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強者の郷【13】
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澪は呆れ顔で、「他郷の統主の心配をしてる暇があったら、自分のところの統主を探したら?」と言った。
「な……な……澪までそんなこと言うのか?」
「だってさっきから歩澄様のこと悪く言うんだもん。空穏なんか嫌い」
「りょ、りょー……」
澪がふいっと顔を背ければ、空穏は眉を下げてがっくりと肩を落とした。
「貴様、また他人の女を口説いているのか」
空穏の背後から声がする。勢いよく振り向けば、額に青筋を浮かべた歩澄が上から見下ろしていた。
驚いたように飛び退いた空穏は、咄嗟に身構えた。
「まったく……客人に対してその態度。重臣を変えた方がいいのではないか? 礼儀がまるでなっていない」
「なっ……怪しい動きをしていたのはそちらではないですか! 一体、どこで何をっ」
空穏がまだ話している途中で、歩澄は着物の襟の間から出した紙を空穏に差し出した。
「明日には届くであろう。まさか煌明がこれほどまでに酒豪だとは思っていなかったのでな。潤銘郷のものと異国のものと適当に用意させたが何せ数が多い。本日中とはいかぬのは、貴様の主のせいだ」
そう言った歩澄から受け取った紙には、酒の名前と本数とが書かれていた。
理由を歩澄に言っていなかったはずだがと秀虎と澪は驚いたように目を見開いた。
更に驚いたのは空穏である。本当に酒を手配していただけなのかと、手中にある紙を見て手が震えた。
「で、では煌明様は……」
「煌明がどうした? 貴様は奴の重臣であろう? あやつのことは貴様の方が余程詳しいのではないか」
「そ、それは……」
「まったく……。何なんだ、この郷は。客人をもてなすどころか主人の方が酔い潰れるわ、いなくなるわ……家来には礼儀もない。一生酒でも飲みながら闘技観戦でもしていろ」
呆れたような表情を作って歩澄は澪と空穏の間に割って入った。
「なっ……俺はまだ澪と話が……」
「話すことなどない。それより刀を返せ」
「い、嫌ですよ! そもそも何で貴方にそんなことを言われなければならないのですか!?」
「九重と勧玄の墓にも挨拶してきている。もはや私も匠閃郷では公認の仲でな」
「なーーっ!? あんた、そのために匠閃郷へ!?」
空穏は口をあんぐりとさせ、目玉が溢れる落ちる程に瞼を開いた。
「おい! 貴様! 無礼が過ぎるぞ!」
我慢ならず声を張った秀虎に、歩澄は黙って手のひらで秀虎の胸元を押さえ、目で「よい」と訴える。
「さあな。ただ、小菅村の銀次は私を歓迎し、澪を頼むと言われている」
「ぎ、銀さんが!? 嘘だ! なんたって潤銘郷なんかに!?」
「潤銘郷なんかぁ……?」
一々気に入らない秀虎は、珍しく冷静さを欠いている。沸々と沸き上がる憤りに、澪は顔をひきつらせながらまあまあと宥める。
「悪いが今では潤銘郷と匠閃郷は良好な関係でな。なんと言っても私は匠閃郷統主だからな」
誇らしげにふふんと鼻を鳴らす歩澄。澪の事となると、こちらも子供のようにむきになるのは変わらない。
それに面白い程空穏が反応するものだから、歩澄の自慢も止まらない。
「此度の復興はな、澪が予てより望んでいたものだ。統主の私にはそれができる。大方、勧玄の出身地に戻り、煌明の近くで澪を連れ戻す準備でもしていたのであろうが残念であったな。勧玄ももはや匠閃郷の英雄だ」
「黙れ! 祖父は何年経とうが洸烈郷の英雄だ! 澪の力は、洸烈郷にあってこそ素晴らしい力を発揮する筈だ!」
「ほう? そのために澪を洸烈郷に連れていきたいのか? しかし、それでどうする? 澪に今以上の強さを望むつもりか? それとも、煌明の代わりに澪を統主にでもするつもりか」
