238 / 289
婚姻届
【23】
しおりを挟む
指定されたカフェに着くと、彼はすでに中にいた。全国チェーンの人気店だ。
客層は、男女問わず年齢層も幅広い。
奥の席に通され、窓側からは離れている。腰の辺りまでの壁で仕切られた角の席のため、座ると丁度隣の客の顔は見えない。
「こっちまで来てもらってすみません」
「ううん、私こそ仕事中にごめんね。抜けて来ちゃって大丈夫なの?」
「今日は、周からまどかさんと会う日だと聞きました。今の状態で周と会って、余計なことを喋られると困るので」
「余計なことって……」
何となく棘のあるような言い方に違和感を覚える。律くん、怒ってる……?
店員がやって来て、私はアイスカフェオレ、律くんは真夏だというのにホットコーヒーを注文した。
「早速、本題に入りますけど、日記はもう手元にはないんですよね?」
「うん……」
「あなたはそれをどうやって手に入れたんですか?」
私を責める様子はなく、静かに問うものだから、私は正直に日記が見つかった経緯と内容、雅臣の母親が写真に対して訴訟を起こすことも考慮している旨を説明した。
律くんは、途中「それで?」「それから?」「どうして?」なんて言葉を挟みながら、私の話を最後まで聞いた。
私の言葉を遮って発言することもなく、じっと私の目を見ていた。彼の仕事柄だろうか。私よりも余程人の話を聴くことも、聴きたいことのポイントを押さえることにも慣れているようだった。
「そういうことでしたか……。順番に話します。結論から言うと、訴訟についてもあなたとの裁判においても何ら問題はありません」
「え?」
「写真を売った際、2人の関係については記者に言ってあるし、その時の音声テープは残っていますから」
「じゃあ……」
「勝手に記事をでっち上げて、偽りの報道を流したのは雑誌の編集者です」
「……そう。あの、律くんはどこから」
「関わっていたか? まどかさんはどっからどこまで知りたい? 知らなくてもいいこともあると思うんです」
「……内容がわからないからなんとも。全部を聞いたら、何かが変わっちゃうのかな?」
「別に、何も変わらないですよ。周は変わらずあなたを愛しているし、俺達守屋家だってあなたを受け入れる準備はできています。奏も最近ではあなたのことを気に入っているみたいだし、何の問題もない」
「じゃあ……」
「ただ、あなたはどうだろう。少なからず、俺や周に不信感を抱くかもしれない」
律くんは、先程運ばれてきたコーヒーに口をつける。あまねくんと同じ、ブラックのまま。
「不信感……」
「周は、本気であなたのことが好きだし、今後も変わらず大事にしてくれるはずです。それが条件でしたから」
「条件?」
律くんの1つ1つの言葉が引っかかる。謎だらけで、ついていけない。
「あなたを手に入れるための」
「え?」
「……まどかさんは、運命って信じていますか?」
「運命……わからないけど、あまねくんとの出会いは、それに近いものを感じたよ」
あまねくんだって運命かもって思って嬉しくなったって笑ってくれたし。
「それが、仕組まれていたものであっても?」
「な……え?」
「本当に偶然だと思った? 結婚式の帰りも、クリーニング屋も」
「違うの?」
律くんは表情を変えず、A4サイズの茶封筒を出し、そのまま私に差し出した。
私は、律くんの目を一瞥して封筒を開けた。
中には何枚か綴りになった用紙が3冊。結城雅臣、花井麻友、一まどか。ざっと目を通すと、個人情報がずらっと並んでいた。
客層は、男女問わず年齢層も幅広い。
奥の席に通され、窓側からは離れている。腰の辺りまでの壁で仕切られた角の席のため、座ると丁度隣の客の顔は見えない。
「こっちまで来てもらってすみません」
「ううん、私こそ仕事中にごめんね。抜けて来ちゃって大丈夫なの?」
「今日は、周からまどかさんと会う日だと聞きました。今の状態で周と会って、余計なことを喋られると困るので」
「余計なことって……」
何となく棘のあるような言い方に違和感を覚える。律くん、怒ってる……?
店員がやって来て、私はアイスカフェオレ、律くんは真夏だというのにホットコーヒーを注文した。
「早速、本題に入りますけど、日記はもう手元にはないんですよね?」
「うん……」
「あなたはそれをどうやって手に入れたんですか?」
私を責める様子はなく、静かに問うものだから、私は正直に日記が見つかった経緯と内容、雅臣の母親が写真に対して訴訟を起こすことも考慮している旨を説明した。
律くんは、途中「それで?」「それから?」「どうして?」なんて言葉を挟みながら、私の話を最後まで聞いた。
私の言葉を遮って発言することもなく、じっと私の目を見ていた。彼の仕事柄だろうか。私よりも余程人の話を聴くことも、聴きたいことのポイントを押さえることにも慣れているようだった。
「そういうことでしたか……。順番に話します。結論から言うと、訴訟についてもあなたとの裁判においても何ら問題はありません」
「え?」
「写真を売った際、2人の関係については記者に言ってあるし、その時の音声テープは残っていますから」
「じゃあ……」
「勝手に記事をでっち上げて、偽りの報道を流したのは雑誌の編集者です」
「……そう。あの、律くんはどこから」
「関わっていたか? まどかさんはどっからどこまで知りたい? 知らなくてもいいこともあると思うんです」
「……内容がわからないからなんとも。全部を聞いたら、何かが変わっちゃうのかな?」
「別に、何も変わらないですよ。周は変わらずあなたを愛しているし、俺達守屋家だってあなたを受け入れる準備はできています。奏も最近ではあなたのことを気に入っているみたいだし、何の問題もない」
「じゃあ……」
「ただ、あなたはどうだろう。少なからず、俺や周に不信感を抱くかもしれない」
律くんは、先程運ばれてきたコーヒーに口をつける。あまねくんと同じ、ブラックのまま。
「不信感……」
「周は、本気であなたのことが好きだし、今後も変わらず大事にしてくれるはずです。それが条件でしたから」
「条件?」
律くんの1つ1つの言葉が引っかかる。謎だらけで、ついていけない。
「あなたを手に入れるための」
「え?」
「……まどかさんは、運命って信じていますか?」
「運命……わからないけど、あまねくんとの出会いは、それに近いものを感じたよ」
あまねくんだって運命かもって思って嬉しくなったって笑ってくれたし。
「それが、仕組まれていたものであっても?」
「な……え?」
「本当に偶然だと思った? 結婚式の帰りも、クリーニング屋も」
「違うの?」
律くんは表情を変えず、A4サイズの茶封筒を出し、そのまま私に差し出した。
私は、律くんの目を一瞥して封筒を開けた。
中には何枚か綴りになった用紙が3冊。結城雅臣、花井麻友、一まどか。ざっと目を通すと、個人情報がずらっと並んでいた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ナイトプールで熱い夜
狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…?
この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。
【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜
来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、
疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。
無愛想で冷静な上司・東條崇雅。
その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、
仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。
けれど――
そこから、彼の態度は変わり始めた。
苦手な仕事から外され、
負担を減らされ、
静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。
「辞めるのは認めない」
そんな言葉すらないのに、
無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。
これは愛?
それともただの執着?
じれじれと、甘く、不器用に。
二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。
無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です!
https://estar.jp/novels/26513389
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる