したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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友人の恋人

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「俺には真白の言ってる意味がわからないよ。気付いた時には依が亜純のことを好きだって言ってたし、俺も友達の好きな人を恋愛対象として見ることはなかった」

 千景は冷静さを取り戻してそう言った。依が亜純を本気で好きなら付き合えたらいいと思ったし、高校を卒業してから付き合い始めた2人は幸せそうだった。
 友人2人が夫婦になって心から祝福したのだ。今さらタラレバの話をされてもどうしようもない。それに、今の話を当時されていたとしても、亜純を好きになることはなかっただろうと思えた。

「じゃあ、亜純が依と離婚したら?」

「離婚!?」

 せっかく冷静さを取り戻したのに、真白が突拍子もないことを言うから、腹の底から声が出た。
 それに対して真白は口元に指をあてて「シッ!」と睨みをきかせた。

「……亜純が別れたがってるの?」

「ううん。亜純は別れたがってないの」

「じゃあ……依が?」

「依が亜純を手放すとは思えない」

「もー、なんなの……。わけわかんないよ。なぞなぞなんか解くような気分じゃないんだ」

 千景はほとほとうんざりしたような顔をした。いつもならポーカーフェイスは得意だが、のらりくらりとかわされるくらいなら、変に首を突っ込みたくもない。そう思った。

「なぞなぞじゃないの。亜純にとっては深刻なのよ」

「だったとしても、俺は真白からその理由を聞くわけにはいかないよ」

「まあ……そうね」

 千景に言われてやっと真白も勝手に話すべき内容ではないと思ったのか、納得したように頷いた。

「私が千景にとやかく言うようなことじゃなかったわ。だって、私にも千景にもどうすることもできないもの」

「じゃあ、余計に聞いたところで無意味じゃん」

「……千景が正しいわ。でも、私は亜純に幸せになって欲しかったの」

 千景のことを振り回すくせに、亜純のことになるとしおらしく顔を伏せる真白を見て、千景はこういうところがあるから強く突っぱねられないんだよな……とため息をついた。
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