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婚姻届
【15】
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翌日、守屋家の皆さんに挨拶をして、とりあえず1週間帰宅することにした。
あまねくんに家まで送ってもらい、最初の3日は家族団欒の時間を作るから、4日目には泊まりにきてとお願いした。
快諾してくれ、私は久しぶりの実家に1人大きく息を吸い込んだ。
3日間家族団欒のなんて言い訳をし、放っておいてもらったのは、他でもない日記帳を読むためだ。
どれ程の量があるのか想像がつかないため、とりあえず3日間の有余をもらったということだ。
でなければ、こんな平日の家族が仕事中である真っ昼間に帰ってきたりなどしない。
あまねくんには、お父さんがいると荷物の整理もできないからと納得してもらった。
私は、久しぶりに自分の車に乗った。もしかしたらもうエンジンがかからないかもしれないと思ったが、何の問題もなく懐かしい音をたてた。
どうやら父か母かどちらかが、定期的にエンジンを入れてくれていたらしい。
今となってはナンバーを見られて恐怖する心配もない。
私は、1人車を走らせて、磯部さんがいる警察署へ向かった。
約束していた時刻には早すぎたのだが、すぐに対応をしてくれた。
「先に言っておきます。結城雅臣は犯罪者です。どんなことが書かれていても、あなたや守屋さんにしたことが覆ることはありません」
「あの……そんな内容なんですか?」
「いえ……、守屋さんからたくさん愛情をもらっている一さんなら大丈夫かもしれませんね」
意味深な言葉をもって、日記帳を渡された。
付き合いはじめてからのものだと聞いていたから、もっと膨大な量の日記帳を想像していたのだけれど、たった一冊のノートで収まってしまっていた。
しかし、ノート自体は厚目で、100ページ程はあるだろうか。
西暦が表紙に書かれているようないわゆる日記帳と呼ばれるものではない。簡単にパラパラと開いてみると、自らの字で西暦と日付が書かれていて、1日1ページに収まるようになっていた。
毎日書いているわけではなさそうだ。そのためこの量なのだろう。
「ありがとうございます。早速読んでみます」
磯部さんにお礼を言い、自宅に戻った。どんなことが書かれていても、受け止めよう。これが現実だ。
ある程度のことを想定して、ゆっくりと表紙を開いた。
数行読んで手を止める。これは本当に雅臣が書いたものなのだろうか。
「なんで……こんなこと……」
私は、わずか1ページで既に動揺している。
雅臣は、自分勝手で自信家で、自慢話が得意な人間だったはず。
クリスマスも記念日も音沙汰なしで、月に2回会ってセックスするだけのセフレみたいな存在。
結婚だって結局匂わせただけで、本当はそんなこと思ってなかったくせに。
懐かしい思い出ばかりだった。あの時の行動の裏に、こんな想いが隠されていただなんて知らなかった。
読み進める度に、涙が溢れた。
今更、こんな想いなんて知りたくなかった。
なのに、手は止まらなくて、次々とページを捲る。
2014年、2015年、2016年、2017年、そして付き合って5年目の2018年……。
どうして何も相談してくれなかったのだろう。
どうして全部自分で決めて、もっとちゃんと私の気持ちを聞いてくれなかったのだろう。
こんなに愛されていただなんて知らなかった。
誕生日プレゼントを貰えなかった理由も、クリスマスがなかった理由も、プロポーズしてくれなかった理由も。
あの時言ってくれていれば、きっともっと違った。
花井麻友のことも、議員の娘さんのことも。
勝手に諦めて、勝手に悪者になった馬鹿な人。
頭が良くて、仕事ができて、後輩から慕われているくせに不器用で臆病者の馬鹿な人。
なんて間抜けで真っ直ぐな人なんだろう。
もっと会いたいって言ってくれたなら私からだって会いに行ったのに。
助けてって言ってくれたら、もっと協力したのに。
あまねくんに家まで送ってもらい、最初の3日は家族団欒の時間を作るから、4日目には泊まりにきてとお願いした。
快諾してくれ、私は久しぶりの実家に1人大きく息を吸い込んだ。
3日間家族団欒のなんて言い訳をし、放っておいてもらったのは、他でもない日記帳を読むためだ。
どれ程の量があるのか想像がつかないため、とりあえず3日間の有余をもらったということだ。
でなければ、こんな平日の家族が仕事中である真っ昼間に帰ってきたりなどしない。
あまねくんには、お父さんがいると荷物の整理もできないからと納得してもらった。
私は、久しぶりに自分の車に乗った。もしかしたらもうエンジンがかからないかもしれないと思ったが、何の問題もなく懐かしい音をたてた。
どうやら父か母かどちらかが、定期的にエンジンを入れてくれていたらしい。
今となってはナンバーを見られて恐怖する心配もない。
私は、1人車を走らせて、磯部さんがいる警察署へ向かった。
約束していた時刻には早すぎたのだが、すぐに対応をしてくれた。
「先に言っておきます。結城雅臣は犯罪者です。どんなことが書かれていても、あなたや守屋さんにしたことが覆ることはありません」
「あの……そんな内容なんですか?」
「いえ……、守屋さんからたくさん愛情をもらっている一さんなら大丈夫かもしれませんね」
意味深な言葉をもって、日記帳を渡された。
付き合いはじめてからのものだと聞いていたから、もっと膨大な量の日記帳を想像していたのだけれど、たった一冊のノートで収まってしまっていた。
しかし、ノート自体は厚目で、100ページ程はあるだろうか。
西暦が表紙に書かれているようないわゆる日記帳と呼ばれるものではない。簡単にパラパラと開いてみると、自らの字で西暦と日付が書かれていて、1日1ページに収まるようになっていた。
毎日書いているわけではなさそうだ。そのためこの量なのだろう。
「ありがとうございます。早速読んでみます」
磯部さんにお礼を言い、自宅に戻った。どんなことが書かれていても、受け止めよう。これが現実だ。
ある程度のことを想定して、ゆっくりと表紙を開いた。
数行読んで手を止める。これは本当に雅臣が書いたものなのだろうか。
「なんで……こんなこと……」
私は、わずか1ページで既に動揺している。
雅臣は、自分勝手で自信家で、自慢話が得意な人間だったはず。
クリスマスも記念日も音沙汰なしで、月に2回会ってセックスするだけのセフレみたいな存在。
結婚だって結局匂わせただけで、本当はそんなこと思ってなかったくせに。
懐かしい思い出ばかりだった。あの時の行動の裏に、こんな想いが隠されていただなんて知らなかった。
読み進める度に、涙が溢れた。
今更、こんな想いなんて知りたくなかった。
なのに、手は止まらなくて、次々とページを捲る。
2014年、2015年、2016年、2017年、そして付き合って5年目の2018年……。
どうして何も相談してくれなかったのだろう。
どうして全部自分で決めて、もっとちゃんと私の気持ちを聞いてくれなかったのだろう。
こんなに愛されていただなんて知らなかった。
誕生日プレゼントを貰えなかった理由も、クリスマスがなかった理由も、プロポーズしてくれなかった理由も。
あの時言ってくれていれば、きっともっと違った。
花井麻友のことも、議員の娘さんのことも。
勝手に諦めて、勝手に悪者になった馬鹿な人。
頭が良くて、仕事ができて、後輩から慕われているくせに不器用で臆病者の馬鹿な人。
なんて間抜けで真っ直ぐな人なんだろう。
もっと会いたいって言ってくれたなら私からだって会いに行ったのに。
助けてって言ってくれたら、もっと協力したのに。
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