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気持ちは変わるもの

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 外観は立派な高層マンションだった。こんな街中のマンションなんて家賃いくらすると思ってんだよ……とそれなりに稼いでいる凪は思う。
 地域の交流も面倒で、昼夜関係なく出入りをする凪は対人関係も町内会云々も避けたくてマンションを選んだが、こんな仕事でもしていなければ易々と高層マンションになんか住むことなどできないと怪訝な顔をする。

「お前、こんなとこに住んでんのかよ」

「うん。俺、オーナーのお気に入りだから」

 千紘は片目を瞑って人差し指を唇に当てた。

「は? なにそれ、チートな話?」

「はは、違う違う。目標売上達成したらいいマンションに住まわせてあげるって言われたの。だから、最低ライン下回らない限りは俺が払う家賃は3分の1」

 千紘はそう言ってエントランスへと入っていく。数年前に建ったばかりなのか、どこもかしこも綺麗だった。

「ふーん……そういうところも踏まえて歩合なんだ?」

「まあ、こんな優遇されてんの俺くらいのもんだけど」

「体でも売ってんの?」

「それは凪でしょ」

「……嫌な奴。俺は体を売ってんじゃなくて、快感を提供してんだよ」

「本番して性欲の捌け口にしてた人がなんか言ってる」

「てめ……」

 先に千紘が歩き、その後ろを凪がついて行く。2人ボソボソと悪態をつきながら、着実に千紘の部屋へと向かっていた。

「まあ、ホントのところ給料以上の売上作ってるからってやつ」

「でもお前独立するんだろ?」

「そう。だからここ買えって言われてる」

「うわー」

「ホラーだよね。分譲でいくらすんだろ、ここ」

「考えたくねぇな」

「凪、一緒に買って一緒に住まない?」

「遠慮しとく」

 エレベーターに乗り込んだ2人。横並びで階数表示を見上げる。暫し無言が続いた後、千紘がもう一度「ねぇ、一緒に住まない?」と尋ねた。

「初めて言うテンションで言うな」

「2回目言ったらいけないかなって」

「いけねぇよ」

 抑揚のない2人の会話がエレベーター内に響いた。
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