したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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夫婦のかたち

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 亜純はピリッと張り詰めた空気を感じた。依が嘘をついているようには見えなかった。やましいことや隠したいことがある時には、依の目はわかりやすい程に泳ぐ。それが全くなかったのだ。

「……依は真白とえっちしたってこと?」

「亜純と付き合う前だよ。亜純と付き合ってからは誰ともしてない。キスだってしてない。本当だよ」

「え、ちょっとまって……わけわかんない。何で、真白と依が」

 亜純は混乱した。全く意味がわからなかった。数時間前まで一緒に笑い、性の悩みを相談していた相手が自分の夫と関係を持っていた。
 自分が好きな男と寝てから中古品を亜純に差し出したかのように。

 どういうこと……? 真白は依のことが好きだったの? 私と依が付き合う前ってまだ10代の頃? 下手したら高校時代ってことだよね。真白は何人かと付き合ってたけど、好きな人はいないって言ってた。だから、私が恋愛感情を知らないことにも気持ちがわかるって共感してくれたのに。
 それも全部嘘だったってこと? 依に抱かれたのは、思い出作りのため? それとも私の事を好きだった依と私に対する嫌がらせ?

 わからない……。今日は私のために依に対して本気で怒ってくれているように見えた。でも今も真白は依のことが好きなの? そういえば、離婚を薦めてきたのは真白の方からだった……。

 亜純はとんでもない速さで思考を巡らせた。真白と話していた情景がうわっと一気に浮かんできた。
 真白は依と亜純を離婚させて、依に近付こうとしているのか。そもそもなぜ依を薦めたのか。様々なことが矛盾だからけで真白の思惑はわからなかった。
 しかし、依が亜純のことを好きだと言いながら真白を抱いたことも理解できなかった。

「俺は亜純と付き合いたかったから、真白に俺はやめとけって言われたら困ると思ったんだよ。だから、亜純と付き合えるなら真白の提案に乗ってもいいかなって」

「……気持ち悪い」

 亜純はポツリとそう呟いた。
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