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諦めること

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 凪はジャアアアアアン! っと鳴ったアラームの音で飛び起きた。またこの音、と顔のパーツを中央に寄せて苦い顔をした。

 音の主を手に取って勝手に止めた。千紘が直ぐに起きないことなどわかりきっているからだ。
 上半身だけ起こした状態で千紘の体を揺する。しかし、やはり起きる気配はなかった。

 凪はふうっと息を吐き出して、膝立ちになった。それから千紘の体を跨いでベッドから降りるとトイレに向かった。
 どうせ起きないのだから、とりあえず自分の用を足そうと思ったのだ。

 トイレの中も、いつも通り綺麗に掃除されていた。凪はボーッと排泄しながら、そういえばアラームが鳴るまで一度も起きなかったことに気付いた。
 普段は自分のアラームが鳴る前に目が覚め、二度寝するのだ。それが4時間半一度も目が覚めなかった。それだけでの驚きだというのに、眠った記憶もなかった。

 寝付きはいい方だとは思う。普段浅眠だからか、眠気は何度もやってくるし横になれば寝入ることはできる。ただ、すぐに目が覚めて眠った気になれないのが辛くもあった。

 しかしどういうわけだか頭はスッキリとしていて、久しぶりに熟睡できた気がした。

 ……なんでだ。あんな変態野郎の隣で寝たのに、俺は危機感ゼロか。

 そんなふうに自分にあきれながら、寝室へと戻る。掛け布団を丸めて抱きしめている千紘。足の間に挟み込んで顔を埋めて眠っている。
 あの布団を凪だと思っているかも、と想像したらおかしくて凪は肩を震わせて笑った。

「さすがの俺も潰されるわ」

 そう呟きながら、千紘の肩を掴んで再び揺さぶった。

「おい、起きろ。朝だぞ。仕事」

 そう声をかけるが起きる気配はない。凪は少し考えて「アラームセットし直したから、俺帰るよ?」と耳元で囁いた。
 すると次の瞬間、パチッと千紘の瞼が開いて体を起こすより先に「ダメっ!」と叫んだ。
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