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婚姻届
【24】
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「俺が初めて結城雅臣を知ったのは、1年と少し前」
「1年!? ……ごめん」
驚いて思わず声を張ってしまった。中腰になり、周りの目が気になったため私は慌てて腰を下ろした。
私が初めて律くんに会ったのは、あまねくんの実家に行った時。つまり5ヶ月前だ。そして、雅臣が捕まったのが12月。脱税事件に関わっていたとしても8ヶ月前。それなら残りの4ヶ月以上はどこから出てきたのだろう。
「ある顧客から、保険に関する依頼がありました。いい条件で斡旋され、保険に入り直したものの、いざ保険を使おうとしたら降りなかったと」
「保険……それって」
「もう察しはつくと思いますけど、その生命保険を勧めたのが結城雅臣でした」
日記にも書かれていた。保険の売上が伸びただとか、全国1位になったとか。
「保険会社との提携は、全ての税理士事務所で行われているわけではありません。ある法人に入会している事務所のみが行っているんです。そして、保険会社自体はそんなに悪い会社じゃなかった。ただ、結城秀一税理士事務所の担当者と結城秀一が手を組み、悪行を働いていたんです」
「え!? ……そんな情報私聞いちゃっても大丈夫?」
「ええ。この件については既に解決済みですから。俺がこの案件を承った時点では、当然何もわかりませんでした。なので、結城雅臣について調べた。その周囲の人間についても。そこであなたの存在を知った」
律くんは、私の情報が書かれている用紙を、左手の人差し指でコンッと叩いた。
「あなたの情報を見て、以前地方番組に出演していたことや、すずらんに勤務していたことを知りました。周が大学生の頃、あなたの番組をよく見ていたことを知ってますか?」
「う、うん。聞いたよ」
「うちには当時、リビングにしかテレビがなかった。レコーダーも。それは、勉強に集中させるためでしたが、周は勉強に行き詰まると、家族が寝静まった夜中にこっそりあなたが出演している番組を見ていました。それを発見したのはたまたまだったけど、その時から周があなたに興味を持っていることは知っていました」
「うん」
「俺も弁護士なんで、依頼された内容や人物に対して守秘義務があります。だから、当然家族にも依頼内容は話さない。周がすずらんの経営コンサルタントを受けることになったのだって、周は未だに偶然だと思っているけど、本当は俺が紹介したんです」
「え? どういう……」
「経営が困難になってくると、融資を求めて銀行などに経営者が行きます。銀行でもそれ以上の融資ができないとなると、どうしても経営を見直す必要が出てくる。
その相談が弁護士にくることがあります。大体は直接税理士事務所にいきますが、いい税理士事務所を紹介してくれなんて言われることがたまにあるんです。
数ある経営難の企業の中にすずらんの名前がありました。だから周を紹介したんです。俺が仲介する形じゃなくて、あくまでも自ら依頼するように」
「じゃあ、本当にあまねくんは何も……」
「知らないですよ。だから、あなたに余計なことを喋られると困るんです。胸が痛くなるようなら、もう話すのをやめます」
あまねくんの手に似た長い指が、コーヒーカップの取っ手を掴む。ゆっくり口元に持っていきながら彼は言う。
「1年!? ……ごめん」
驚いて思わず声を張ってしまった。中腰になり、周りの目が気になったため私は慌てて腰を下ろした。
私が初めて律くんに会ったのは、あまねくんの実家に行った時。つまり5ヶ月前だ。そして、雅臣が捕まったのが12月。脱税事件に関わっていたとしても8ヶ月前。それなら残りの4ヶ月以上はどこから出てきたのだろう。
「ある顧客から、保険に関する依頼がありました。いい条件で斡旋され、保険に入り直したものの、いざ保険を使おうとしたら降りなかったと」
「保険……それって」
「もう察しはつくと思いますけど、その生命保険を勧めたのが結城雅臣でした」
日記にも書かれていた。保険の売上が伸びただとか、全国1位になったとか。
「保険会社との提携は、全ての税理士事務所で行われているわけではありません。ある法人に入会している事務所のみが行っているんです。そして、保険会社自体はそんなに悪い会社じゃなかった。ただ、結城秀一税理士事務所の担当者と結城秀一が手を組み、悪行を働いていたんです」
「え!? ……そんな情報私聞いちゃっても大丈夫?」
「ええ。この件については既に解決済みですから。俺がこの案件を承った時点では、当然何もわかりませんでした。なので、結城雅臣について調べた。その周囲の人間についても。そこであなたの存在を知った」
律くんは、私の情報が書かれている用紙を、左手の人差し指でコンッと叩いた。
「あなたの情報を見て、以前地方番組に出演していたことや、すずらんに勤務していたことを知りました。周が大学生の頃、あなたの番組をよく見ていたことを知ってますか?」
「う、うん。聞いたよ」
「うちには当時、リビングにしかテレビがなかった。レコーダーも。それは、勉強に集中させるためでしたが、周は勉強に行き詰まると、家族が寝静まった夜中にこっそりあなたが出演している番組を見ていました。それを発見したのはたまたまだったけど、その時から周があなたに興味を持っていることは知っていました」
「うん」
「俺も弁護士なんで、依頼された内容や人物に対して守秘義務があります。だから、当然家族にも依頼内容は話さない。周がすずらんの経営コンサルタントを受けることになったのだって、周は未だに偶然だと思っているけど、本当は俺が紹介したんです」
「え? どういう……」
「経営が困難になってくると、融資を求めて銀行などに経営者が行きます。銀行でもそれ以上の融資ができないとなると、どうしても経営を見直す必要が出てくる。
その相談が弁護士にくることがあります。大体は直接税理士事務所にいきますが、いい税理士事務所を紹介してくれなんて言われることがたまにあるんです。
数ある経営難の企業の中にすずらんの名前がありました。だから周を紹介したんです。俺が仲介する形じゃなくて、あくまでも自ら依頼するように」
「じゃあ、本当にあまねくんは何も……」
「知らないですよ。だから、あなたに余計なことを喋られると困るんです。胸が痛くなるようなら、もう話すのをやめます」
あまねくんの手に似た長い指が、コーヒーカップの取っ手を掴む。ゆっくり口元に持っていきながら彼は言う。
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