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体だけでも

02

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 凪は目を閉じて過去を振り返る。初めて自分の後口を触りながら射精を経験してから1週間。やはり、キーポイントは『後ろ』だったらしく、凪は既に男としての自信を失いかけていた。

 射精できるポイントは抑えたが、挿入するだけで絶頂を迎えられなくなった今、手間が増えたわけだ。更にそれを女性の前でバレずにこなすのは至難の業。
 加えて射精をしたとて、今まで感じていた最高の絶頂は味わえなくなっていた。

 絶対に思い出したくない。そうは思っていても、何となく思い出すのは千紘のこと。あの時の体の感覚などもう覚えてはいない。しかし、麻薬のように頭がとろけそうなほど快感に溺れたのはあれが初めてだった。
 自分が主導権を握って女性とセックスをしていた時には、それなりに気持ちよかったが、『男よりも女の方が感度が良くて数倍気持ちいらしい』そんな話を聞くと羨ましくもあった。

 その快感を味わってみたいと思うこともあった。考えてみれば、何度絶頂を迎えても体が反応するあの快感は、女性が感じる男以上の快感に近いのではないか。そんな興味が湧いてしまったのだ。

 性への関心が人一倍強い凪。だからこそセラピストをしているのもある。男性を求める女性の気持ちは理解できるつもりだ。そして、女性を求める男性の気持ちはより強く理解できる。

 しかし、その女性で満たされなくなったら? 仕事の内はまだよかった。彼女を作らないことは都合がいいし、可愛い客が金を払って会いに来てくれるのだから不自由なんてない。
 しかし、本気で恋愛をしようとした時、果たして自分の体は女性で満足できるのだろうか。そう考えたら途端に恐ろしくなった。

 ただ、凪にはまだ確認していないことがある。女性とのセックスで射精できないことは実証済。しかし、元凶である千紘とはどうなのか。後口を触れば絶頂を迎えられることはわかったが、もし仮に千紘でもあの時と同じような快感が得られなければ、相手など関係なく自分の体に異常が生じている証拠となると感じた。
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