【完結】美人過ぎる〇〇はワンコ彼氏に溺愛される

雪村こはる

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婚姻届

【64】

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 いくらなんでもこれじゃ陽菜ちゃんが可哀想だ。

「あまねくんはそうかもしれないけど、私には陽菜ちゃんが凄く可愛く見えたよ。あまねくんのこと好きなのかなって……凄く嫌だったよ」

「……何かされたの?」

 低く唸るような声で言うものだから、はっと顔を上げれば般若の面のような顔をしている彼。

 こわい、こわい、こわい、こわい!

「されてないよ!」

「でも、嫌な思いしたんでしょ? 陽菜ちゃんが俺の元カノだってまどかさんが思うような、意味深なことしてったってことでしょ?」

「いや、まあ……」

「……許せないね」

「え?」

 え? あまねくん? 

「俺のいないところで、まどかさんに嫌な思いさせるなんて許せない。ここ何年も連絡も取ってないし、会ってもないような子だよ? 元カノ面するとか無理。陽菜ちゃん嫌い」

「えぇ!?」

「まどかさん、安心して。俺、まどかさんのこと傷つける人間は女の子でも容赦しないから」

 そう言ってにっこりと天使のような笑顔を向ける。

 え、こわっ!

「だから、何もされてないよ?」

「でもまどかさん泣いてたじゃん。もしあのまままどかさんが俺と別れるって言い出したら、陽菜ちゃんのせいじゃんね」

「んー……」

 違うとも言い切れないけど、そうだとも……。

「でも、陽菜ちゃん彼氏いるっぽいよ? くまのキーホルダーつけてたし」

「くま? セラミックっぽいやつ?」

「あ、うん」

「……それ、俺が買ってあげたやつだもん」

「へ?」

 話が違うじゃないか。

「5人で仲良かったって話したでしょ? その5人で動物園行ったんだよね。
 帰りにそのキーホルダー売ってて、どうしても欲しいって言うから、自分で買えばって言ったんだけど、買ってくれなきゃ動かないってその場に座り込んで黙り。昔から、そういう空気読めないところあったんだよね」

 凄い。あの優しい紳士的なあまねくんが悪口しか言わない。多分これ、臣くんと同じくらい陽菜ちゃんのこと嫌いなんじゃ……。

「じゃあ……キーホルダーは……」

「ちょっとあざといところあるから、わざとまどかさんに見えるようにしたんじゃない? 本当に嫌い」

 私のせいで恐らく陽菜ちゃんは、今まで以上にあまねくんに嫌われてしまった。
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