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豊潤な郷【45】
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歩澄に王としての器があるのか否か、伊吹は見極めようとしている。此度の件が認められれば、歩澄が王になるべく道が近付く。
歩澄は、澪に慕情を抱いている事に納得してはいない。伊吹よりも己の方が優れていると見せつける事により、澪からも手を引いてもらうつもりである。
歩澄のやるべき事は終えた。後は伊吹の出方を伺うしかなかった。
「また翠穣郷へ行かれるのですか?」
口を開いたのは秀虎であった。神妙な顔付きで歩澄を見上げた。一月外に出て作業をしていたからか、すっかり日に焼け健康的な見た目をしている。
それでも身なりをきちんとしている重臣達には、育ちの良さを感じさせた。瑛梓と梓月に関しては、潤銘城へ仕えて以来身に付けた気品であるが。
「そうなるであろうな。澪の目的の刀もあちらにある。伊吹の方から出向いてくるとは考えづらい」
歩澄は目を瞑り、はあっと大きく息をつく。歩澄とて、長い間城を空けていた故に心労が絶えない。いくら澪の為、己の将来の為とはいえ、愛する澪を置き去りにして城を離れたのだ。
腕の立つ家来達も多く、澪自身も己の身くらい守れるが、それでも一月は長い時だと感じた。そこへきて翠穣郷へ向かうとなれば、また四、五日は城を空けることとなる。
今度は重臣二人を残していくつもりであるが、統主のいない城は家来達の不安を仰ぐこととなる。
一刻も早く伊吹との件を解決させたいのは山々だが、出来れば暫く城に留まりたいのも確かであった。
「左様でございますか……。我々が匠閃郷に籠っていた件は、既に栄泰郷、洸烈郷にも伝わっているようです。あちらも警戒している故、奇襲をかけてくることはありませんでしたが、やはりあまり城を空けられるのは得策ではないかと……」
「私もそれは考えている。皇成はまず攻めては来ぬであろう。こちらに恩もある。澪の目当てだった刀が手に入った以上、最悪こちらから侵寇することとて可能だが、問題は煌明の方だな。奴にだけは伊吹とのやり取りを知られるわけにはいかぬ」
「はい。伊吹様がこちらについたと確証が得られるまでは、他郷に不信感を抱かせるのは不味いでしょう。現段階では、歩澄様が匠閃郷の統主となり、澪が出身者であることから単に潤銘郷同様の開拓を進めている程度にしか思ってはいないでしょう。しかし、長引けば、悟られる危険があるのも事実。どちらにせよ、状況はあまりよくはありません」
歩澄は、秀虎の言葉にうーんと唸る。伊吹との事を直ぐにでも解決したいが、他郷の出方も気になるところ。秀虎の言うように、穏やかな雰囲気でないことだけは確かであった。
「ですが、もし落様との件が落ち着けば残りは洸烈郷のみとなります。皇成様はなにやら城下の一件で忙しいようですし」
澪がそう言えば、歩澄と秀虎は思い出したかのように目を瞬かせた。
「そうであったな。確か、遊女が何人も殺されているだとか」
「ええ。皇成様の側室にも知り合いの方がいるようですし……恐らく皇成様もそちらのことで手一杯ではないでしょうか」
「そうだな。だとすれば、やはり煌明だけか……。ただ、あの男も馬鹿ではない。勝算もなしに侵寇するほど愚かではないはずだ。やはり、伊吹の返答が出次第すぐに事を片付ける。こちらには他にも問題がいくらでもある」
頭を抱える歩澄に、他に何の問題があるのかと澪は首を傾げた。
歩澄は、澪に慕情を抱いている事に納得してはいない。伊吹よりも己の方が優れていると見せつける事により、澪からも手を引いてもらうつもりである。
歩澄のやるべき事は終えた。後は伊吹の出方を伺うしかなかった。
「また翠穣郷へ行かれるのですか?」
口を開いたのは秀虎であった。神妙な顔付きで歩澄を見上げた。一月外に出て作業をしていたからか、すっかり日に焼け健康的な見た目をしている。
それでも身なりをきちんとしている重臣達には、育ちの良さを感じさせた。瑛梓と梓月に関しては、潤銘城へ仕えて以来身に付けた気品であるが。
「そうなるであろうな。澪の目的の刀もあちらにある。伊吹の方から出向いてくるとは考えづらい」
歩澄は目を瞑り、はあっと大きく息をつく。歩澄とて、長い間城を空けていた故に心労が絶えない。いくら澪の為、己の将来の為とはいえ、愛する澪を置き去りにして城を離れたのだ。
腕の立つ家来達も多く、澪自身も己の身くらい守れるが、それでも一月は長い時だと感じた。そこへきて翠穣郷へ向かうとなれば、また四、五日は城を空けることとなる。
今度は重臣二人を残していくつもりであるが、統主のいない城は家来達の不安を仰ぐこととなる。
一刻も早く伊吹との件を解決させたいのは山々だが、出来れば暫く城に留まりたいのも確かであった。
「左様でございますか……。我々が匠閃郷に籠っていた件は、既に栄泰郷、洸烈郷にも伝わっているようです。あちらも警戒している故、奇襲をかけてくることはありませんでしたが、やはりあまり城を空けられるのは得策ではないかと……」
「私もそれは考えている。皇成はまず攻めては来ぬであろう。こちらに恩もある。澪の目当てだった刀が手に入った以上、最悪こちらから侵寇することとて可能だが、問題は煌明の方だな。奴にだけは伊吹とのやり取りを知られるわけにはいかぬ」
「はい。伊吹様がこちらについたと確証が得られるまでは、他郷に不信感を抱かせるのは不味いでしょう。現段階では、歩澄様が匠閃郷の統主となり、澪が出身者であることから単に潤銘郷同様の開拓を進めている程度にしか思ってはいないでしょう。しかし、長引けば、悟られる危険があるのも事実。どちらにせよ、状況はあまりよくはありません」
歩澄は、秀虎の言葉にうーんと唸る。伊吹との事を直ぐにでも解決したいが、他郷の出方も気になるところ。秀虎の言うように、穏やかな雰囲気でないことだけは確かであった。
「ですが、もし落様との件が落ち着けば残りは洸烈郷のみとなります。皇成様はなにやら城下の一件で忙しいようですし」
澪がそう言えば、歩澄と秀虎は思い出したかのように目を瞬かせた。
「そうであったな。確か、遊女が何人も殺されているだとか」
「ええ。皇成様の側室にも知り合いの方がいるようですし……恐らく皇成様もそちらのことで手一杯ではないでしょうか」
「そうだな。だとすれば、やはり煌明だけか……。ただ、あの男も馬鹿ではない。勝算もなしに侵寇するほど愚かではないはずだ。やはり、伊吹の返答が出次第すぐに事を片付ける。こちらには他にも問題がいくらでもある」
頭を抱える歩澄に、他に何の問題があるのかと澪は首を傾げた。
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