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友人の恋人

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「……不妊のことと関係ある?」

 千景は放っておこうと思ったのに、結局暗い顔をした真白にそう声をかけてしまった。千景も一度は違和感を覚えたことだ。
 夫婦2人が隠そうとしているなら、そっとしておこうと思ったが、真白が今の亜純は不幸だなんて言わんばかりの言い回しをするものだから、亜純のことだって放ってはおけなくなった。

「……不妊だって言ったの? 依が?」

「否定はしなかったよ」

「そう……。だから依はしないのかしら」

「しないって?」

「セックス」

 真顔で言い切った真白に、千景はガクンと項垂れた。こんなところで堂々となにを言ってるのかと思うものの、昔から真白にこういうところがあったなと思い出すきっかけとなった。

「……それ、俺に言っていい話?」

「本当はダメだと思う」

「じゃあ、何で言うんだよ……」

 千景は聞かなきゃよかったと頭を抱えた。聞いて尚、真白にも自分にも解決しようがないとわかったからだ。

「亜純から誘っても依が応えてくれないって」

「……依に不妊の原因があるから?」

「亜純はそうは言ってなかった。でも、不妊で悩んでる話も聞いたことない」

「じゃあ、なんで……って、いいや。もう聞かない」

 千景はこの先の話を真白から聞くのは亜純に失礼だと感じた。デリケートな話しであって、おそらく真白にだから話したし、自分には言わなかったのだから。
 今の話も聞かなかったことにして、忘れてしまえばいい。そう思って真白に背を向けた。

「仕事、辛いんだって。子供と接する仕事」

 真白はそれだけ言い残して、千景を追い越した。それから真っ直ぐ依と亜純のもとへ向かって言った。

 千景はぼんやりと真白の背中を見つめながら、亜純と一緒に夢を語った高校時代を思い出していた。
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