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いざ、潤銘郷へ【11】
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話に夢中になっていたが、気付けば目の前には匠閃城が霞んで見える程巨大な城が建っていた。
また城は高い塀で囲まれており、壁は頑丈そうで立派な天守閣が澪を見下ろしていた。大きさにして匠閃城三つ分といったところだ。
「大きい……。他の部分は異国の文化がたくさんあるのに、城は昔の作りのままなのですね」
「ああ。城自体が多くの技術を含む建造物だからな。修復し、新たに付け加えた部分もあるが、それ以外は三百年前に建て替えられた時のままだ」
「それでもまだ三百年なんですね。しっかりした作りで、美しいです」
「そうか……」
目を輝かせる澪を見て、さすがは匠閃郷の者だなと頷く。
城は凛としており、この軍勢にふさわしいと言える。
城の敷地内に入ると、それぞれ皆馬から降り、歩澄の指揮を待った。
澪も馬から降りると、まだ気を失っている琥太郎を揺さぶる。しかし、一向に目を覚ます気配はない。
「本当に殺してはいないのだろうな」
瑛梓はずいっと顔を近付け、澪に疑いの目を向ける。
「殺してなどいませんよ! ほら、確認して下さい!」
琥太郎を指差し、瑛梓は琥太郎の首もとに指を当て、顔を近付ける。
「確かに息はあるな」
「当然です! 私は不必要な殺生はしないと決めているのですから!」
(勧玄様と約束したもの……)
澪はそう言いながら、脱力している琥太郎を馬から下ろす。
「待て、女の力では……」
誰かに運ばせようとした瑛梓は、途中で言葉を失った。澪は、ずるりと馬から下ろした体をいとも簡単そうに肩に担いだのだ。
琥太郎はまだ十五だが、体つきは澪よりも逞しくある。そんな男の体を軽々と担ぐものだから、周りの兵士もぎょっとして距離をとった。
「おい、女。その者をどうするつもりだ」
瑛梓と澪の元にやってきた歩澄は、そう声をかけた。琥太郎を担ぐ澪の姿を見て、すぐに馬を奪ったことなど想像がついた。
(やはりここまで走ってくるなど不可能であったか。……根を上げて逃げ出すどころか、家来から馬を奪うとはな)
徳昂との激戦を見て、歩澄もただの女ではないと澪を警戒している。琥太郎は、梓月の家来だ。歩澄に仕える梓月の家来とあれば、自分の家来も同然である。
その琥太郎に手を出したのであれば、ただでは済まさぬと殺気を放つ。
「どこか体を休ませるところはありますか? 長い間馬に揺られていたので、安静にしておいた方がよろしいかと」
「……」
歩澄は、半信半疑ではあったが瑛梓を見れば強く頷いたため「瑛梓、案内させろ」と声をかけた。
「はい。五平、姫と琥太郎を案内してやれ」
瑛梓は、隣にいた五平に命を出し、背筋を伸ばした五平は、ついてくるよう澪に声をかけた。
数歩進んだ澪は、不意に歩みを止め、歩澄の方を振り返る。
「匠閃城の者と刀を交えた者は、すぐに刀を手入れなさって下さい。匠閃城で使われている刀には毒が塗り込んであります故。直接肌に触れるとたちまち爛れて体中に毒が回ります。
それと、水分を多く含んでいるので、早く毒を取り除かないと腐蝕が進み、刀が錆びます」
澪がそう言うと、辺りはざわざわと騒がしくなる。
「……それが真であれば、なぜあの者達の刀は錆びない?」
「特殊な油が加工してあります。ですが、他の郷に持ち込んだ刀には、そのような細工はされておりません」
「なぜ、それを私達に教える?」
(私達は、お前の家族を殺した憎い相手であろう?)
