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婚姻届
【19】
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手紙を入れた封筒を糊付けし、それを持って磯部さんのもとへ向かった。
雅臣の日記を読んでから2日経ったら、少し冷静さを取り戻した。
磯部さんも忙しいらしく、先方が提示した時間に伺うことにした。
警察署内の一室に通され、磯部さんと2人きり。私達のやりとりを見ている者はいない。
「一さん、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「いえ、私もお忙しいところ申し訳ないです。これ、ありがとうございました」
まず雅臣の日記帳を渡した。磯部さんはそれを受けとると、表紙をじっと見つめて「もういいんですか?」と尋ねた。
「はい。全て読ませていただきました」
「そうですか。やはり守屋さんには……」
「磯部さんがおっしゃる通り、見せない方がよさそうですね」
「そう思います」
「結城さんの気持ちは十分伝わりました。それで、もし彼が目を覚ましたらこの手紙を渡していただけないでしょうか」
私は、手紙を彼に手渡した。
「……彼に手紙を?」
「はい」
「結城雅臣は犯罪者です。申し訳ないのですが、内容を確認させていただいてからになります。それでもよろしいですか」
「あ……、はい。そうですよね。すみません、糊付けしちゃいました」
「封を切らせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまいません」
「それでは、内容に問題ないことを確認し、彼が目を覚ましたら渡しておきます」
「お願いします」
頭を下げ、磯部さんの顔を見る。彼は、1度目を伏せ、「結城雅臣は予定通り県外の管轄になる予定です。今後あなた達に危険が及ばないとも言いきれませんので」と言った。
「そうですか。少し、安心です」
「はい。一さんにも守屋さんにも危険が及んでしまい、申し訳ないと思っています」
「そのことはもういいです。判決が出て、どのくらいの刑がつくのかはわかりませんけど、どんな結果になっても受け入れるつもりです」
「私共も、証拠や証言を見直しているところですので、精一杯最後まで対応させていただきます」
「よろしくお願いします」
「……守屋さんのご様子はどうですか?」
「すっかり元に戻ったような気がしますけど……」
「それはよかったです。守屋さんが花井麻友を止めてくださったので、彼女も自身を傷付けずに済みました」
「日記を見るには、彼とはお付き合いされていなかったようですが……彼女は結城さんと結婚するつもりでいたんでしょうか」
「ええ。彼女は今年度から専門学生として生活するはずだったんです。結城雅臣に、専門学校を卒業してもまだ自分が独身だったらと言われたことで、卒業したら結婚できるものだと勝手に思い込んでいたようです」
「それは……」
「おそらく、元々何らかの精神疾患があったのでしょう。現在治療中ですので、どこまで回復するかはわかりませんが……」
「それを思うと彼女も気の毒です」
「ええ……。ですが、結城を刺したことには変わりありません。おそらく正常な判断ができる状態ではないので、罪に問われることはないかと思いますが……」
磯部さんは、なんとも複雑そうな表情を浮かべた。
雅臣の日記を読んでから2日経ったら、少し冷静さを取り戻した。
磯部さんも忙しいらしく、先方が提示した時間に伺うことにした。
警察署内の一室に通され、磯部さんと2人きり。私達のやりとりを見ている者はいない。
「一さん、わざわざお越しいただきありがとうございます」
「いえ、私もお忙しいところ申し訳ないです。これ、ありがとうございました」
まず雅臣の日記帳を渡した。磯部さんはそれを受けとると、表紙をじっと見つめて「もういいんですか?」と尋ねた。
「はい。全て読ませていただきました」
「そうですか。やはり守屋さんには……」
「磯部さんがおっしゃる通り、見せない方がよさそうですね」
「そう思います」
「結城さんの気持ちは十分伝わりました。それで、もし彼が目を覚ましたらこの手紙を渡していただけないでしょうか」
私は、手紙を彼に手渡した。
「……彼に手紙を?」
「はい」
「結城雅臣は犯罪者です。申し訳ないのですが、内容を確認させていただいてからになります。それでもよろしいですか」
「あ……、はい。そうですよね。すみません、糊付けしちゃいました」
「封を切らせていただいてもよろしいでしょうか」
「かまいません」
「それでは、内容に問題ないことを確認し、彼が目を覚ましたら渡しておきます」
「お願いします」
頭を下げ、磯部さんの顔を見る。彼は、1度目を伏せ、「結城雅臣は予定通り県外の管轄になる予定です。今後あなた達に危険が及ばないとも言いきれませんので」と言った。
「そうですか。少し、安心です」
「はい。一さんにも守屋さんにも危険が及んでしまい、申し訳ないと思っています」
「そのことはもういいです。判決が出て、どのくらいの刑がつくのかはわかりませんけど、どんな結果になっても受け入れるつもりです」
「私共も、証拠や証言を見直しているところですので、精一杯最後まで対応させていただきます」
「よろしくお願いします」
「……守屋さんのご様子はどうですか?」
「すっかり元に戻ったような気がしますけど……」
「それはよかったです。守屋さんが花井麻友を止めてくださったので、彼女も自身を傷付けずに済みました」
「日記を見るには、彼とはお付き合いされていなかったようですが……彼女は結城さんと結婚するつもりでいたんでしょうか」
「ええ。彼女は今年度から専門学生として生活するはずだったんです。結城雅臣に、専門学校を卒業してもまだ自分が独身だったらと言われたことで、卒業したら結婚できるものだと勝手に思い込んでいたようです」
「それは……」
「おそらく、元々何らかの精神疾患があったのでしょう。現在治療中ですので、どこまで回復するかはわかりませんが……」
「それを思うと彼女も気の毒です」
「ええ……。ですが、結城を刺したことには変わりありません。おそらく正常な判断ができる状態ではないので、罪に問われることはないかと思いますが……」
磯部さんは、なんとも複雑そうな表情を浮かべた。
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