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体だけでも

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「ねー、可愛いんだけど」

 千紘は胸の中をキュンキュンと疼かせながら、だらしなくデレデレと頬を緩めた。これにはさすがの千紘もポーカーフェイスではいられなかった。
 幸せな気分になって、どうしようもなく好きな感情が膨らんで、抑えきれなくなった。体だけでもいいなんて嘘だった。
 名前を呼んでほしいし、自分のことで照れる姿をもっと見たいし、できたら凪からの好きだという言葉を聞いてみたい。

「可愛くねぇし!」

 顔を隠したまま凪が叫んだ。可愛い、可愛いと何度も連呼してしまいたいほど、千紘は凪の姿にときめきっぱなしだ。
 ただ、意地っ張りで千紘から与えられる快楽に恐怖心を持つ凪は、そう簡単にはそれを受け入れてはくれない。

 それでも千紘はやっぱりどうしても諦められなかった。

 諦めるなら凪の方だと思うんだよね。だってこんなに好きになっちゃったのに、もう諦められないもん。俺のこと好きになってくれるまで追いかけ回したい。

 千紘は貪欲に溺れていく。凪が新鮮な反応をすればするほど凪の全てが欲しくてたまらなくなった。

「ねぇ、凪。そろそろ後ろも試そ?」

 いつまでも顔を覆ったままの凪に千紘はそっと囁く。本来の目的は、後口でしか絶頂を迎えられないのかを試すため。だとしたら、この先に進まなければ検証にならないはずだと千紘は頬を緩める。

 けれど凪はふるふると首を横に振って「もう、そっちじゃなくても大丈夫だってわかったからいい」なんて言う。
 その言葉にすんっと表情をなくした千紘は「そんなのダメだよ……。あれは気分が高まって出ただけかもしれないし、耳を攻められたからなのかもしれないし。凪が、どこが1番気持ちいいのかまだ自分でわかってないんだから」と抑揚のない口調で言いながら大きな掌で凪の太腿を撫でた。
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