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それぞれの生活

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 亜純はさすがに悠生とセックスしたことまでは千景に言えなかった。キスをされたことは嬉しくてのぼせ上がって勢いで言ってしまったが、セックスは悪いことではないけれど子供を望んでいた亜純が軽はずみに口にしていい行為ではないように思えた。
 依との離婚を考えていた頃は、セックスとは重要な行為でもっと神聖なものだったはず。けれど、すっかり快楽に溺れてしまっていたあの時の自分を思い出すと、隠しておきたい気持ちになった。

 「手短に」と言った亜純は、文字通り付き合った報告だけをして電話を切った。先日のように高いテンションで長々とデート内容を語ったりはしなかった。

 また落ち着いて余裕がでたら、もう少し2人のことについていい報告ができるかもしれない。亜純はそう思った。

 職場に行けば同じクラスの保育士として美希がいる。美希にも一応報告しておこうと思った。美希が誘ってくれたおかげで悠生と出会い、恋することができた。そして彼氏をゲットするに至ったのだ。
 これはマウントや自慢とは違う。ちゃんとお礼を言いたい。そう思っただけだ。

 美希は自分のことのように喜んでくれた。乙女のようにキャーキャー言いながら亜純の話を聞きたがった。
 あんなに恥ずかしかった夜の話も女同士、どうだったのかと聞かれれば亜純は照れながらもポツポツと話した。

 話して行く内に次のデートも待ち遠しくなった。1ヶ月後には旅行も控えている。全てが順調に思えた。

 いつも通り悠生が迎えに来て、助手席へ乗り込む。食事へ行くかと思って新しく買ったワンピースを着てきた。あまりスカートは好きではないが、ロングスカートだったので亜純も抵抗なく着ることができた。

「今日の服可愛いね」

「ありがとう。可愛いの見つけて買っちゃったの」

「凄く似合ってるよ。元が可愛いから何着ても似合う」

「そんな……。でも嬉しい」

 亜純はポッと顔を赤らめて両手で頬を押えた。
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