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体だけでも

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 体を洗って浴室から出た千紘は、逸る気持ちを抑えながら体を拭く。手に取ったバスローブは女性用だった。
 そういえば凪が既に着ていたっけ。そう思いながら広げてしまったバスローブをそのまま洗面所横に置いた。
 必ずしも男女が利用するとは限らないのだから、男女兼用かいくつかサイズを用意してほしいものだと千紘は思う。

 千紘が長身とはいえ、凪もそこそこ身長があるのだ。メンズもののバスローブでなければ入らないのは間違いない。こっちを着て、綺麗な足がしっかり見えるのも悪くないなぁとチラリと置いたバスローブを見た千紘だったが、それを凪が着てくれるとは到底思えないため諦めた。

 その代わりにバスタオルを腰に巻き付けてドアを開けた。上半身裸の千紘にギョッとして体を跳ね上がらせた凪。小動物のようなその仕草に千紘は思わず笑いそうになった。

「バスローブ1着しかないんだよ。あれじゃあ、さすがに入んないよ」

 千紘が後ろを指さして言えば、凪は自分のバスローブを確認するように胸元の生地を掴んでそれを見つめた。
 そっか、と納得した様子の凪が丸い目で千紘を見た。その時にはぐっと千紘との距離が近付いていて、目の前でにっこりと千紘が笑う。

「っ……」

 凪は驚いて背中をどっと背もたれに押し付けた。ギシッとソファーが音を立てる。

「暑いの平気?」

「もう……よくなった」

「そう? さて、どうする? ベッド行く? それとも俺が怖いなら暫く雑談でもする?」

 凪の視線に合わせるように前屈みの姿勢をとった千紘。凪はその言葉にギリッと奥歯を噛んだ。普段の自分ならもっと余裕を持って女性に接するのに。このまま自然な流れで施術に入れるのに。
 そんな性感のプロがこの後どうするかに戸惑い、「俺が怖いなら」なんて言われている。凪はその事実にかあっと頭に血が上る。

「べ、別に怖くなんかねぇよ! 言い出したのは俺なんだから! 言っとくけど、俺主導で試すんだからな!」

 凪は怒鳴るようにそう言い放つ。千紘は涼しい顔をして「はいはい」なんて返事をするが、凪をベッドへ誘導するのには成功したと口角を上げた。
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