歩澄は、馬鹿にするかのようにゲラゲラと笑う。
「な……な……澪までそんなこと言うのか?」
「だってさっきから歩澄様のこと悪く言うんだもん。空穏なんか嫌い」
「りょ、りょー……」
澪がふいっと顔を背ければ、空穏は眉を下げてがっくりと肩を落とした。
「貴様、また他人の女を口説いているのか」
空穏の背後から声がする。勢いよく振り向けば、額に青筋を浮かべた歩澄が上から見下ろしていた。
驚いたように飛び退いた空穏は、咄嗟に身構えた。
「まったく……客人に対してその態度。重臣を変えた方がいいのではないか? 礼儀がまるでなっていない」
「なっ……怪しい動きをしていたのはそちらではないですか! 一体、どこで何をっ」
空穏がまだ話している途中で、歩澄は着物の襟の間から出した紙を空穏に差し出した。
「明日には届くであろう。まさか煌明がこれほどまでに酒豪だとは思っていなかったのでな。潤銘郷のものと異国のものと適当に用意させたが何せ数が多い。本日中とはいかぬのは、貴様の主のせいだ」
そう言った歩澄から受け取った紙には、酒の名前と本数とが書かれていた。
理由を歩澄に言っていなかったはずだがと秀虎と澪は驚いたように目を見開いた。
更に驚いたのは空穏である。本当に酒を手配していただけなのかと、手中にある紙を見て手が震えた。
「で、では煌明様は……」
「煌明がどうした? 貴様は奴の重臣であろう? あやつのことは貴様の方が余程詳しいのではないか」
「そ、それは……」
「まったく……。何なんだ、この郷は。客人をもてなすどころか主人の方が酔い潰れるわ、いなくなるわ……家来には礼儀もない。一生酒でも飲みながら闘技観戦でもしていろ」
呆れたような表情を作って歩澄は澪と空穏の間に割って入った。
「なっ……俺はまだ澪と話が……」
「話すことなどない。それより刀を返せ」
「い、嫌ですよ! そもそも何で貴方にそんなことを言われなければならないのですか!?」
「九重と勧玄の墓にも挨拶してきている。もはや私も匠閃郷では公認の仲でな」
「なーーっ!? あんた、そのために匠閃郷へ!?」
空穏は口をあんぐりとさせ、目玉が溢れる落ちる程に瞼を開いた。
「おい! 貴様! 無礼が過ぎるぞ!」
我慢ならず声を張った秀虎に、歩澄は黙って手のひらで秀虎の胸元を押さえ、目で「よい」と訴える。
「さあな。ただ、小菅村の銀次は私を歓迎し、澪を頼むと言われている」
「ぎ、銀さんが!? 嘘だ! なんたって潤銘郷なんかに!?」
「潤銘郷なんかぁ……?」
一々気に入らない秀虎は、珍しく冷静さを欠いている。沸々と沸き上がる憤りに、澪は顔をひきつらせながらまあまあと宥める。
「悪いが今では潤銘郷と匠閃郷は良好な関係でな。なんと言っても私は匠閃郷統主だからな」
誇らしげにふふんと鼻を鳴らす歩澄。澪の事となると、こちらも子供のようにむきになるのは変わらない。
それに面白い程空穏が反応するものだから、歩澄の自慢も止まらない。
「此度の復興はな、澪が予てより望んでいたものだ。統主の私にはそれができる。大方、勧玄の出身地に戻り、煌明の近くで澪を連れ戻す準備でもしていたのであろうが残念であったな。勧玄ももはや匠閃郷の英雄だ」
「黙れ! 祖父は何年経とうが洸烈郷の英雄だ! 澪の力は、洸烈郷にあってこそ素晴らしい力を発揮する筈だ!」
「ほう? そのために澪を洸烈郷に連れていきたいのか? しかし、それでどうする? 澪に今以上の強さを望むつもりか? それとも、煌明の代わりに澪を統主にでもするつもりか」
歩澄は、馬鹿にするかのようにゲラゲラと笑う。
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