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嫌いなアイツ

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 仕事が終わった千紘は、帰宅してからスマートフォンで『女性用風俗 秘密の部屋』で検索をかけた。
 近所の弁当屋で買った唐揚げ弁当を頬張りながら、スマートフォンの画面をタップした。

 すぐにホームページが見つかった。セラピストの写真がずらりと並んでいるのかと思いきや、最初に出てきたのはランキングだった。

 No.1と大きく赤字で記載されている文字の上にはNo.2、No.3よりも大きな写真。その人物を見た瞬間、千紘は箸持つ手を止めた。
 掴んでいた唐揚げごと白米の上に投げ出し、テーブルに置いてあったスマートフォンを持ち上げた。

 何度か店で見かけた綺麗な顔をした客。米山が勝手に奪った指名客。米山の手技によって似合わない髪型にされたのにもかかわらず、満足気に帰って行った男。

 名前を見れば『快-カイ-』と書かれていた。画像加工により口元は隠されているが、どう見ても店で見かけた客に間違いなかった。

「快……」

 千紘はポツリと呟いた。別に彼に気があったわけじゃない。米山を指名するようになり、自分には関係なくなった客だし、とその名前すら知ろうともしなかった。
 だから彼が大橋凪という名前だということも、女風のセラピストをしていることも当然知らなかった。

 千紘は無意識にその顔写真をタップし、プロフィールを開いた。年齢は26歳と書かれていた。

「年上……」

 千紘はそう呟いてうーんと首を傾げた。ハッキリと顔を見たわけでもないし、直接会話をしたこともない。しかし、自分よりも1つ年上表記になんとなく引っかかった。
 千紘の客は同世代からもっと下まで幅広い。1つ、2つの差でも年齢を聞く度になんとなくその人の年齢がわかるようになっていた。

「年上感ないんだけどな」

 そう思いながらも1つや2つじゃ大差ないか、と気にせずにいた。そんなことよりも次に目に入ったのは写真日記。
 写真と共に日記が掲載されている。ずらっと並ぶ日記。多くの顔写真はどれも宣材写真同様に口元が隠されているが、どのアングルでも整った顔立ちは健在だった。

『12月7日まで予約満了です。その後、調整可能ですので気軽にDM下さい! 甘い空間でいっぱいイチャイチャしよ?』

 そんな言葉と共に優しく微笑む目元が見えた写真が載っている。それを見た瞬間、千紘はぶわっと気持ちが昂るのを感じた。
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