したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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友人の恋人

07

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「そっ……か。じゃあ、向こうで待ってるね」

 亜純は無理に連れて行くこともできず、依と共に食事を取りに行った。
 千景は急に真白と2人きりになり、そろーっと目を逸らした。電話でならいくらでも話をするが、対面となると真白の瞳が怖く感じるのだ。

「何逃げようとしてんのよ」

 真白にそう言われて千景はギクリと体を震わせた。冷ややかな目を向ける真白に苦笑いを浮かべた千景は「亜純と喧嘩したわけではなさそうだね」と言った。

「ああ……。私が亜純に今日のことを連絡しなかった話? 事故に遭ってそれどころじゃなくなったのよ」

「事故!?」

 電話した時にはそんなこと一言も言ってなかったじゃないかと千景は顔をしかめた。

「そんなに騒ぐほどのものじゃないから。亜純に心配かけたくなかったし、連絡するところも多くて色々ね」

 真白はそう言葉を濁した。真白の新しい家族はとっくに破綻していた。父親の性的虐待が明るみなり、父の方から離婚を言い渡したのだ。
 真白を手放すのは惜しかったが、自分を守るべく冷徹になった娘に今更手を出す勇気はなかった。

 真白は高校の途中で母の旧姓である戸田に戻ったが生徒達は皆、単純に両親が離婚した子供だと思っている。
 その母でさえ、真白のことは放棄した。3年間高校に通い、卒業した後は身元引受け人の叔母と少しだけ連絡をとりつつ自分の生活は自分でなんとかしてきた。

 デパートの美容部員となり、メイクをすることも接客することも楽しくなってきた。恋愛など知らないまま、ずっとこうして仕事にだけ生きていければいい。
 あの両親から解放されたら、些細なことが幸せで、美味しいものを食べたり旅行へ行ったりするだけで満たされた。

 そんな中で起こした交通事故だったのだ。後ろの車による玉突き事故だった。エアバッグが作動してしまったせいで、前胸部を打ち付けて痛みのせいで動けなかった。
 入院をすると家族に電話がいくわけで、叔母に電話をと言ったにもかかわらず、母にまで連絡がいってしまった。
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