日は仕事休むから、後で病院行こう」
「休まなくてもいいよ……こうしてれば治るかもしれないし」
「治るかもしれないけど、治らないかもしれないでしょ。目眩が出てるから、神経系だと思うし脳の病気だったらどうするの」
「……それは困る」
奏ちゃんには散々おばさん呼ばわりされたけれど、大病をするにはまだ若い筈だ。脳の病気なんてまっぴらごめん。
脳腫瘍なんかができていた日には、悲劇のヒロインじゃ片付けられない。
「でしょ。とりあえず、少し休んでなさい」
母の鶴の一声で、私と父はそれに従った。父が私を抱え、実家に帰って来てから何度もお世話になっている居間に転がされた。
暫く食べていなかったから少しは軽くなったのか、父もだいぶ年を取ったと思うが私を抱えて居間に運ぶだけの体力はあったのだ。
あまり無理はしないでほしいと思うが、自分の意思では動けないのだから仕方がない。
居間の布団で寝かされて、暫くじっとしていると、何となく少し楽になった気はした。
起き上がると、ほんの少しの目眩はあるものの、立ち上がれない程ではなかった。
リビングまで歩いて行くと、既に父の姿はなく、テレビを見ていた母と目が合った。
「んー……」
「ご飯も食べずにお風呂も入らずに一歩も家から出ないから免疫力が下がったのよ」
「……かもね」
いや、お風呂は入らない方が細菌が増えて寧ろ免疫力が上がるんじゃ……。
そんなことを考えてみるけれど、今は正常な判断ができる状態ではない。
「頭は痛いの?」
「ううん……」
「喉は?」
「痛くない」
「風邪っぽい症状はないの? 咳とか鼻水とか」
「ない……。けど、目眩がする……」
「どんな? ぐるぐるする感じ? ふらふらする?」
「……ぐるぐる」
「そう、回転性の目眩ね。風邪じゃないかもしれないわね」
風邪じゃない? じゃあ、何なの……。こんなに怠くて、目眩もして熱もあるのに。
「まどか、動ける?」
「んー……」
母が、私の肩を支えて立たせようとする。すると、起こるぐるぐるとした目眩。あー、無理かも。そう思ったら、そのまま座り込んだ。
「だめっぽい……」
「どうしようかしらね……」
「とりあえず、病院に連れてった方がいいか」
「そうね。私がついていけばいいけど、立てないんじゃ連れて行きようもないし」
父と母は、私を挟んでしゃがみ込んだまま顔を見合わせている。まさかこんなことになるとは……。
「動かなきゃ大丈夫。……とりあえず暫くこのまま休むよ。……立てるようになったら病院行く」
どうせ朝の5時じゃ、救急外来しかやってないし。
「そう? じゃあ、お母さん今日は仕事休むから、後で病院行こう」
「休まなくてもいいよ……こうしてれば治るかもしれないし」
「治るかもしれないけど、治らないかもしれないでしょ。目眩が出てるから、神経系だと思うし脳の病気だったらどうするの」
「……それは困る」
奏ちゃんには散々おばさん呼ばわりされたけれど、大病をするにはまだ若い筈だ。脳の病気なんてまっぴらごめん。
脳腫瘍なんかができていた日には、悲劇のヒロインじゃ片付けられない。
「でしょ。とりあえず、少し休んでなさい」
母の鶴の一声で、私と父はそれに従った。父が私を抱え、実家に帰って来てから何度もお世話になっている居間に転がされた。
暫く食べていなかったから少しは軽くなったのか、父もだいぶ年を取ったと思うが私を抱えて居間に運ぶだけの体力はあったのだ。
あまり無理はしないでほしいと思うが、自分の意思では動けないのだから仕方がない。
居間の布団で寝かされて、暫くじっとしていると、何となく少し楽になった気はした。
起き上がると、ほんの少しの目眩はあるものの、立ち上がれない程ではなかった。
リビングまで歩いて行くと、既に父の姿はなく、テレビを見ていた母と目が合った。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる