したい夜はきみとじゃない

雪村こはる

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新しい風

19

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 食事は真白が想像していたよりもずっと楽しかった。見た目は小さいのにそれを大きく開けて豪快に1口を放り込む綾菜。
 1口を噛む度に目を大きくさせて、その表情だけで美味しさを表す。もっとお淑やかに上品に食べるのかと思っていた。

 綾菜の食べ方が悪いわけじゃない。むしろ今までとギャップがあり、なんだか子供みたいで可愛いと思えた。
 徐々に会話は膨れていき、元々ファッションもメイクも好きな2人はこれでもかというほど話が弾んだ。

 真白は夢中になって会話を続けた。専門用語も説明要らずですぐに返事をする綾菜。試したい色やメイクの話で盛り上がり、今度はお揃いのコーデで出かけたいねなんてことまで話す。
 いつの間にか敬語も取れて、ぐっと距離が縮まった気がした。

「楽しい。こんなに楽しいの初めて」

 綾菜は満面の笑みで言った。よく男性が女性が言う初めてという言葉にときめくというが、真白もようやくそれがわかったような気がした。

「私も楽しい。今日来てよかった」

 本心だった。断らなくてよかった。心底そう思った。今まで友人は亜純しかいなかった。けれど亜純は友人と呼ぶには少し違う存在だった。
 本音を言えたが趣味も好きな物もまるで違った。一緒にいるだけで楽しくて幸せだったが、こんなふうに会話が弾むことはなかったし、心の底から笑うこともなかった。

 綾菜は自分の顧客で、失礼のないよう弁えた接し方をしなけれはならない。そう思っていたはずなのに、どんどん素が出てきてまるで心の扉を外側から開けられたような気分になった。

「私、もっと真白ちゃんと一緒にお出かけしたい」

「うん。私、プライベートでは色んなデパコス使うの。今度デパコス巡りしようよ」

 名前で呼び合って次の約束をする。亜純といた時よりも、よっぽど友達らしいと思った。亜純には届かない恋心を抱いていたから、いつだって彼女は高嶺の花で背伸びをしたって全く届かなかった。
 綾菜の方がよっぽど立場的に隔たりがあるのに、どうしてかとても対等に思えて居心地がよかった。
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