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友人の恋人

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 千景は静かに亜純の話を聞いた後、初めて聞いたようにゆっくりと頷いた。真白から又聞きするのと、亜純本人から聞くのとでは言葉の重みが違った。

「依が子供を欲しがらないから夫婦生活がないだけなら、まだ解決策はあるんじゃないかな……。亜純のことをちゃんと好きなのは事実だと思うし」

「じゃあ、もし他に好きな人でもいたら?」

 亜純は依に不信感を抱いているようだった。千景はそれも当然だろうと思えた。

「それは俺にもわからない。でも、依がこのまま一生子供はいらないって言うなら、亜純も今後依との付き合い方を考えていかなきゃじゃない? 亜純が子供を産むことよりも依と2人で生きていくことを選ぶならそれもありだと思う」

「……なんで、どっちかになっちゃったのかなぁ。私は、依と依の子供と一緒に幸せになりたかっただけなのに」

「わからない。それは依に聞いてみなよ。ただ、1つ思うのは、この話を知られたくなかったから、俺や真白を亜純に会わせたくなかったのかなって」

 亜純はそんなことは想像もしていなかったのか、大きく目を見開いた。千景には亜純が変わらず純粋なままに見えた。あの依の側にずっといて、よく変わらずにいられたものだと感心すらした。

「それは……依にとって都合が悪いってことだよね」

「うん。本気で子供がいらないって思ってるなら都合が悪いだろうね。だって俺も真白も亜純が子供好きで保育士にまでなったことを知ってる。依だって知ってて結婚したはずだから、俺たちに責められる可能性のあることは避けたいんじゃないかな」

「依には……言わないでくれる? 私から話をするから」

 亜純は、千景の目を見れないまま唇を震わせて言った。

「もちろん言うつもりはないよ。俺が間に入っても解決しないだろうし。でも、俺にこの話をしてくれたってことは、友達として信用してくれた証だと思うから。困ったことがあればまた相談してほしい」

 千景は素直にそう言うことができた。面倒だと思っていたのは事実だが、亜純の方から頼ってくれるのであれば受け入れてあげたいと思った。
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