184 / 289
前進
【22】
しおりを挟む
しゃくりあげる私を、何も言わずに抱き締めてくれている。彼の服が私の涙を吸い込んでいく。
それでも涙は止まらなくて、彼の優しさに寄りかかる。あまねくんに全てを委ねることがこんなに楽なことだったなんて。
こんなことなら、父の反対を押しきってでも会いに行けばよかったかもしれない。そうは思うけれど、両親の心配を蔑ろにできないからこんなにも我慢してしまったのだと思考は振り出しに戻る。
暫くそうしていると、徐々に落ち着き、体中の水分がなくなったかのようにピタリと涙が止まった。
すっきりしたのだろうか。体がもう泣かなくていいと判断できるほど、安心できたのだろうか。
どちらでもいいけれど、泣き止んだ顔であまねくんを見上げれば、「鼻の頭まで真っ赤になっちゃったね」と言って笑いながら人差し指で、私の鼻をつついた。
その行動に自然と笑みは溢れ、幸せな気持ちになる。
再びあまねくんの胸に頭を預けると、「まどかさん、体調悪いのやっぱり風邪だったの? 薬飲んでちょっとよくなった?」と私に尋ねると同時に、カサッと紙が擦れるような音がした。
直ぐ様、それが薬袋だと気付くが、私が振り返るよりも先に、彼はそれを手に取っていた。
2回目の薬を飲んだ後、ガラステーブルの収納スペースに置いておいたままだった。丁度彼の目に入ってしまったのだろう。
「え……心療内科って……」
薬剤名の上に、心療内科と印字されていた。わざわざそんなこと書かなくてもいいのに……。
あまねくんに見られてしまったことで、自分から言い出せなかった後ろめたさが込み上げる。
「風邪じゃないの?」
「うん……。ストレスからくる自律神経の病気なんだって」
「ストレス? そっか……。そうだよね。考えることも不安もいっぱいあるもんね。そんな時に、傍にいてあげられなかったんだね、俺……」
「病気になる程、あまねくんに会いたかったみたい」
「傍にいてあげられなくてごめんね」
「ううん。だって、それはお父さんが言ったことだから、あまねくんは悪くないよ」
「でも……。俺がやだ。まどかさんが辛い時、1番近くにいるのは俺でありたい」
あまねくんは、ぎゅうっと強く私を抱き締めた。こんなに力強くあまねくんの腕を感じたのは久しぶりだった。
クリスマスイブの夜を思い出す。
私はあんなにも心療内科にかかるのは嫌だとだだをこねたのに、あまねくんは静かに、すんなりと私を受け入れてくれた。
「そんなふうに言ってくれたら、嫌な気持ちも吹っ飛ぶ」
「ねぇ、まどかさん。もしも今回みたいに具合が悪くなる程辛くなったら、すぐに連絡して。まどかさんのお父さんに追い返されても、怒鳴られても、諦めずに会いにくるから。1人で抱え込まないで」
「うん……。ありがとう」
「ねぇ、ちゃんとわかってる? まどかさん、すぐに強がって我慢するから、ちゃんと言ってくれないと、俺今回みたいに見逃しちゃう……。自分の不甲斐なさに腹立つ……」
「そんなこと言わないで。私だって、最初は寝てばっかりいるからやる気が起きないんだと思ってたの。まさか自分が心の病気になるなんて思ってなかったの。だから、自分でも気付かなかった……」
それなのに、あまねくんが自分を責めるのは間違っている。私自身が気付かなかったことを、彼が気付けるはずがないのだから。
それでも涙は止まらなくて、彼の優しさに寄りかかる。あまねくんに全てを委ねることがこんなに楽なことだったなんて。
こんなことなら、父の反対を押しきってでも会いに行けばよかったかもしれない。そうは思うけれど、両親の心配を蔑ろにできないからこんなにも我慢してしまったのだと思考は振り出しに戻る。
暫くそうしていると、徐々に落ち着き、体中の水分がなくなったかのようにピタリと涙が止まった。
すっきりしたのだろうか。体がもう泣かなくていいと判断できるほど、安心できたのだろうか。
どちらでもいいけれど、泣き止んだ顔であまねくんを見上げれば、「鼻の頭まで真っ赤になっちゃったね」と言って笑いながら人差し指で、私の鼻をつついた。
その行動に自然と笑みは溢れ、幸せな気持ちになる。
再びあまねくんの胸に頭を預けると、「まどかさん、体調悪いのやっぱり風邪だったの? 薬飲んでちょっとよくなった?」と私に尋ねると同時に、カサッと紙が擦れるような音がした。
直ぐ様、それが薬袋だと気付くが、私が振り返るよりも先に、彼はそれを手に取っていた。
2回目の薬を飲んだ後、ガラステーブルの収納スペースに置いておいたままだった。丁度彼の目に入ってしまったのだろう。
「え……心療内科って……」
薬剤名の上に、心療内科と印字されていた。わざわざそんなこと書かなくてもいいのに……。
あまねくんに見られてしまったことで、自分から言い出せなかった後ろめたさが込み上げる。
「風邪じゃないの?」
「うん……。ストレスからくる自律神経の病気なんだって」
「ストレス? そっか……。そうだよね。考えることも不安もいっぱいあるもんね。そんな時に、傍にいてあげられなかったんだね、俺……」
「病気になる程、あまねくんに会いたかったみたい」
「傍にいてあげられなくてごめんね」
「ううん。だって、それはお父さんが言ったことだから、あまねくんは悪くないよ」
「でも……。俺がやだ。まどかさんが辛い時、1番近くにいるのは俺でありたい」
あまねくんは、ぎゅうっと強く私を抱き締めた。こんなに力強くあまねくんの腕を感じたのは久しぶりだった。
クリスマスイブの夜を思い出す。
私はあんなにも心療内科にかかるのは嫌だとだだをこねたのに、あまねくんは静かに、すんなりと私を受け入れてくれた。
「そんなふうに言ってくれたら、嫌な気持ちも吹っ飛ぶ」
「ねぇ、まどかさん。もしも今回みたいに具合が悪くなる程辛くなったら、すぐに連絡して。まどかさんのお父さんに追い返されても、怒鳴られても、諦めずに会いにくるから。1人で抱え込まないで」
「うん……。ありがとう」
「ねぇ、ちゃんとわかってる? まどかさん、すぐに強がって我慢するから、ちゃんと言ってくれないと、俺今回みたいに見逃しちゃう……。自分の不甲斐なさに腹立つ……」
「そんなこと言わないで。私だって、最初は寝てばっかりいるからやる気が起きないんだと思ってたの。まさか自分が心の病気になるなんて思ってなかったの。だから、自分でも気付かなかった……」
それなのに、あまねくんが自分を責めるのは間違っている。私自身が気付かなかったことを、彼が気付けるはずがないのだから。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる