【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
239 / 289
婚姻届

【24】

しおりを挟む
「俺が初めて結城雅臣を知ったのは、1年と少し前」

「1年!? ……ごめん」

 驚いて思わず声を張ってしまった。中腰になり、周りの目が気になったため私は慌てて腰を下ろした。

 私が初めて律くんに会ったのは、あまねくんの実家に行った時。つまり5ヶ月前だ。そして、雅臣が捕まったのが12月。脱税事件に関わっていたとしても8ヶ月前。それなら残りの4ヶ月以上はどこから出てきたのだろう。

「ある顧客から、保険に関する依頼がありました。いい条件で斡旋され、保険に入り直したものの、いざ保険を使おうとしたら降りなかったと」

「保険……それって」

「もう察しはつくと思いますけど、その生命保険を勧めたのが結城雅臣でした」

 日記にも書かれていた。保険の売上が伸びただとか、全国1位になったとか。

「保険会社との提携は、全ての税理士事務所で行われているわけではありません。ある法人に入会している事務所のみが行っているんです。そして、保険会社自体はそんなに悪い会社じゃなかった。ただ、結城秀一税理士事務所の担当者と結城秀一が手を組み、悪行を働いていたんです」

「え!? ……そんな情報私聞いちゃっても大丈夫?」

「ええ。この件については既に解決済みですから。俺がこの案件を承った時点では、当然何もわかりませんでした。なので、結城雅臣について調べた。その周囲の人間についても。そこであなたの存在を知った」

 律くんは、私の情報が書かれている用紙を、左手の人差し指でコンッと叩いた。

「あなたの情報を見て、以前地方番組に出演していたことや、すずらんに勤務していたことを知りました。周が大学生の頃、あなたの番組をよく見ていたことを知ってますか?」

「う、うん。聞いたよ」

「うちには当時、リビングにしかテレビがなかった。レコーダーも。それは、勉強に集中させるためでしたが、周は勉強に行き詰まると、家族が寝静まった夜中にこっそりあなたが出演している番組を見ていました。それを発見したのはたまたまだったけど、その時から周があなたに興味を持っていることは知っていました」

「うん」

「俺も弁護士なんで、依頼された内容や人物に対して守秘義務があります。だから、当然家族にも依頼内容は話さない。周がすずらんの経営コンサルタントを受けることになったのだって、周は未だに偶然だと思っているけど、本当は俺が紹介したんです」

「え? どういう……」

「経営が困難になってくると、融資を求めて銀行などに経営者が行きます。銀行でもそれ以上の融資ができないとなると、どうしても経営を見直す必要が出てくる。
 その相談が弁護士にくることがあります。大体は直接税理士事務所にいきますが、いい税理士事務所を紹介してくれなんて言われることがたまにあるんです。
 数ある経営難の企業の中にすずらんの名前がありました。だから周を紹介したんです。俺が仲介する形じゃなくて、あくまでも自ら依頼するように」

「じゃあ、本当にあまねくんは何も……」

「知らないですよ。だから、あなたに余計なことを喋られると困るんです。胸が痛くなるようなら、もう話すのをやめます」

 あまねくんの手に似た長い指が、コーヒーカップの取っ手を掴む。ゆっくり口元に持っていきながら彼は言う。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...