したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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新しい風

18

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 ランチ当日、真白はお気に入りの服を着ていつもよりも丁寧にメイクをした。それからオレンジ系統のリップを塗った。綾菜が買った赤リップの色違いだ。

 おそらく彼女はあの赤リップをつけてくるだろう。そして普段よりももっと気合いを入れてくるはず。そんなふうに考えたら、真白も失礼のないよう自分の中での最高の自分で会いたいと思った。

 待ち合わせ場所にいけば、綾菜の華やかなオーラですぐにわかった。綾菜は真白のようになりたいというが、真白にしてみればよっぽど綾菜の方が透き通っていて美しく見えた。
 亜純のことは内面から放つ純粋さが綺麗だと思ったが、綾菜はその容姿に見とれるほどの魅力があった。

 どちらも美しいことに変わりはないが、真白にとっては全く別の美しさだった。

「お待たせしました」

 真白が声をかけると綾菜はその大きな瞳に真白の顔を映した。

「まだ……時間ピッタリです。あの……来てくれてありがとうございます」

「こちらこそ誘ってくださりありがとうございます」

 どこまでも他人行儀でなんとなくお互い照れくさかった。何度も顔を合わせているのにまるで初対面のようにどこか気恥しさがあった。

「凄い……綺麗ですね。私服だと雰囲気が変わって、あの、いつも素敵なんですけど、今日はもっと綺麗というか」

 綾菜は言葉を探しながら、タジタジになりながら必死に訴えた。なんとなくその仕草が可愛くて真白は思わずクスクスと笑った。
 綾菜は笑われたことに顔を真っ赤にして俯いた。けれど「白井さんの方が可愛いですよ」と言った真白の言葉にすぐに嬉しそうにモジモジと体を揺らした。

「ご飯行きましょうか」

 真白から促してはたと気付いた。自分が自然に笑えていたことに。いつもなら無理やり口角を上げて笑顔を作るのに、なぜかつい笑えてしまった。

 それに……なんだか今日が楽しみかもしれない。

 真白は小さく心の中で呟き、照れながらちょこちょこと隣を歩く綾菜を横目に見た。
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