歩澄は怪訝そうに顔を歪めた。
「貴方達が戦えなくなったら、誰が民を守るのですか?」
当然のことを、とでも言いたげに澪は首を傾げる。歩澄は、一瞬目を見開いたが「直ぐに刀を手入れしろ! 直接触れるな!」そう軍勢に声をかけた。
「最後尾から見ていましたが、あの刀で傷を負った兵士はいないようですね」
澪はそう続ける。瑛梓は「お前、そのために最後尾に……?」そう目を丸くして言った。
「あの毒は藤蘭という花から作られた毒で、傷口から毒が侵入すれば四半時(※約15分)と経たずに息ができなくなります」
澪は、瑛梓の質問には答えず、胸の間から小さな巾着を取り出す。拳の中に収まる程度の大きさである。
それを瑛梓に投げつけた。パシッと音を立てて、瑛梓はそれを容易に受け取る。
「万が一、直接触れるようなことがあればそれを。解毒剤です。信じるかどうかは自由ですが」
澪はそれだけ言い残して、五平の後を追った。
また城は高い塀で囲まれており、壁は頑丈そうで立派な天守閣が澪を見下ろしていた。大きさにして匠閃城三つ分といったところだ。
「大きい……。他の部分は異国の文化がたくさんあるのに、城は昔の作りのままなのですね」
「ああ。城自体が多くの技術を含む建造物だからな。修復し、新たに付け加えた部分もあるが、それ以外は三百年前に建て替えられた時のままだ」
「それでもまだ三百年なんですね。しっかりした作りで、美しいです」
「そうか……」
目を輝かせる澪を見て、さすがは匠閃郷の者だなと頷く。
城は凛としており、この軍勢にふさわしいと言える。
城の敷地内に入ると、それぞれ皆馬から降り、歩澄の指揮を待った。
澪も馬から降りると、まだ気を失っている琥太郎を揺さぶる。しかし、一向に目を覚ます気配はない。
「本当に殺してはいないのだろうな」
瑛梓はずいっと顔を近付け、澪に疑いの目を向ける。
「殺してなどいませんよ! ほら、確認して下さい!」
琥太郎を指差し、瑛梓は琥太郎の首もとに指を当て、顔を近付ける。
「確かに息はあるな」
「当然です! 私は不必要な殺生はしないと決めているのですから!」
(勧玄様と約束したもの……)
澪はそう言いながら、脱力している琥太郎を馬から下ろす。
「待て、女の力では……」
誰かに運ばせようとした瑛梓は、途中で言葉を失った。澪は、ずるりと馬から下ろした体をいとも簡単そうに肩に担いだのだ。
琥太郎はまだ十五だが、体つきは澪よりも逞しくある。そんな男の体を軽々と担ぐものだから、周りの兵士もぎょっとして距離をとった。
「おい、女。その者をどうするつもりだ」
瑛梓と澪の元にやってきた歩澄は、そう声をかけた。琥太郎を担ぐ澪の姿を見て、すぐに馬を奪ったことなど想像がついた。
(やはりここまで走ってくるなど不可能であったか。……根を上げて逃げ出すどころか、家来から馬を奪うとはな)
徳昂との激戦を見て、歩澄もただの女ではないと澪を警戒している。琥太郎は、梓月の家来だ。歩澄に仕える梓月の家来とあれば、自分の家来も同然である。
その琥太郎に手を出したのであれば、ただでは済まさぬと殺気を放つ。
「どこか体を休ませるところはありますか? 長い間馬に揺られていたので、安静にしておいた方がよろしいかと」
「……」
歩澄は、半信半疑ではあったが瑛梓を見れば強く頷いたため「瑛梓、案内させろ」と声をかけた。
「はい。五平、姫と琥太郎を案内してやれ」
瑛梓は、隣にいた五平に命を出し、背筋を伸ばした五平は、ついてくるよう澪に声をかけた。
数歩進んだ澪は、不意に歩みを止め、歩澄の方を振り返る。
「匠閃城の者と刀を交えた者は、すぐに刀を手入れなさって下さい。匠閃城で使われている刀には毒が塗り込んであります故。直接肌に触れるとたちまち爛れて体中に毒が回ります。
それと、水分を多く含んでいるので、早く毒を取り除かないと腐蝕が進み、刀が錆びます」
澪がそう言うと、辺りはざわざわと騒がしくなる。
「……それが真であれば、なぜあの者達の刀は錆びない?」
「特殊な油が加工してあります。ですが、他の郷に持ち込んだ刀には、そのような細工はされておりません」
「なぜ、それを私達に教える?」
(私達は、お前の家族を殺した憎い相手であろう?)
歩澄は怪訝そうに顔を歪めた。
「貴方達が戦えなくなったら、誰が民を守るのですか?」
当然のことを、とでも言いたげに澪は首を傾げる。歩澄は、一瞬目を見開いたが「直ぐに刀を手入れしろ! 直接触れるな!」そう軍勢に声をかけた。
「最後尾から見ていましたが、あの刀で傷を負った兵士はいないようですね」
澪はそう続ける。瑛梓は「お前、そのために最後尾に……?」そう目を丸くして言った。
「あの毒は藤蘭という花から作られた毒で、傷口から毒が侵入すれば四半時(※約15分)と経たずに息ができなくなります」
澪は、瑛梓の質問には答えず、胸の間から小さな巾着を取り出す。拳の中に収まる程度の大きさである。
それを瑛梓に投げつけた。パシッと音を立てて、瑛梓はそれを容易に受け取る。
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