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豊潤な郷【46】
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梓月は姿勢こそ綺麗なままだが、口を尖らせ面白くなさそうにしていた。潤銘郷で勃発している問題に頭を抱えているのだ。
その表情を見て、澪が「何か大きな問題があるのですか?」と歩澄に尋ねた。
「いや……お前に言う事ではないのだがな……碧空石が赤字を出した」
言いにくそうに歩澄は視線を逸らし、指先で目頭を押さえた。
「え? 碧空石は隣国でも潤銘郷でも人気のある石ではないのですか?」
「そうだ。これまで赤字となる事などなかった。半年程前から、王となるのであれば郷にはもっと財産を蓄えておいたほうがいいとなってな、今まで大きすぎて使っていなかった碧空石をふんだんに使用した首飾りを作った。隣国の皇族に売る目的で作ったものだ」
「それが売れなかったのですか?」
「いや、それは売れた。実に喜ばれ、千五百両という高値だったがあっさりとな」
「せ、千五百両ですか!? 首飾り一つがですか!?」
「そうだ。伊吹に提示された刀よりは安い」
歩澄は嫌味のようにそう言った。澪もあの時の伊吹を思い出し、しかめっ面を浮かべる。
「しかし、それで味を占めた職人が、潤銘郷の貴族にも隣国の皇族と同じ物を売り付ければ更に郷は潤うとみて、同じ大きさの物を作ろうとした。だが、考えなくてもわかる通り、潤銘郷の貴族でも財産には限界がある。千五百両などという金銭は郷、国の域だ。伊吹にも言ったが、それだけの財産があればいくつも村が復興する。作ることを止めさせたが、もう少し値を下げれば売れる筈だと碧空石の大きさを削り、勝手に作り上げた。それも一つ千両(※約一億三千万)」
歩澄は実に不機嫌そうな顔をした。命に背いた挙げ句、全く売れずに赤字を出したのだ。無理もない。
「それはいくつ作られたのですか……?」
「二つだ。碧空石自体は今でも人気のある石だ。あの首飾りとて解体して売りさばけば其なりに売れる。しかし、あれには他の高価な石も使ってあってな。美しいが、碧空石と比較して人気が劣る。そちらが売れずに余れば結局赤字だ」
「そうでしたか……実物は今あるのですか?」
「ああ。見たいか?」
歩澄は期待を込めた瞳を揺らした澪に、ようやく少し微笑んだ。
「見たいです!」
澪は前のめりになりながら、声を張った。美しい物も高価な物も身に付けるつもりはないが、澪にも興味くらいはある。一つ千両もする宝石の首飾りなど見たこともないのだ。そんなものがこの世に存在するのであれば是非見てみたいものだと喉を鳴らした。
「梓月」
歩澄が名前を呼ぶと梓月は無表情のまま頷いた。この件を仕切っていたのは梓月であった。歩澄からの命を確実に伝えたものの、勝手な行いをされ、歩澄よりも虫の居所が悪いのは梓月の方である。
そのため、この話を澪の耳には入れたくはなかった。しかし、こうなっては仕方がないと、梓月は立ち上がり首飾りを取りに行った。
暫くして戻った梓月が開けた箱の中には、目が眩む程輝く首飾りが入っていた。大粒の透明の石を磨かれた銀で周りを囲み、二つ感覚で碧空石が繋がっていた。下に向かうにつれて石は大きくなり、垂れ下がるようにしてゴツゴツとした碧空石が煌めいた。
澪は、こんなに間近で大きな碧空石を見たのは初めてだった。歩澄から贈られた髪飾りに使用した碧空石とは比べ物にはならない程、輝いている。
思わず「ほぉ……」と吐息が出る。とても触れられる代物ではないと、両手を付き箱の中をじっと眺めた。その様子は、梓月が梓乃の服をくれてやった際、衣装箱を覗き込んだ時にとてもよく似ていた。懐かしさもあり、梓月は周りに気付かれないようクスリと笑った。
その表情を見て、澪が「何か大きな問題があるのですか?」と歩澄に尋ねた。
「いや……お前に言う事ではないのだがな……碧空石が赤字を出した」
言いにくそうに歩澄は視線を逸らし、指先で目頭を押さえた。
「え? 碧空石は隣国でも潤銘郷でも人気のある石ではないのですか?」
「そうだ。これまで赤字となる事などなかった。半年程前から、王となるのであれば郷にはもっと財産を蓄えておいたほうがいいとなってな、今まで大きすぎて使っていなかった碧空石をふんだんに使用した首飾りを作った。隣国の皇族に売る目的で作ったものだ」
「それが売れなかったのですか?」
「いや、それは売れた。実に喜ばれ、千五百両という高値だったがあっさりとな」
「せ、千五百両ですか!? 首飾り一つがですか!?」
「そうだ。伊吹に提示された刀よりは安い」
歩澄は嫌味のようにそう言った。澪もあの時の伊吹を思い出し、しかめっ面を浮かべる。
「しかし、それで味を占めた職人が、潤銘郷の貴族にも隣国の皇族と同じ物を売り付ければ更に郷は潤うとみて、同じ大きさの物を作ろうとした。だが、考えなくてもわかる通り、潤銘郷の貴族でも財産には限界がある。千五百両などという金銭は郷、国の域だ。伊吹にも言ったが、それだけの財産があればいくつも村が復興する。作ることを止めさせたが、もう少し値を下げれば売れる筈だと碧空石の大きさを削り、勝手に作り上げた。それも一つ千両(※約一億三千万)」
歩澄は実に不機嫌そうな顔をした。命に背いた挙げ句、全く売れずに赤字を出したのだ。無理もない。
「それはいくつ作られたのですか……?」
「二つだ。碧空石自体は今でも人気のある石だ。あの首飾りとて解体して売りさばけば其なりに売れる。しかし、あれには他の高価な石も使ってあってな。美しいが、碧空石と比較して人気が劣る。そちらが売れずに余れば結局赤字だ」
「そうでしたか……実物は今あるのですか?」
「ああ。見たいか?」
歩澄は期待を込めた瞳を揺らした澪に、ようやく少し微笑んだ。
「見たいです!」
澪は前のめりになりながら、声を張った。美しい物も高価な物も身に付けるつもりはないが、澪にも興味くらいはある。一つ千両もする宝石の首飾りなど見たこともないのだ。そんなものがこの世に存在するのであれば是非見てみたいものだと喉を鳴らした。
「梓月」
歩澄が名前を呼ぶと梓月は無表情のまま頷いた。この件を仕切っていたのは梓月であった。歩澄からの命を確実に伝えたものの、勝手な行いをされ、歩澄よりも虫の居所が悪いのは梓月の方である。
そのため、この話を澪の耳には入れたくはなかった。しかし、こうなっては仕方がないと、梓月は立ち上がり首飾りを取りに行った。
暫くして戻った梓月が開けた箱の中には、目が眩む程輝く首飾りが入っていた。大粒の透明の石を磨かれた銀で周りを囲み、二つ感覚で碧空石が繋がっていた。下に向かうにつれて石は大きくなり、垂れ下がるようにしてゴツゴツとした碧空石が煌めいた。
澪は、こんなに間近で大きな碧空石を見たのは初めてだった。歩澄から贈られた髪飾りに使用した碧空石とは比べ物にはならない程、輝いている。
思わず「ほぉ……」と吐息が出る。とても触れられる代物ではないと、両手を付き箱の中をじっと眺めた。その様子は、梓月が梓乃の服をくれてやった際、衣装箱を覗き込んだ時にとてもよく似ていた。懐かしさもあり、梓月は周りに気付かれないようクスリと笑った。
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