【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

文字の大きさ
254 / 289
婚姻届

【39】

しおりを挟む
 私があまねくんと古河先生のもとを訪れたのは1ヶ月くらい前だったと思う。
 たった1ヶ月で、周りはこんなに変化するのだと驚かされる。

 私もあまねくんと付き合い始めたのは、出会って1ヶ月経たない頃だった。夢中になったら、出会ってから付き合うまでの期間なんて関係ないのは、私にもよくわかる。
 
 とにかく奏ちゃんが幸せになってくれたらそれでいい。

「それで、奏ちゃん……」

「ああ、雑誌ね」

 最後まで言う前に、彼女は座席に置いてあったビニール袋から1冊の雑誌を取り出した。
 私は、速くなる脈拍を感じながら、ページを開いた。

 数ページ捲ると、すぐに現れた奏ちゃん。そんなにすぐいいページが起用されるわけじゃないなんて言っていたのに、1ページに大きく写るカッコいい奏ちゃん。

「わぁ! すごい! カッコいいね……」

 口元を押さえて、ページを捲る。今度は男性モデルとのツーショットだ。ボーイッシュな奏ちゃんが、美しい女性らしさを全面に魅せている。
 髪の長さもメイクも前ページと変わらない筈なのに、表情とポーズだけでこんなにも印象が変わるものなのかと驚かされる。

 普段の奏ちゃんと一緒にいると、彼女は子供っぽさが抜けない少し手のかかる普通の女の子だ。無表情でいることが多いし、時折見せる笑顔も可愛い。
 けれど、どの奏ちゃんとも違った。雑誌の写真を見るたび、彼女がプロなのだと思い知らされる。

「奏ちゃんだけど、奏ちゃんじゃないみたい」

 綺麗でカッコよくて、ずっと見ていられる。律くんと似た雰囲気は纏っているけれど、女性としてのしなやかさや艶やかさは律くんにはないものだ。
 奏ちゃんは、自分の魅せ方を知っている。私は、こんなにも釘付けになってしまうのだから。

 1ページに大きく掲載されただけでも凄いことなのに、奏ちゃんのページは5ページにも及んだ。
 もうこれは、奏ちゃんの特集ではないか。

「ねぇねぇ。こんなにいっぱい載っちゃって、その内表紙になっちゃったりするんじゃないの?」

「さすがに今のところ、表紙は無理だよ。その雑誌の表紙なんてそんな簡単に任せてもらえない。でも、パリで成功したら可能かもね」

「あ……そろそろそんな時期?」

「うん。ハイブランドのショーが9月23日から始まるの。だから今月の3週目には向こうに行くつもり」

「え!? 早くない!?」

「早くないよ。チャンスはある時に掴まないと。そんなようなこと言ったのあんたじゃなかった?」

 そんなこと言ったかな? 妙に大人っぽくなってしまった奏ちゃんに、こちらの方がたじろぐ。

「そうだったかな……」

「適当だな。とにかくショーが終わるまでいるから2週間くらいは行ってくる」

「えー……。そんなに早く新婚旅行行けないよ」

「だから、別に見に来なくてもいいってば。そもそも招待されてないと見れないからね」

「そうなの!?」

「並んでれば見れる時もあるみたいだけど、目的のショーを見れるわけじゃないからね」

「えー……」

 私は、項垂れるようにテーブルに伏せる。目的のファッションブランドにツテのある人がいれば……。

「あ! ダリアさんは?」

「ニューヨークのコレクションに何度も出場してるから、同じブランドがパリでも出すってなったら、見に来れるんじゃない?」

「じゃあさ!」

「待って。私がそこのオーディションに受かるかどうかわかんないから」

「ああ、そうか……。じゃあ、どっちみち結果がわかんないとしょんないのか」

「そうだね」

「出たいブランドはあるの?」

「あるよ。とりあえず、この雑誌で起用されているブランドには出ておきたいよね。そしたら、そのブランドの特集でもモデルとして起用される確率上がるし」

 奏ちゃんなりにちゃんと考えているのだと感心する。とても、若い子に表紙を奪われたからと落ち込んでいた子と同一人物とは思えない。

 やっぱり仕事を頑張る女性っていいなぁ。私も、働いていた時にはこんなふうにキラキラしてたのかなぁ。

 すずらんを退職する前の自分を思い返し、あれからもう3ヶ月が経ってしまったのだと少し悲しくなった。
 1ヶ月くらい休憩したらなんて思っていたのに、8月はあまねくんとずっと一緒にいたし、働かないことが当たり前になりつつあった。
 頑張っている奏ちゃんを見たら、私もそろそろ仕事復帰に向けて頑張らなくちゃとやる気をもらえた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ナイトプールで熱い夜

狭山雪菜
恋愛
萌香は、27歳のバリバリのキャリアウーマン。大学からの親友美波に誘われて、未成年者不可のナイトプールへと行くと、親友がナンパされていた。ナンパ男と居たもう1人の無口な男は、何故か私の側から離れなくて…? この作品は、「小説家になろう」にも掲載しております。

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺様上司に今宵も激しく求められる。

美凪ましろ
恋愛
 鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。  蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。  ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。 「おまえの顔、えっろい」  神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。  ――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。 **2026.01.02start~2026.01.17end** ◆エブリスタ様にも掲載。人気沸騰中です! https://estar.jp/novels/26513389

処理中です...