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今夜は同窓会

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 寝る時間になるまでは亜純の部屋で過ごし、入浴もバラバラでした。

「真白ちゃん、お風呂先に入ってね」

 そう亜純の母が言い、1番風呂をもらった。最後でいいと言ったが、両親はいつも遅くなるからと勧められたら断れなかった。
 自宅では湯船には浸からなかった。母がいない時に父に浴室のドアを開けられた経験もあったし、まだ幼い真白が嫌がるのをお構いなしに一緒に入浴されされた過去があったからだ。

 自宅の浴室を見るとそんな過去がフラッシュバックして、長時間そこにいられなかった。それは1人になった今でも同じだ。
 けれど、亜純の家は違った。マイホームを買って間もないと言っていただけあって、浴室はピカピカで美しかった。
 清潔感があっていい匂いもした。心做しか湯船に張ってある湯も綺麗に見えた。

 真白はこんな汚い体ではよそ様の家の湯船に浸かるなんてとてもできない。そう思ったが、もう何年も浸かっていない風呂に無性に浸かってみたくなった。
 自分が入った後に亜純が入ったら、亜純の体が穢れてしまうようで嫌だった。

 それでも誘惑には勝てなくて、むしろ入らなかった入らなかったでせっかく1番に入れさせたのに、と亜純の両親が気を悪くするんじゃないかなんてことまで考えた。

 だから真白はそれを言い訳にして、ガシガシと体を強く洗った後、恐る恐る湯船に浸かった。
 それは懐かしいとも思えなかった。まるで初めての感覚で、体の芯から温まる気持ちよさに感動した。
 湯船に浸かるだけなのに、こんなことすらあの男に奪われていたのかと思ったら悔しくて涙が止まらなくなった。

 きっと私はこんなに小さな幸せをいくつも知らずにいる。亜純といたら、毎日こんな幸せがたくさん発見できるかもしれない。

 そう思ったら、真白の中でまた1つ亜純の存在が大きくなった。
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