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前進
【32】
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「とにかく、奏ちゃんだって表紙を飾るような子なんだから、変装もなしにこの辺うろうろしたらダメだよ」
「……別にもういいんだよ。今はもう、見られたってそんなに騒がれないし」
彼女は、あんなに苦い顔をしていたのに、急にうつむいた。
「どういうこと?」
「私、表紙は今月で最後なの」
「え!? 卒業するってこと?」
「ううん。選ばれなかった。事務所からも、読者からも」
「何で? 奏ちゃん、まだ人気者でしょ?」
「もう違うの! 本当は、年末くらいから危ないんじゃないかって言われてた。前に、あんたに言われたけど……19歳の若い子に変わるの。新しく事務所に入ってきた子で、もともと動画配信で人気があった子。だから、事務所も最初から期待しちゃって。3年間ずっと表紙は譲ってこなかったのに……」
あんなに気の強い奏ちゃんが、ぐっと下唇を噛み締めて、目に涙をいっぱい溜めていた。
「そう……。でも、表紙じゃなくなったからって仕事がなくなるわけじゃないでしょ?」
「減ってきてるの! 私の仕事だったはずのものが全部あの子にいっちゃった……。だから最近は仕事なくて、だからって向こうの街を出歩くのも嫌で、こっちに帰ってくることが多くなったの。おばあちゃんもいるし……」
「それでか……」
いつか私と口論になった時、あんたに何がわかんの! って怒ってたなぁと思い出す。モデルの世代交代を目の当たりにし、それを私に指摘されたのが余程悔しかったのだろう。
「だから、惨めになる前にこっちに帰ってこようかと思ってる」
「モデル辞めるってこと?」
「うん……」
あんなにも気が強かった奏ちゃんが、なぜかしおらしくなってしまっている。
自信を喪失するって恐ろしい。
「でもさ、先輩からのイジメに耐えてようやく表紙を飾れるようになったんでしょ?」
「……何でそんなこと知ってるの?」
……しまった。律くんに聞いた話をさらっと本人に言ってしまった。
「……雑誌の特集かなんかで言ってなかった?」
「言ってない。あっくんに聞いたの?」
「いや……」
「じゃあ、りっちゃんしかいないじゃん!」
「まあ……そうね。でも、律くんだって奏ちゃんのことが心配で言ったんだからさ」
「心配だとなんでわざわざあんたに言うわけ?」
面白くなさそうに唇を尖らせている。
「こんなふうに頑張ってるから、奏のことあまり嫌いにならないでっていうようなことを言ってたよ」
「私のこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。最初は生意気な小娘だって思ったけど。……でも、あまねくんとその先輩とのことがあって、年上の女が嫌いなのは教えてもらったしさ。仕事頑張る子は嫌いじゃないよ」
「でも、今仕事ないじゃん」
「それは私も同じじゃん。私、今無職だよ? 33歳無職」
「それはヤバい」
彼女は、少しだけ笑った。
「そんなに頑張って表紙を勝ち取ることができたんだから、まだ可能性はあるって」
「素人がわかったようなこと言わないでよ」
「私は、モデルでも何でもないし、素人だけど、読者側だもん」
「じゃあ、どうしろっていうわけ?」
「奏ちゃん、まだギャルでいたいの?」
「いたいよ! だって、好きな服着て、好きなメイクして雑誌に乗るのが夢だったんだもん」
「でも、モデルさんって自分が好きな格好をするんじゃなくて、ブランド側が自分達の服をよく見せるためにいるんだよね?」
「まあ……そうだけど」
彼女のこのプライベートでの格好を見れば、自分が好んでしていることはわかる。私だって24歳でテレビに出ていた時には派手目な格好をしていたし。
けれど、その内落ち着きたいなと思った時、お手本がわりに雑誌を手にとって雰囲気を変えようと試みたものだ。
奏ちゃんもそろそろギャルはやめて、方向転換してみたらどうかと思うのだ。
「……別にもういいんだよ。今はもう、見られたってそんなに騒がれないし」
彼女は、あんなに苦い顔をしていたのに、急にうつむいた。
「どういうこと?」
「私、表紙は今月で最後なの」
「え!? 卒業するってこと?」
「ううん。選ばれなかった。事務所からも、読者からも」
「何で? 奏ちゃん、まだ人気者でしょ?」
「もう違うの! 本当は、年末くらいから危ないんじゃないかって言われてた。前に、あんたに言われたけど……19歳の若い子に変わるの。新しく事務所に入ってきた子で、もともと動画配信で人気があった子。だから、事務所も最初から期待しちゃって。3年間ずっと表紙は譲ってこなかったのに……」
あんなに気の強い奏ちゃんが、ぐっと下唇を噛み締めて、目に涙をいっぱい溜めていた。
「そう……。でも、表紙じゃなくなったからって仕事がなくなるわけじゃないでしょ?」
「減ってきてるの! 私の仕事だったはずのものが全部あの子にいっちゃった……。だから最近は仕事なくて、だからって向こうの街を出歩くのも嫌で、こっちに帰ってくることが多くなったの。おばあちゃんもいるし……」
「それでか……」
いつか私と口論になった時、あんたに何がわかんの! って怒ってたなぁと思い出す。モデルの世代交代を目の当たりにし、それを私に指摘されたのが余程悔しかったのだろう。
「だから、惨めになる前にこっちに帰ってこようかと思ってる」
「モデル辞めるってこと?」
「うん……」
あんなにも気が強かった奏ちゃんが、なぜかしおらしくなってしまっている。
自信を喪失するって恐ろしい。
「でもさ、先輩からのイジメに耐えてようやく表紙を飾れるようになったんでしょ?」
「……何でそんなこと知ってるの?」
……しまった。律くんに聞いた話をさらっと本人に言ってしまった。
「……雑誌の特集かなんかで言ってなかった?」
「言ってない。あっくんに聞いたの?」
「いや……」
「じゃあ、りっちゃんしかいないじゃん!」
「まあ……そうね。でも、律くんだって奏ちゃんのことが心配で言ったんだからさ」
「心配だとなんでわざわざあんたに言うわけ?」
面白くなさそうに唇を尖らせている。
「こんなふうに頑張ってるから、奏のことあまり嫌いにならないでっていうようなことを言ってたよ」
「私のこと嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ。最初は生意気な小娘だって思ったけど。……でも、あまねくんとその先輩とのことがあって、年上の女が嫌いなのは教えてもらったしさ。仕事頑張る子は嫌いじゃないよ」
「でも、今仕事ないじゃん」
「それは私も同じじゃん。私、今無職だよ? 33歳無職」
「それはヤバい」
彼女は、少しだけ笑った。
「そんなに頑張って表紙を勝ち取ることができたんだから、まだ可能性はあるって」
「素人がわかったようなこと言わないでよ」
「私は、モデルでも何でもないし、素人だけど、読者側だもん」
「じゃあ、どうしろっていうわけ?」
「奏ちゃん、まだギャルでいたいの?」
「いたいよ! だって、好きな服着て、好きなメイクして雑誌に乗るのが夢だったんだもん」
「でも、モデルさんって自分が好きな格好をするんじゃなくて、ブランド側が自分達の服をよく見せるためにいるんだよね?」
「まあ……そうだけど」
彼女のこのプライベートでの格好を見れば、自分が好んでしていることはわかる。私だって24歳でテレビに出ていた時には派手目な格好をしていたし。
けれど、その内落ち着きたいなと思った時、お手本がわりに雑誌を手にとって雰囲気を変えようと試みたものだ。
奏ちゃんもそろそろギャルはやめて、方向転換してみたらどうかと思うのだ。
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