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婚姻届
【33】
しおりを挟む「うーん……。今となっては結城も昏睡状態ですからね。憶測でしか言えないけど、多分九州へ行ったのは結城から逃げるためだと本人は思ってないんでしょうね。
周があなたのことを一時でも酷い人間だと思っていたのなら、あなたがいるせいで顧客が振り回され、事務所のスタッフにも迷惑がかかったと周が思う可能性だってあった。もちろん、そこまで歪んだ考え方をするような奴じゃないけど、結城ならそう考えてもおかしくない。
まあ、こうなってしまった以上、今更どうあがいたって仕方がないけど。ただ言えるのは、結城にとっても周にとってもあなたはキーパーソンだったということ」
「キーパーソン……」
「これからもね。ちょっと長くなっちゃったけど、これが全ての真相です。もっと詳しいことは、結城の目が覚めてさらに事情聴取がされないことにはわからない。こんなところで憶測ばかりが飛び交っていたってあなたが混乱するだけです」
「う、うん……」
律くんは、カップの中のコーヒーを飲み干し、静かにそれを置くと「それで、どうします?」と聞いた。
「何が?」
「何って、結婚。あなたと周の偶然の再会は、俺が仕組んだことだった。結城の写真は、周がわざわざ売ったもの。きっとこれからも、周は結城を嫌い続けるし、あなたに近付こうとする男がいたら平気で陥れるかもしれない。それでも結婚する?」
「……する」
「そう」
律くんは、ふっと柔らかく笑った。
「何でって聞かないの?」
「聞かないよ。あなたならそう言うと思ったから。だから、全部話した。それに、今周を振ったらそれこそストーカーになりかねない」
「え!?」
律くんは、おかしそうにははっと腕を組んで笑う。ここへ来たばかりの時には緊迫した空気を感じたが、今ではすっかり穏やかな空気が流れている。
「周のこと、頼みますよ。もう、俺だけじゃどうにもならないこともあるんですから。きっと結婚したら、今以上に束縛されることもあるかもしれない」
「うん……。でもね、写真のことも私への愛情故にってことだもんね!」
「……ポジティブだな。結城も周も相当歪んでると思うけどね」
「ちょっとビックリしちゃったけど、大丈夫。逆に、写真を売ったことで、今回のことを気にしてるなら私が傍にいてあげないとね!」
「……ねぇ、まどかさんも相当ヤバいよね? 」
「え? 何、どういうこと?」
「いや。別に、何でもない」
「言ってよ!」
「いい、いい」
律くんは、顔の前でパタパタと手を動かし、私から視線を逸らした。眉を潜めて首を振っている。
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